思いつき短編:最新のスパ
この間、久しぶりに小学生の頃から仲の良かった友人に喫茶店で合った。
私の働いている喫茶店にたまたま入店してきていらっしゃいませと言って顔が合った瞬間にお互い気がついた。
友人はピシッとしたスーツを着こなして、昔と雰囲気が変わった。
なんか女性のカッコ良さが出ている。
「どうしたの!?すごく見違えたね!!」
肌は艶と柔らかさがあり、シワ1つない。
話を聞いてみると、とある最新のスパへ通っているのだそうだ。
一緒に行こうと誘われたが、あいにくせいかつするので忙しい、と正直に言うと…。
「大丈夫!友達紹介券貰ってて、これ使うと無料体験できるの」
そう言って私に色鮮やかな紙を私に渡してきた。
じゃあ、一回だけ行ってみようかな、と友人の誘いにのった。
その週の休日、私は友人との待ち合わせ場所にいた。
少し早くついてしまって、今は待ちぼうけをしている。
するとタッタッタッとかけ足の音がした。
「おまたせ~」
友人が待ち合わせ場所に着いた。
その時の姿もとても美しかった、スーツを着ていたときとは違って清楚で甘い感じの容姿をしている。
こんなに友人を変えてしまった最新のスパとは一体どんなものなのだろうか…。
痛かったらどうしよう……。
友人の後についていく感じで、意外にも2時間くらい電車で揺られ、海のある地域へと来た。
駅のホームに降りると、もう海が近いのか潮の香りがした。
そこからタクシーで30分のところにそのスパは合った。
外観はアジアンリゾートを想像させる創りになっている。
「いらっしゃいませ~」
ここでも友人と同じようにキレイな女性が受付をしていた。
二人で券を見せる。
「こちらの方が体験の方ですか?」
受付嬢が私に優しく微笑む。
思わず小さく「はい」と返事をした。
「では、お名前と住所のご記入をお願いいたします」
促されるままに手続きをして、水着の上に着るバスローブをもらった。
「こちらへ、どうぞ〜」
案内係の人に呼ばれそちらへ進む。
着いたところは、外で海が見えるキレイな所だった。
完全個室なのか、私と案内係しかいない。
「では、担当の者をお呼びしてきますね!」
眩しい笑顔に目を細めながらこの人も綺麗だなーと感心していた。
数分後に言わずもがな、キレイな人が来た。
「じゃあまずはこのホットアイマスクをして下さい。その後に施術に入りますね」
友人は慣れた手付きでアイマスクをした。
私もそれに習って装着する。
じんわりと瞼全体が温まってきた。
とても気持ちがいい。
だんだんリラックスしてくると、湯船にドロっとした液体が入ってきた。
最初、とても気持ち悪いと思ったのだが慣れると心地が良かった。
美容液入の湯なのだろう、と思っていたのだが何か動いているような感触がする。
それは伸びたり縮んだりを繰り返していた。
その何かは私の皮膚を吸盤のように吸い付いては離れを繰り返し、全身を這っていた。
恐る恐るアイマスクを外すと、ショックとパニックで声が出なかった。
湯船にお湯だと思って浸かっていたのは、大量のミミズだった。
色や大きさ太さも様々、ズルズルと音を立ててうごめいている。
そして、ミミズの体液なのかネバネバした透明の液体が糸を引いていた。
「このヌタウナギの粘液が肌を潤してミミズさんたちが角質を食べてくれるのよねー」
友人はなにも問題無いように気持ち良さそうに浸かっている。
私はこのスパで60分もミミズ風呂に浸かわされた。
もう、これ以降この友人に合わなくなり、大変にミミズが嫌いになった。
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