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エッセイ

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生地と虎

生地と虎

数年前から、買う服の価格帯を少し上げた。服のことは今もほとんどわからないけど、耐久性や機能性やデザインのレベルが上がっている実感が嬉しかった。「いいものは長く使えるから結果コスパがいい」なんて、適用されない場合も多いけど、まだ捨てたくなるようなものはなくて助かっている。

いつも行く店で、スーツの上下を買った。「こんなにいい生地がこんな安価に!」との触れ込みだった。肩パッドがなくややゆったりとした

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オンライン会議用の髪型アレンジ

オンライン会議用の髪型アレンジ

美容室で雑誌代わりにタブレットを渡されることが増えてきた。
物理本を買い集めるより、サブスク購入の方が合理的なのかもしれない。

手に取らずに放置していると、タブレットは映像を流し始めた。
JRの車内映像にもあるような「美容のヒント」のような感じで、ヘアアレンジの解説動画が始まった。テーマは「オンライン会議用の髪型アレンジ」。

後ろ髪を束ねる所から始まった。なるほど、先に後ろからか。と思っていた

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半額のいちご

半額のいちご

りんごの味が全盛期とは比べ物にならないくらい落ちてきたこの頃である。

いちご、あまり自分では買わないが好きな果物ではある。

先日、ショッピングモール内のややお高めなスーパー(あえて八百屋風に陳列してる感じのお店)にて、「いちご半額!!」と大きめのポップが出ていた。見ると、なかなか大きめの美味しそうなパックである。

これはと思い、手を出した瞬間、店員さんが「ジャムにしてくださいねー」と声をかけ

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泣いたって

深夜2時。
洗濯物干しにベランダ出たら、泣きながら歩いてる女性が見えた。
嗚咽は漏れているし、手はずっと目元を押さえているけど、しっかり歩いてた。

マンションの3階から見た光景はあまりにも、画になっていた。
だけど、もし正面から歩いてきたとしても、声はかけられなかったんじゃないだろうか。

それぐらい、歩みの力強さに、感動してしまった。

幸あれ。

傘

井の頭公園のカフェでカレーを食べていた。

吉祥寺駅に着いた時から重たい曇り空だったけど、どんどん暗くなってるなと思っているうちに、土砂降りになった。
ガラス張りの外を眺めていると、自分が濡れていないのが不思議なくらいだった。

カレーを食べ進める間に、ずぶ濡れになった人たちが避難してきて、店内はほぼ満員になった。

隣の席に座った男の子2人が、髪も服も濡らしたまま、口の周りをチョコだらけにしなが

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言わない

言わない

両親が離婚した時、ついでのように、サンタクロースの正体が明かされた。面倒なことは全部話してしまえ、と思ったのだろうか。

秘密は、話してしまう方が簡単だ。
他にも、伏せておくべき話をぶっちゃけたり、裏の意図を先に言ったり。
それが一番楽だ。

だが、聞く側にとって、それは必ずしもプラスの情報ではない。
墓まで持っていってほしいこともある。

『逃げるは恥だが役に立つ』のドラマ(第5話)でもそんな話

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袋いりません

袋いりません

レジ袋代の5円は決して高くない。が、袋がいるかどうかを聞き、実際に袋に商品を詰める手間は、5円では足らないだろう。
(本当にそう思ってるかどうかは知らないが)ゴミを減らしたいという意図も間違ってはないと思う。

今日、スーパーに行くと、レジで3回も質問された。
「袋は要りますか?」
「袋に入れましょうか?」
「パイナップルの茎は取りましょうか?」
これで、最初からポイントカードを出していなければ、

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夢オチだとわかっていたとしても。

途中で夢だと気づく夢がある。
悪夢の場合もあるが、楽しい夢の時が多い。

気づいてしまった時の僕は、世界で一番不幸だ。

殺人鬼に追い詰められた時に、
好きな人が自分を呼ぶ声に、
大逆転のチャンスが目の前に来た時に、
ささやかだけど鋭利な非現実を、確信する。

僕は、誰かのヒーローにはなれない。
自分すらも救えない。
理想的な展開を選ぶことはできない。

本当はこうありたいのだな、と思う。
この夢

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閉所恐怖症の起源

閉所恐怖症の起源

とても説明しづらいレベル感の閉所恐怖症だ。

エレベーターはOK。
鍾乳洞はなんとか大丈夫。
ケーブダイビングはお金積まれてもやらない。

閉じ込められる系の映画はNG。
今まで観た中で最悪は『10クローバーフィールド・レーン』、
予告だけで死んだのは『リミット』

脱出できない想像ができやすいとダメみたいだ。

そんな僕の閉所恐怖症の原因を辿っていくと、
井伏鱒二「山椒魚」なのではないか、と思う

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ただそれだけの記憶

ただそれだけの記憶

場所とか時間とか、細かい周辺情報はあまり覚えていない断片的な記憶が、いくつかある。

大抵はフラッシュバックしてしまう嫌な思い出なのだが、
稀に、素敵で大切にしたいものもある。

それは、大学の時に、複数の研究室で飲んで、二次会をする飲み屋に向かう時だったと思う。例年ゴールデンウィークに開催していたBBQの後だっただろうか。

その頃、僕の周りでは珍しくバンドやライブの話ができる、2つ下の後輩の女

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バズ、その後

「バズったツイート」って、自分の目に入った時には数万RT・いいねされた後だということに気づいた。

数万RT・いいねされた=バズった、だから当たり前ではあるのだが、数RT・数いいねの段階で「これはバズる」と推測して「ほらやっぱバズった」と実感する、みたいな経験がない。

個人的には犬猫の動画にまったく興味がないせいもあるのだろうか。
(目に入ったら可愛いとは思う心は持っているが。)

人気であるこ

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蕎麦の嗜み

蕎麦の嗜み

ふと、蕎麦が食べたいと思った。

いわゆる自粛期間、一度も蕎麦屋に行っていなかった。自分で買って茹でればいいのだろうが、蕎麦はお店で食べたい。

というのも、蕎麦は、蕎麦以外が大切なのだ。

南蛮漬けを食べ、天ぷらを食べ、その間に日本酒を嗜み、
最後に蕎麦。蕎麦には薬味。
最後の最後に蕎麦湯を飲む。

"締めの締め"が存在しているのは、素晴らしい。

1人を超える

1人を超える

『逃げるは恥だが役に立つ』

ドラマの8話は、原作(主に6巻に相当)と大きく乖離して、ドラマらしいアレンジが効いていて、風見さんが原作よりいい仕事してる回だと思う。

自尊感情が極マイナスだった津崎さんが、自分の感情だけに囚われるのをやめ、自分に向けられる気持ちを受容して、本当の意味で1人を超える回。
(※ここからまた上滑りしたりして引き続き紆余曲折あるのだが。)

マイナスがプラスに転換したわけ

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しゃっくりは止まる

しゃっくりは止まる

(医学的なことは何も調べていないです)

「しゃっくりが100回続くと死ぬ」という都市伝説は、ネット検索など存在しないに等しかった幼少期の僕にとって、シンプルに謎だった。

誰が調べたんだよとか、90回目までいったら死ぬほど怖いんだろうな、とかは思っていたように思う。

しかし、数えるまでもなく、しゃっくりは止まる。
なんなら、そんなことで死ねるなら続けてみたいと思う。

一人の時に、しゃっくりに

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