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【15行小説】不定期更新

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15行に《怒り/嫌悪/恐怖/喜び/悲しみ/驚き》を閉じ込めました。人間の感情を揺さぶるストーリー!
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#彼女

【15行小説】彼女の親が泣いている

【15行小説】彼女の親が泣いている

今日は天気がいい。

部屋の片付けをしないと。
今週末、彼女のご両親が来る。

ゴミは捨てて、掃除機かけて。
あ、部屋の空気も入れ替えないと。
新鮮な空気、いつぶりだろう、今週までに匂い消えるといいけど。

冷凍庫、見られるかな。
彼女は見ちゃったからな、ご両親も見るかも。
気をつけないと。
そういえば、夜ご飯一緒に食べるのかな、お肉はいっぱいあるからいいけど。

お風呂は流石に入らないよね。

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死神のその一瞬

死神のその一瞬

その一瞬のせいで交通事故が起きた。
その子の両親の命をとった、それが出会いだった。

その子の悲しげな淡い表情は僕の何かを揺さぶった。
致命傷はなく運良く生き延びた彼女は病院へ。
大丈夫、まだ彼女は死なない。

こんな一人の女性に何を思うんだろう。
たまにそばに行くけれど、僕の姿は見えない。
会話も、触れることも、この気持ちを伝えることも。
何十年も彼女は僕には気づかない。

彼女の寿命はもうなく

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シャルドネのハンドクリーム

シャルドネのハンドクリーム

リビングの机の上。
隅っこの方。

今にも落ちそうにハンドクリームが逆さになって立っている。
机を揺らすと落ちそうなくらい絶妙なとこ。
なんでそんなところに置いたんだよ。

ほんと昔からそう。
片付けってものを知らない。
全部目の前に置いて。
俺も一緒に住んでるんだけどって、言ったことあったっけ。

とりあえず、帰ってきたら言うことリストに追加しとこう。
ハンドクリームもこのままにしとこう。
しば

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コーヒーの湯気の向こうで

コーヒーの湯気の向こうで

僕は毎朝コーヒーを飲む。
それが日課だからしょうがない。

コーヒー豆が粉になる音が響くとなぜがペットの犬が僕の足元で座るんだ。
餌と勘違いしてるんだろう。
ほっとこう。

コーヒーをいつものカップに注ぎ、いつもの席で飲む。
湯気の向こうにはいつも君の笑顔が思い浮かぶ。
今日はこれで何杯飲んだだろう。
早く豆を買いに行かなきゃ。

決まった店で仕入れるのが僕の好み。
正直、豆の種類はなんでもいい。

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