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2021年4月の記事一覧

商標法 「ゴールデンウィーク」の商標登録

商標法 「ゴールデンウィーク」の商標登録

 ゴールデンウィークに入ってから知ったのですが、「ゴールデンウィーク」は商標登録されいるようです。

 検索したところ、
損害保険ジャパン株式会社の登録4824147号(第36類)と、
宝ホールディングス株式会社の登録5713010号(第33類)と、
の2件が見つかりました。

 第36類は保険関係、第33類は酒類関係なので、一般的な報道などで「ゴールデンウィーク」を使用するだけであれば、問題はな

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商標法15条 拒絶の査定

商標法15条 拒絶の査定

 本条では、商標登録出願の拒絶理由が規定されています。

 具体的には、実体的登録要件に違反している場合(商15条1号)、条約の規定に違反している場合(商15条2号)、書式的な記載要件に違反している場合(商15条3号)、が拒絶理由に該当します。

・商標法15条

(拒絶の査定)
第十五条 審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をし

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ダニングクルーガー効果の例

ダニングクルーガー効果の例

 具体例として、当方の商標に関する認識の変化を述べます。

(判例勉強会前)商標が完璧に分かった。商標なんて誰でもできる。
  ↓
(判例勉強会開始)商標は難しい
  ↓
(情報提供開始)商標のポイントが全く分からない
  ↓
(現在)商標は分からないことばかり。毎日が勉強だ!

なお、ダニングクルーガー効果というのは、能力の低い人が実際よりも自分を高く評価してしまう現象のことです。
言い換えれば

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商標法13条の2 設定の登録前の金銭的請求権等

商標法13条の2 設定の登録前の金銭的請求権等


1.概要

 本条では、商標登録出願後、設定登録前の金銭的請求権について規定されています。金銭的請求権は、特許法の補償金請求権(特許法65条)に対応する規定です。

 補償金請求権(特許法65条)との大きな違いは、金銭的請求権は、相手が悪意で使用していても警告は必要という点と、損失不発生の場合は、金銭的請求権は発生しないという点です。

これは、第三者に突然の金銭的請求という不意打ちを与えないた

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商標法13条 特許法の準用

商標法13条 特許法の準用

 本条では、特許法のうち、商標法に準用する条文が規定されています。

 商標登録出願でパリ優先権を主張した場合、優先権証明書の提出期限は、商標登録出願日から3月になります(商13条1項)。なお、特許出願の場合は、最先の日から1年4月です。

 また、商標法では、特許法と異なり、商標出願「前」に生じる権利」というものがありません。このため、特許法33条、特許法34条1項から3項を準用していません(商

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商標法12条の2 出願公開

商標法12条の2 出願公開

 本条では、商標登録出願の出願公開について規定されています。

 商標法でも、特許法の出願公開(特64条)と同じように、商標登録出願の内容が公開されます。ただし、商標法における出願公開は、基本的に、金銭的請求権の前提となる警告を受けた者の調査や確認を容易にするために行われます。特許法64条のように、重複研究、重複出願、重複投資の防止という目的ではありません。

 商標法における出願公開は、商標登録

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商標法12条 出願の変更

 本条の出願変更でカバーされているのは、防護標章登録出願を、通常の商標登録出願に変更すること(商12条1項)、です。
 なお、通常の商標登録出願を防護標章登録出願に変更するのは、商65条1項に規定されています。

 出願変更ができるのは、査定又は審決が確定するまでです(商12条2項)。また、出願変更に伴って、元の出願は取下擬制となります(商12条3項)。

・商標法12条

第十二条 防護標章登録

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商標法11条 出願の変更

商標法11条 出願の変更

 本条では、出願変更(出願形態の変更)が規定されています。たまに勘違いされることがありますが、商標登録出願を特許出願、実用新案登録出願、意匠出願に変更できるわけではありません。

本条の出願変更でカバーされているのは、
(1)団体商標の商標登録出願を、通常の商標登録出願や地域団体商標の商標登録出願に変更すること(商11条1項)、
(2)地域団体商標の商標登録出願を、通常の商標登録出願や団体商標の商

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商標法10条 商標登録出願の分割

商標法10条 商標登録出願の分割


1.概要

 本条では、商標登録出願の分割について規定されています。

 本条における「分割」とは指定商品、指定役務を分割して別の出願とすることであり、商標に対する分割ではありません。このため、文字と画像が含まれる商標を、文字部分と画像部分とに分割することはできません。

なお、国際商標登録出願は本条の適用がないので、分割できません(商68条の12)。

 指定商品、指定役務を分割しますので、元

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商標法9条の4 指定商品等又は商標登録を受けようとする商標の補正と要旨変更

 本条では、先願主義の例外が規定されています。具体的には、商標登録出願の願書に対する要旨変更補正が、商標権の登録「後」に露見した場合、その商標権の出願日が手続補正書提出時に「繰り下がる」ことが規定されています。

 この要旨変更補正が登録「前」(つまり、審査中)に発見されると、補正却下(商16条2項)となります。

 この規定が特に問題になるのは、他の出願との先後願関係を判断するときや、先使用権の

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商標法9条の3 パリ条約の例による優先権主張

 本条では、パリ条約同盟国等の国民が、優先権を主張できる国について規定されています。

 まず、日本国民、パリ条約の同盟国国民は、商標法条約の締約国、WTO加盟国について優先権主張可能です。
 また、商標法条約の締約国国民、WTO加盟国国民は、パリ条約加盟国、商標法条約締約国、WTO加盟国について優先権主張可能です。

・商標法9条の3

第九条の三 次の表の上欄に掲げる者が同表の下欄に掲げる国に

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商標法9条の2 パリ条約の例による優先権主張

商標法9条の2 パリ条約の例による優先権主張

 パリ条約でも商標登録出願に関する優先権を認めるすることが定められています。しかし、パリ条約で規定されている商標は、商品に付する商標のみであり、役務商標(サービスマーク)に対する優先権までは規定されていません。このため、商標法9条の2を設けて、サービスマークについても優先権主張を認めることとしています。

 なお、この規定は、防護標章にも準用されています(商68条1項)。

・商標法9条の2

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商標法9条 出願時の特例

商標法9条 出願時の特例

 本条では、出願時が、実際の出願時よりも前になる特例について規定されています。
 
 この特例が適用されるのは、所定の博覧会に出展した後、出品、出展した商品等について、出願した場合です。この特例が認められると、商標登録出願は、出品又は出展の時にしたものと擬制されます。なお、出品、出展した商品等に係る商標と同一の商標に対してのみ、この特例が認められます(商9条1項)。

 この特例の適用を受けるため

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