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連載小説 魂の織りなす旅路#55/境目に在る魂⑵

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【境目に在る魂⑵】

 あんたという魂? 僕は魂で、魂である僕にはあちらとこちらで2つの体があるということだろうか? 僕の心を読んだ男は、僕の体を指差しながら気楽な調子で答える。

 「その体はあんたという魂が見せているものさね。本来はそんなもん、ない、ない。」

 男は笑いながら左右に手を振った。

 「あんたは物質世界の影響を受けているんさね。人間の体に生まれた魂はやねぇ、脳という物質の影響を受けるんさね。その影響が完全になくなれば、俺の体もあんたの体も、見えなくなるやね。」

 僕は思いっきり僕の腕を叩き、足を叩き、両頬を叩いた。しかしそこに痛みはなく、あるのは薄ぼんやりとした感覚だけだった。

 「あっちにも体があったろう? あっちがぁ、あんたの魂が入った本当の体さね。目を閉じて、あっちの体を思い出してみぃ。」

 僕は男に言われるがまま、目を閉じた。小さな手のひらを思い出す。生い茂る草木よりも背丈の低い、夕陽に染まった小さな体。僕は少年の心臓の鼓動を感じ、夕陽や風と一体になった脳の愉悦を思い出す。これが僕の本当の体。

 僕が再び目を開けたとき、そこに男の姿はなかった。しかし、男の魂が嬉しそうに微笑んでいるのがわかる。僕は僕の体を見ようとした。しかし、そこに僕の体はない。そこに在るのは僕という魂だけだ。
 境目に在る僕が少年の鼓動に共振すると、少年の内に在る僕はブルルッと震える。僕は力がみなぎるのを感じた。

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