マガジンのカバー画像

小説《魂の織りなす旅路》

86
光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。少年は己の時間を止めた。目覚めた胎児が生まれ出づる。不毛の地に現れた僕は何者なの…
運営しているクリエイター

#スピリチュアル

連載小説 魂の織りなす旅路/連載時の目次

連載小説 魂の織りなす旅路/連載時の目次

〜 目次 〜
#1  【少年⑴】
#2  【少年⑵】
#3  【不毛の地⑴】
#4  【不毛の地⑵】
#5  【不毛の地⑶】
#6  【不毛の地⑷】
#7  【洞窟⑴】
#8  【洞窟⑵】
#9  【洞窟⑶】
#10  【胎児】
#11  【胎内⑴】
#12  【胎内⑵】
#13  【14才の少年】
#14  【7年分の涙⑴】
#15  【7年分の涙⑵】
#16  

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#51/暗闇⑸

連載小説 魂の織りなす旅路#51/暗闇⑸

 【暗闇⑸】

 「あのね、変な宗教ではないからね。私が実際に感じているって話なんだから。そういう怪しいのと一緒にしないでよぅ。」

 娘の声と水鉢の水の音が重なり合い、その向こう側から妻の声が聞こえてくる。

 《魂だなんて変に思うでしょ。でもね、何かの宗教とかいうんじゃなくて、私はそう感じているって話なの。》

 僕にどう話したらよいものかと不安げに口を尖らせているだろう娘に、僕は言った。

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#54/境目に在る魂⑴

連載小説 魂の織りなす旅路#54/境目に在る魂⑴

【境目に在る魂⑴】

 「気づいたかや。」

 男は皮袋の水筒を差し出しながら、赤土の上に横たわる僕に向かって言った。

 「思い出したんやねぇ。あっちのことを。」

 僕は起き上がりながら皮袋の水筒を受け取り、ぐいと勢いよく水を飲んだ。

 「でも、僕にはわからないんだ。どうやら僕は、あちらとこちらの両方にいるようだ。同時にね。」

 「そうやねぇ。そういうもんやねぇ。」

 男がさも当たり前の

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#55/境目に在る魂⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#55/境目に在る魂⑵

【境目に在る魂⑵】

 あんたという魂? 僕は魂で、魂である僕にはあちらとこちらで2つの体があるということだろうか? 僕の心を読んだ男は、僕の体を指差しながら気楽な調子で答える。

 「その体はあんたという魂が見せているものさね。本来はそんなもん、ない、ない。」

 男は笑いながら左右に手を振った。

 「あんたは物質世界の影響を受けているんさね。人間の体に生まれた魂はやねぇ、脳という物質の影響を

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#56/苦難

連載小説 魂の織りなす旅路#56/苦難

【苦難】

 境目に在る僕の波動は、深い愛と慈しみに満ちた始まりの者の波動にいつも共鳴している。境目に在る僕が始まりの者の波動とひとつになったとき、少年の内に在る僕は始まりの者の波動で満たされる。

 あるとき僕は、唐突に貫かれるような激しい痛みに襲われた。僕はのたうち回りもだえ苦しみながら、とうとう僕にもこのときが訪れたのだと悟った。
 境目には数え切れないほどの魂が在る。僕は、ここでもだえ苦し

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#58/赤ん坊

連載小説 魂の織りなす旅路#58/赤ん坊

【赤ん坊】

 ようやく流れ始めた彼の時間は、あくまでも彼女の波動に共振した、彼女の時間とともにある時間だ。彼の自立した時間ではない。だから僕は、相変わらず彼の体の境界線の内に閉じ込められたままだったし、境目に在る僕もひとりきりのままだった。

 今僕は、再び彼の脳を揺さぶるであろう苦悩を思い描き、身震いしている。彼の脳が妻を助けて欲しいと、哀願するように祈り続けているのだ。
 彼の脳は妻の意思を

もっとみる
連載小説 魂の織りなす旅路#60/魂の解放⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#60/魂の解放⑵

【魂の解放⑵】

 「お父さん。おとぉさぁん。」

 娘の声に体がビクンと痙攣する。僕は重たい瞼を無理やり引き剥がすように目を開けた。

 「仕事を終えて居間に降りてきたら、縁側で寝ているんだもの。こんな時間まで縁側にいたら風邪ひいちゃうよぅ。」

 娘はお風呂を沸かしてくるねと、慌しく居間を出て行った。僕がここに座ったのは昼過ぎだ。ずいぶんと長い時間寝ていたものだ。ああ、あれか。音波だ。あれが気

もっとみる