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社会心理学者のつぶやき

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ふと考えたことを思いつくままにまとめていきたいと思います。 思考の萌芽です。これから発展させていくための基礎です。 少しは思考の参考になるかも?
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2024年8月の記事一覧

「薬」というワナ

「薬」というワナ

(2020.07.17に書いたブログ記事を転載したものです)

 最近,海外ドラマ『ブル/BULL 心を操る天才』をよく観ています。そのなかのある回で,オキシコドンというオピオイド系の鎮痛剤は,違法薬物(ヘロインなど)依存へとつながりやすいという話がありました。「へー,そうなんだ」と思うとともに,やり切れなさもありました。

 その回を観た後に調べたのですが,オキシコドンという鎮痛剤は麻薬取締り法

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統計的差別

統計的差別

(2020.07.10に書いたブログ記事を転記したものです)

 山岸(1992)論文を読みました。詳細な内容紹介は先日のブログをご覧ください(もはや論文そのものを読んだ方がいいのでは?というレベルです)。

 同論文は全体として面白かったのですが,「統計的差別」の分析例は,たとえば,近年見られる女性管理職の割合を〇〇にするといったアファーマティブアクションの理論的根拠に関連しており,興味を惹かれ

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山岸論文のまとめ

山岸論文のまとめ

(2020.07.09に書いたブログ記事を転記したものです)

 「マイクロ・マクロ社会心理学の一つの方向」という論文を読みました。山岸俊男先生が1992年に書いた論文です。この論文が書かれたということは当時そのような視点がマイナーであった,あるいは「勢いのある若手」的な視点であったということかなと思いました。

 同視点は面白く,この視点を発展させていけば現在の日本の社会心理学界は現状と違ったの

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ドラッグとしてのナンパ

ドラッグとしてのナンパ

(2020.07.08に書いたブログ記事を転記したものです)

 7月8日はナンパの日らしいです。なんのためにある日なのだろうという感じもしますが,せっかくですので久しぶりにナンパについて書いてみたいと思います。

ナンパとは何か? そもそもナンパとは何なのでしょう。「ナンパの社会史」という修士論文では,「男性が見知らぬ異性に対して性的な意図をもって声をかけ,短期的な性(愛)的関係を構築してくこと

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心はどこにあるの?という問い

心はどこにあるの?という問い

(2020.07.07に書いたブログ記事を転記したものです)

 院生の頃,いろいろな人に「心はどこにあるの?」と尋ねていた記憶があります。「脳だよ」「その人に備わっているもの」「人と人との間」など多種多様な答えがありました。が,当時はどれも納得できませんでした。

 当時,納得できないなかでも,最もしっくりきたのが「人と人との間」でした。しかし,心は人と人との間にあるはずなのに,個人を対象として

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学習/発達論の展開のブックレビュー

学習/発達論の展開のブックレビュー

(2020.07.03に書いたブログ記事を転記したものです)

 『パフォーマンス心理学入門』(新曜社)第1章の図1「学習/発達論の展開」に関連する書籍を日本語を中心にまとめました(2020.07.03現在)。

 参考にした文献は以下です。引用文献から関連しそうな書籍を抜き出しました。

『スタンダード学習心理学』の第1章,第3章,第4章,第5章。

佐伯 胖(2014).そもそも「学ぶ」とはど

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備忘録|全国結婚支援セミナー in 東京

備忘録|全国結婚支援セミナー in 東京

(2020.06.17に書いたブログ記事を転記したものです)

過去に別サイトで書いた記事ですが,ここでも確認できるように再掲します。

2019年11月10日〜11日に第9回全国結婚支援セミナーin東京がありました。NPO法人全国地域結婚支援センターと東京都が主催となって開催された結婚支援に関心のある方々が集まるセミナーです。

初日は若者を理解することをテーマに,原田曜平氏による講演「未婚化・

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相対主義ってなんだか難しいよね

相対主義ってなんだか難しいよね

(2020.06.07に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,久しぶりに『科学哲学の冒険』を読みました。哲学の面白さを教えてくれた,思い出深い本で,実在論,反実在論の関係について学び直したくて改めて読みました。

この本を読みながらふと「そういえば相対主義って具体的にはどういう主義なんだろう」と疑問がわきました。ですので,早速,調べてみました。

「相対主義に関するよくある質問」サイト人間

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「トマトと戦争」を読んで

「トマトと戦争」を読んで

(2020.06.06に書いたブログ記事を転記したものです)

※ 以下,すべて敬称略であることをお許しください。 

先日,岸政彦のTwitterを読んで知った。「トマトと戦争」というエッセイ(論考)が文芸誌『しししし3 特集:J.D.サリンジャー』で発表される。

岸政彦と千葉雅也と東浩紀と上間陽子の書いたものは基本的に追うようにしているので,とりあえず購入ボタンを押す。「トマトと戦争」。今回

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実在論のバリエーション

実在論のバリエーション

(2020.06.05に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,「反実在論のパターン」という記事を書きました。

『科学哲学の冒険』(戸田山和久)によると,反実在論とは世界は認識活動と独立に存在しているけれども,観察不可能なものについて科学によって知ることはできないと考える立場です。反実在論は「反」と付いていますが,世界は認識活動と独立に存在していることをみとめる点で科学的実在論と同じであり

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反実在論のパターン

反実在論のパターン

(2020.06.04に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,「反実在論は広義の実在論」という記事を書きました。そこでは科学哲学における科学的実在論,反実在論,観念論との関係を『科学哲学の冒険』(戸田山和久)から引用して説明しました。簡単なおさらいを以下でします。

科学哲学では大きく,科学的実在論,反実在論,観念論という区別が存在します。

科学的実在論:人間の認識活動とは独立に世界は存

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反実在論は広義の実在論

反実在論は広義の実在論

(2020.06.03に書いたブログ記事を転記したものです)

心理学を始めた頃は素朴でした。なぜという理由もとくになく「“心”は実在する」と考えていました。

ですが,ある日「性格(“心”の一種)なんて実在しない」という話を耳に(目に?)します。素朴だった私には衝撃でした。「え?性格は実在しない?でも,私に性格あるし,あの人も性格あるよ!」「というか,実在するとか,実在しないとか,どういうこと?

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