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朝井まかて『草々不一』を読んで

朝井まかてさんは江戸の描写がきれいな人だと私は思っていて、そこの根底に流れる人情の、一番おいしいところを書くところがものすごく魅力的です。

これは江戸を舞台とした短編集なのですが、私がいつもまかてさんのとりこになってしまう「かっこいい女性」を主人公にしたものより、「ちょっと癖のある人々に囲まれた男性」が主人公なのが圧倒的に多いです。

江戸と「かっこいい女性」は私の中では結構リンクしていて、たぶんそれは花魁文化だったり、家父長制によって虐げられてきた女性が一番花開こうとしていた時代に、今視点があてられているからかもしれません。

まあ、私が椎名林檎さんばかり聞いていた中学・高校・大学時代があったからかもしれませんが……(笑)

それでも、職人気質の男性だったり、癖のある人々に巻き込まれる様子や、生きていると色々あるけれど、結局は「草々不一」と大団円に終わるというのが伝わってきて、なんだかほっこりとしました。

時代小説は人情と私は思っていて、人の気持ちを一番わかる書き手じゃないと難しいだろうなと思います。人を見てきたからこそ書けるというか……。

世界にはいろんな人がいます。本当に、いろんな人がいます。その中で、想像力を働かせて描く世界は、いつだって素晴らしいと思います。

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