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今時の子供らは知っているかはわからないが、平成の初めはオカルトブームで色んな怪奇現象、怪談、噂話、都市伝説が賑わっていた。

その中でも学校の七不思議はとても身近で手っ取り早く怪奇体験ができるので夏になると学校の肝試しと題して校舎内を歩き廻るのだ。

学校の七不思議は地域によって内容が異なるのだが、今回はアワセカガミの話だ。

合わせ鏡と言うと、夜中に鏡と鏡を合わせると悪魔が出てくる、とか、13番目に映っている自分は死ぬときの顔だとか、いろいろな怪異が起きる。

そこで、今回の合わせ鏡はとある中学校の旧校舎での話だ。

男子生徒が夏も近いということで肝試しをしないかと友達のみんなに持ちかけた。

全員が賛成すると、じゃあ今日の夜11時に校庭へ集合となった。



予定の時刻に皆が集まると、旧校舎へと向った。

旧校舎は今どき珍しく、文化財にでもなりそうな木造の建物だった。

校舎の裏側へ回ると、1階の端の窓が以前から壊れているようで、そこから侵入する。

メンバーは全員で4人、窓から旧校舎の中へ入ると、そこは宿直室のようで、埃とカビの匂いが充満していた。

畳の上を靴で踏むのに違和感をおぼえながら丸いちゃぶ台に懐中電灯を乗せ、ルートを説明した。

一人ずつ校舎内を回ってここへ戻ってくるという至ってシンプルな内容だった。

この校舎には屋根裏部屋があり、電気を制御するところらしいのだがそれは表向きの話で、本当は何かを閉じ込めていると噂されている。

その屋根裏部屋まで行ってスマホで自分の写真を撮り、宿直室へ戻ってくるというルートだ。

じゃあ、さっそくと行く順番をジャンケンで決める。

今回の肝試し大会を考えた生徒は最後から2番目だった。

一人目が宿直室から出たあとを見計らって、他は驚かすために配置につく。

もちろん、肝試しを開いた生徒も驚かすためにある場所へ行く。

男子生徒はあの鏡がある所へ向かっていた。

自身の好奇心旺盛な気持ちを我慢できなかったのだ。

友達には内緒で先に屋根裏部屋へと向かった。

目的の場所につくと、体育館の出入り口に使われる様な左右に引く重い扉があった。

夜のしかも夏休み中ということも相まってダメ元で扉を引いてみた。


ーーーー開いた…。


意図も簡単に、さっと開いてしまった。

同時に中の様子を伺う。

暗闇の中、聞こえるのは外で元気に鳴いているカエルや虫の声だけ。

手に持っていた懐中電灯で中を照らすとそこは広い物置部屋のようだった。

以前使われていたであろう運動会の道具や文化祭で使われた物が壁に沿って置いてある。

中を照らし回していると、強い光が見えた。

その方向へ懐中電灯を向ける。

するとそこには大きな姿見鏡があった。

男子生徒はこの屋根裏部屋に本当に鏡があることに少し怖くなってきていた。

だが、抑えきれない好奇心はそれと正反対な行動をしてしまう。

懐中電灯を反射させた方向へと身体は向かって屋根裏の物置部屋は男子生徒の重みで床が軋む音で満たされる。

ゆっくりと、ゆっくりと、鏡の前に辿り着く。

じっくり手持ちの懐中電灯で鏡を観察する。

何十年も手入れがなされていないせいか、埃の汚れでくもっており、男子生徒自身が見えなかった。

そして、噂通りだともう一つ鏡があるはずだ。

それを探してみるが見つからなかった。

すると部屋の外から足音が聞こえた。

このままだと見つかってしまう、そう思った男子生徒はどこかへ隠れようとしたときーーーー

バタンッと重い鉄でできた扉がひとりでに閉まってしまう。

扉の方へ懐中電灯を向ける。

屋根裏の物置部屋の扉の裏側が光った。

どうやら手持ちの懐中電灯が反射しているようだ。

なぜ、扉の裏側が鏡のようになっているのだろう。

男子生徒はそこでハッと気がつく、背後には姿見鏡、目の前には光と自身の姿を映し出す扉、アワセ…カガミ……だ。

慌てるな、まだ何も起きてはいないじゃないかと自分に言い聞かせる。

だが、たしかに恐怖は男子生徒の全身を包み込もうとしていた。

身体が動かないのだ。

額にはジワリと汗がにじみ出てくる。

すると突然鼻につく臭いが、ツンっとした臭いに生臭い土の匂いが混じった様な嫌な臭いだ。


ガタッガタンッッッッ!!!


扉の方の鏡が音をたてた、心臓が破裂するぐらい男子生徒は驚いた。

なにかの拍子に外れたのだろうかと様子をうかがっていると、2枚の鏡扉が生徒に向かって迫ってきた。

逃げようと動こうとした瞬間、2枚の扉は生徒の前と後ろを捕らえた。

何が起きているのか男子生徒は状況が把握できなくなる。

すーっと鏡の扉は近づいてきて、男子生徒の手前に来た瞬間、バタンッと挟んでしまった。

厚さ3センチはある鏡の扉に挟まれた生徒は幸いにも潰れてはいなかった。

だが、彼はたくさんの黒い手に掴まれて鏡の中へ引きずり込まれていた。

もがいても、もがいても、無数の黒い手に奥へ追いやられ、やがて、姿が消えてしまった。

そして何もなかったように鏡の扉はスッと元に戻った。




次の日に行方不明になった男子生徒を警察が大捜索するのは自然の流れだった。

警察は何度も男子生徒の友人達に話を聞いていた。

涙を流しながらことのあらましを話す。

それを僕は近くの鏡から見ていた。

どんなに声をかけても聞こえていない。

手を振っても、飛び跳ねても気が付かない。

僕はもう、静かに見守ることしかできなくなってしまった。

友達の涙、家族の涙、学校の先生の涙をただただ見た。

それから何十年も時間が過ぎていった。

僕はあのときのままで、齢を取らない。

今いる鏡の悪魔がその姿の僕を大きな口を開けて笑っている。

それでも僕は鏡の外の世界を今、現在、この時この場所を見続けている。

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