商標法13条の2 設定の登録前の金銭的請求権等
1.概要
本条では、商標登録出願後、設定登録前の金銭的請求権について規定されています。金銭的請求権は、特許法の補償金請求権(特許法65条)に対応する規定です。
補償金請求権(特許法65条)との大きな違いは、金銭的請求権は、相手が悪意で使用していても警告は必要という点と、損失不発生の場合は、金銭的請求権は発生しないという点です。
これは、第三者に突然の金銭的請求という不意打ちを与えないためです。また、補償金請求権(特許法65条)で請求できるのは実施料相当額であるのに対して、金銭的請求権で請求できる額は「業務上の損失に相当する額」です。このため、相手を特定して、誰によってどれだけの損害が発生しているかを出願人側が認識したうえで請求する必要があるからです。
悪意で使用されていても、損失不発生の場合は、金銭的請求権は発生しません(補償金請求権(特許法65条)では、実施料相当額の損害が発生します)。また、業務上の損失が発生するためには、「出願人が出願に係る商標の使用をしていること」が前提となります。これは、悪質な商標ブローカー等(例えば、〇〇〇ライセンス社等)による被害を防止するためです。
金銭的請求権は、(i)商標登録出願をしたこと、(ii)相手方を特定して警告したこと(業界紙に警告する広告を出してもダメ)、(iii)警告後商標権設定登録前に、出願に係る指定商品又は指定役務について出願に係る商標の使用をすることにより、業務上の損失が発生したこと、を要件として発生します。
金銭的請求権が行使できるのは、商標権の設定登録後です(商標法13条の2第2項)。これは、出願が全てが登録されるわけではないので、登録前(出願段階)で金銭的請求権の行使を認めると、登録されなかった場合(拒絶された場合)の利害関係の調整が困難となる場合があるからです。
さらに、金銭的請求権を行使した後、商標権の行使も可能です(商標法13条の2第3項)。
一方、金銭的請求権は、発生しない場合があります。これは、最終的に商標権が発生しなかったとされた場合です。つまり、商標権が発生しなかった場合と、商標権が事後的に遡及消滅した場合には、金銭的請求権は発生しなかったことになります。
2.商標権等の設定登録「後」に、損害及び加害者を知った場合
日本国内の一般的な法律が民法等であり、民法等ではうまく運用できない部分をカバーするために設けられているのが特許法・商標法等の特別法です。
このため、(弁理士試験対策を行っていると無視しがちですが)、原則は民法であり、例外が特許法・商標法です。
さて、商13条の2第5項・特65条6項では、民法724条で「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「特許権の設定の登録の日」と読み替える、とされていますね。これが例外の具体的な規定です。
つまり、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法724条)についての規定は、
①原則:被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときには、時効によって消滅する(民法724条1号)
②例外:商標権等の設定登録「前」に被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った場合は、商標権等の設定登録日から三年間行使しないときには、時効によって消滅する(商13条の2第5項・特65条6項)
となります。
このため、商標権等の設定登録「後」に知った場合は、原則通り、民法724条が適用されます。
・商標法13条の2
●関連記事
・商標権等の設定登録「後」に、損害及び加害者を知った場合は、原則通り、民法724条が適用される(商13条の2第5項・特65条6項)
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