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月と私とゆれるカーテン

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月が満ち欠けするように、ゆらいで詩と自然と生きる日々を綴ります。
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2021年1月の記事一覧

萩尾望都『ピアリス』を読んで

萩尾望都『ピアリス』を読んで

萩尾さんの漫画は読んだことがないのですが、私の母が『ポーの一族』にハマっていました。

今回は「木下司」名義で書いたSF小説を、名を明かして公開した1冊になります。

未来、人類は地球だけでなく、他の星にも移住を始める。双子のピアリスとユーロは不思議な力を持っていた。ピアリスには過去が見え、ユーロには未来が見える。幼いころに生き別れになった二人の数奇な運命とは……

地球のほかに移住をするSFはよ

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椎名誠『毎朝ちがう風景があった』を読んで

椎名誠『毎朝ちがう風景があった』を読んで

椎名誠さんは私が小学生の時から追っかけてきた作家さんです。

『岳物語』に始まり、当時通っていた塾の本棚を読み漁るのが好きで、そこの塾長先生が椎名さんのファンだったんですね。

それで私もその本棚を読破するのが夢になり、結局小学6年生でその本棚を読破しました。いい経験だったなと思います。

椎名誠さんが重んじているのは、「旅」と「自然」。なんだか日常を描いた作品にもそれが出てくると思います。

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池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』を読んで

池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』を読んで

この本を読み終わった後、呼吸を整えるのに5分必要でした……。

池井戸潤さんは本当にスピード感がよく、読んでいるこちらとしても走っている感覚で、読み終わった後にはいい汗をかいたような、まさにスポーツの後のようなすがすがしさがあります。

トキワ自動車の経営戦略の先鋭、君嶋は上司の滝川の仕組んだ左遷により、横浜工場に異動となる。しかし、そこで君嶋が「アストロズ」という本社のラグビーチームのゼネラルマ

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桜田千尋・望月麻衣『満月珈琲店』を読んで

桜田千尋・望月麻衣『満月珈琲店』を読んで

今日、1月29日金曜日は満月なんだそうです!

見られるかなあ。

春・夏・秋・冬で入れ替わっていく人生の四季。

仕事でちょっと疲れたときに、この本を手に取りました。

大きな二足歩行の三毛猫がやっているワゴンカフェ、満月珈琲店にはメニューがない。お客様にぴったりなものを作り、提供する。満月珈琲、水星のアイスなど、月や星にちなんだメニューを出され、それを食べてお客は少し元気になって帰っていく。

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アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣暁美訳『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』を読んで

アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣暁美訳『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』を読んで

ル=グウィンのエッセイ!?

ル=グウィンの、エッセイ!!!???

と図書館で出会ったときに衝撃を受けました。

私はゲド戦記が大好きで、その頃から、この作者のル=グウィンに惹かれていったんです。

彼女は80代になっても精力的に活動を続けてきた人で、彼女がブログをやっていることなんて全然知りませんでした。

よく、自分の事を書くことが作家にとって一番困難と言われますが、ル=グウィンもそうだとこ

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森と図書館と歩く日々

森と図書館と歩く日々

書くこと・読むことと生活私の書くことはライフワークです。お給料は出ないことが大半だけれど、私自身は生活の一つの仕事としてとらえています。

そして、毎日というわけにもいかないものですが、お給料の出るイラストの仕事が落ち着いた時や、休日に「大量に読むこと」もライフワークでした。

その、書くこと・読むことをつなげられたのがこのnoteという媒体で、今までツイッターやInstagram、ブログでやって

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朝井まかて『草々不一』を読んで

朝井まかて『草々不一』を読んで

朝井まかてさんは江戸の描写がきれいな人だと私は思っていて、そこの根底に流れる人情の、一番おいしいところを書くところがものすごく魅力的です。

これは江戸を舞台とした短編集なのですが、私がいつもまかてさんのとりこになってしまう「かっこいい女性」を主人公にしたものより、「ちょっと癖のある人々に囲まれた男性」が主人公なのが圧倒的に多いです。

江戸と「かっこいい女性」は私の中では結構リンクしていて、たぶ

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辻村深月『嚙み合わない会話と、ある過去について』を読んで

辻村深月『嚙み合わない会話と、ある過去について』を読んで

背筋がぞくぞくする短編集でした!

嫉妬深すぎる同級生のお嫁さんの顛末の「ナベちゃんのヨメ」など、結構人の「情」に寄り添って書かれた短編集です。

辻村さんはミステリーも好きなのだけど、こういうふうに「ひと」を書けるのがうまくてすごいなあとただただ思います。

私が一番印象に残ったのは「パッとしない子」。有名になった教え子のことを「大人しくて真面目でいい子でパッとしない子」と表現してしまってから起

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椰月美智子『緑のなかで』を読んで

椰月美智子『緑のなかで』を読んで

大学の進路を決めるときって、ちょっと自分も変わってくるし、周囲の環境も変わってきますよね。

自然の多い中で大学生として暮らす啓太は、実はある秘密を抱えてこの地にやってきた。啓太にはいつかかなえたい夢がある。本当のことを母親にも話せず、夢に着々と近づきながら、啓太は高校時代を思い出していた。

私も高校三年の頃、みんなが緊迫した空気に包まれているのが嫌で、そして私自身は先生から「君には文章を書いて

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川上未映子『愛の夢とか』を読んで

川上未映子『愛の夢とか』を読んで

この短編集に出てくるのは、夢のような現実のような物語です。

時々、あれ? これって夢? って思う現実のことだったり、えーこれ嘘でしょ? って思う夢のことがあったりします。

事実は小説より奇なりとはよく言ったものですが、事実は小説より奇なり、より現実に近い小説の方が面白かったりします。

私は最初の「アイスクリーム熱」という作品がとても好きで、これって私小説なんじゃないかと思えるほど淡々と描写さ

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加藤シゲアキ『オルタネート』を読んで

加藤シゲアキ『オルタネート』を読んで

すっごーく、気になってた本です。読めてうれしい!!

直木賞の候補作にもなりましたね。

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」。配信が当たり前になってしまった今、配信の後遺症に悩んだり、マッチングアプリを信奉するあまり不幸になってしまったり、バンドを続けていくことを悩む高校生三人の「オルタネート」をめぐる物語。

今はスマホで、誰とでもつながることができます。そして、「キャラクター」として

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瀬尾まいこ『夜明けのすべて』を読んで

休日にこの本を図書館の館長さんのおすすめ本として紹介されました。

私も瀬尾まいこさん大好きで、館長さんも「昨日買ってきて読んで面白かったから寄贈本にしちゃった!」とにこにこでした。

瀬尾さんの文体、本当に繊細でやさしいんですよね……。

PMSを抱える藤澤美紗は28歳。毎月周期前になるとイライラが止まらず、職場であたりちらしてしまい、今の職場が2度目だ。同じ中小企業で働く山添孝俊はパニック障害

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アダム・ヘイズリット 古屋美登里訳『あなたはひとりぼっちじゃない』を読んで

アダム・ヘイズリット 古屋美登里訳『あなたはひとりぼっちじゃない』を読んで

この短編小説集、切ないです。

出てくる登場人物たちは性的マイノリティであったり、心を病んでいたり、とにかく生きづらさを抱えています。

そんな彼らの日々を淡々と切り取っている短編集なのですが、彼らは日常的にこういう複雑な気持ちをもっているのかと思うとこちらの胸が苦しくなるくらい。

ぶっ飛んだ父とゲイの息子の断絶。恋に恋してしまうのですが、切ない喪失を遂げてしまう少年、愛する兄の死の兆しを予期し

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おはよう日記☀今日はフレンチトーストを食べると決めた日

おはよう日記☀今日はフレンチトーストを食べると決めた日

夜に書いていました。私は何か書いていないと眠りにつきたい時間まで起きていられないので、お茶でもいれてゆっくりお付き合いいただければと思います。

1夜更かし日記のご挨拶普段も超・朝型の私。最近は午後6時ごろ寝て午前3時ごろには起きてフリーで絵や詩の制作の仕事をしていましたが、最近新たに別の仕事も一気にどんどん加わって、なんだかすさまじく慌ただしい思いをしていました。とても大きな仕事ですし、大事だっ

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