扉を超すたびに自分がおかしくなっていくのを母は感じていた。

そもそもおかしな世界に迷い込んでいるのだから無理はないのかもしれないが…。

だからといって人型の意思疎通のできるパンを食べてしまったのはなんとも複雑な気持ちだ。

これは、罪を犯したことになるのだろうか…。

回復した身体で次の部屋へと向った。

地下室だった。

青白い蛍光灯と緑色の光があちこちで光っている。

透明のガラス瓶の中に、まだ数センチの胎児と、もう産まれてくるはずの赤子がふよふよ泡立つ透明の液体の中にいる。

そのときは生きているのか、死んでいるのか、はわからなかった。

なにかの医療施設なのだろうか、部屋の中心には手術台のようなものがある。

その奥には異様なほど大きな穴が壁に開いていた。

その穴から微かに風の流れを感じる。

するとその穴から光がチラチラとこちらを照らした。

不規則に動く光はやがて、人がヘルメットに付けているライトとわかった。

向こうもこちらへ気付いたようで立ち止まる。

「貴様ら、何者だ!!!」

なんと迫力のある声だろう。

声の主は警戒と憤怒の混じった気迫でこちらへ来た。

やはり医者なのだろうか、白衣を羽織っている。

「貴様ら、何処から入ってきた!一般市民は立入禁止だッ!警備兵は何をしとる!!」

こめかみに血管を浮きつかせ、母と二人の子供に鋭く睨みつける。

子供二人は余りの怖さに泣き叫んだ。

「ちょ、ちょ、ちょっとまて、怒鳴ったわしが悪かった。泣かないでくれ、ようやく大人しくな……」

話の途中で穴の奥から風に乗ってなにか聞こえる。

すると、一斉にガラス瓶の中の赤子が泣き始めた。

「まずい!このままでは!!」

青ざめた研究員は穴をとても頑丈な扉で閉めた。

なんとか鍵をかけると、扉の向こうから悲鳴がしたと同時に鈍い音がした。


ドゴッ、ズリュッ、ゴンッ、バキッ…………。


扉の向こうの景色など想像もしたくない。


お"ぎゃああああああああああーーーーー!


なにかの獣みたいな鳴き声がしたかと思うと静かになった。

「さて貴様ら、ここは極秘で活動している施設の地下なのだが、なぜここにいるのか貴様らの身元調査する。こいっ!!」

母と子供たちは別々の傭兵に捕らえられ、子供たちは部屋の外へ引きずられる。

「ダメ!子供たちを部屋から出しちゃダメ!!!」

母の願いも哀しいかな叶わず、子供たちは部屋から出されてしまった。

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