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務川慧悟さんnote

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枯れた街

初めてラヴェルのクープランの墓を、少しなりとも「あ、分かった」と思った瞬間のことを、今でも鮮明に覚えている。2013年の3月、おそらく平均からしたら比較的遅めであろう、僕にとっての人生初海外はパリだった。着いて初日だか2日目だか、忘れてしまったけれどその朝、やっぱり嬉しくって朝食前に散歩をすることにした。当時のiPhoneに入っていた、とにかくなんでもいいからフランス物を聴きながら、と思い、それが

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身体性と思想性の連関について

スポーツマンは馬鹿か、という問いがその昔自分の中に湧き起こった時期があって、そしてそれへの答えは「明らかに否。」であった。

中学時代に憧れた同級生、この人は凄いと感じていた同級生は多くいたが、その中には運動に優れた人が沢山いて、そしてその人たちはどうやら身体の動きが機敏であるに見合った分だけ頭の回転も機敏だったのだ。まったく、頭良いなぁと思っていた。学校の通信簿が良いかどうかにはここでは因らず。

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※試聴版です。オリジナル版(24:38)は購入後に視聴できます。

0:00 第1番 ハ長調
1:31 第2番 ハ短調
3:59 第3番 ニ長調
5:14 第4番 ニ短調
6:07 第5番 変ホ長調
7:41 第6番 ホ長調
10:58 第7番 ホ短調
13:10 第8番 ヘ長調
14:10 第9番 ヘ短調
16:36 第10番 ト長調
17:25 第11番 ト短調
18:39 第12番 イ長調
20:02 第13番 イ短調
21:28 第14番 変ロ長調
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インヴェンション配信に寄せて:バッハ演奏に対する僕の基本的スタンス(※専門的内容を多く含みます)

インヴェンション配信に寄せて:バッハ演奏に対する僕の基本的スタンス(※専門的内容を多く含みます)

小学生の頃、様々な作曲家の作品を器用に仕上げられるような子供では決してなかったけれど、バッハの作品はどうにか比較的心地よく弾けた。そして何人かの大人の方たちに「バッハが得意ね」と時々言われてしまったこともあって、いやそれが実際に上手だったのかはさておき、でもバッハが好きなことは確かで、だからその頃に「好きな作曲家は?」と訊かれれば反射的にバッハと答えることに"決めてしま"った。その答えは今に至るま

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果てある人生と、音楽

人生には意味があるのか、否か。哲学の領域ではあまりにも頻繁に命題となる問いである。
高校生の頃、尊敬する哲学の先生の授業があって、その影響から、よくこの問いに関して思索に耽っていた。もちろん高校を出てからも折に触れてはその答えを、日常の中に、そして音楽の中に、探した。

僕の暫定的な答えは…と言うよりはあくまで1つの生き方のスタンスとしてであるが、人生には結局のところ実質的な意味などない、というも

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小さな秋に寄す

秋は小さな季節ですから、今年もまた、早くも秋が終わりを迎えてしまおうとしています。

ところで、秋という季節は、余りにも美しくなかろうか。食欲の秋。読書の秋。。。ええい!そんな具体的な形容は、今は一旦置いておこう!1年のうちで最も不可思議に自然が色付く秋は、曖昧で、遠い夢を、私たちに多く見させてくれる。秋はどうしてこんなにも美しいのだろう、不思議で不思議でならぬと思ったいつかの僕は、「桜は散るから

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弱き淵より世界を臨む

一週間前に風邪を引いた。一週間前に「も」風邪を引いた、と言った方がより正確かもしれないが。

僕は極端に身体の弱い人間だ。小学生の頃、月に1度ずつは熱で学校を休んでいたし、高校生の頃には3年で4度インフルエンザにかかった。パリに来たての頃には、その空気と水が余りにも自分に合わなくってそれこそ年がら年中寝込み、その度に、どうして僕ばかりがこんなにも弱い人間なんだろう、と自責した。

そんなこんなが余

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無題

先日母方の祖母が亡くなった。言葉はいらない、けれど、1つだけ。死というのはひとつの朝だ。新たな始まりを信じ、死を恐れることなかれ。

動画はフォーレ。レクイエム Op.48より VI.Pie Jesu
https://youtu.be/uzI-3gcjFAg

純粋に随筆的、または単にぐちゃぐちゃとしてしまっただけの独言

「どうにかなる。どうにかなろうと一日一日を迎えてそのまま送っていって暮しているのであるが、それでも、なんとしても、どうにもならなくなってしまう場合があるーーー」

太宰治最初の短編集『晩年』に収められた小さな未完の一編『玩具』より、冒頭です。ところで一体全体こんなにもーーーなんという日本語で表現をしたらよいのかと迷いますけれどここでは敢えて"愛おしい"と言うことにしておきましょうーーーこんなにも愛

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飲み物から考察する「時間」

飲み物に幾度となく魅せられてきた。

フランスへ来て直ぐの頃にワインに魅せられ、その翌年「お茶をする」という日本語のたおやかな響きに何故だか突如ハッとなり紅茶にハマった。それからまた一年が経ち、イタリアで何気なく飲んだカプチーノがあまりに美味しくてコーヒーに取り憑かれた。他にも日頃、ちょっとした時間に好んで飲む飲み物もある。炭酸水や白湯。

これら「人類の飲用する液体物たち」の何が一体そんなにも魅

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