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エッセイ

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摂食障害と、私たちのままならなさ

摂食障害と、私たちのままならなさ

「ていうかお前、アンパンマンみたいだね」

私の顔のことだ。丸顔な上にちょっとふっくらしているんだ、私の顔は。

20歳になったばかりの時、サークルの先輩の一言がきっかけで、私は摂食障害になった。このあとの半年間で、162cm 35kg、小学5年女子くらいの体重まで、痩せることになる。

美しくなるために痩せたんではなかった。スタイルが良くなりたいとか、韓国アイドルみたいになりたいとか、決して人並

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カネコアヤノ

カネコアヤノ

「ひとは30代から新しい音楽を聴かなくなり、それまでに好きになった音楽のみを繰り返し聞くようになる」。ネットで聞いたことがある言葉だ。

私は今25歳なので、音楽がインプットできる時間が終わるまで、あと5年。もしあの通説が本当なのだとしたら、その前にカネコアヤノの曲を知れて本当に良かった。

先週、いよいよカネコアヤノのライブに行った。初めてのライブハウスだ、zeppだ。学生の時はお金的にも勇気的

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コロナ禍後、初の片道12時間の飛行機で、開眼。

コロナ禍後、初の片道12時間の飛行機で、開眼。

エコノミークラスでのニューヨークへの12時間の飛行機。12時間かあ、という気持ちは、飛行機に乗る前も乗っている最中も、乗った後の今でも思っている。
やってみたら意外と簡単。それは事実なのだけれど、足や内臓のあたりに何かがもやもやとまとわりついて、詰まっている感じはやはりきつい。
明確に体調が悪くなるということはなかったが、いつかビジネスクラスで旅行できるようになりたいな、というのが正直なところ。

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ブロードウェイで「CHICAGO」を見た日

ブロードウェイで「CHICAGO」を見た日

ニューヨークのブロードウェイで「CHICAGO」を見た。人生初のミュージカル観劇で、ものすごく感動した。

今までミュージカルといえば、劇中で歌が始まる種類の演劇というくらいの認識しかなかった。正直、今でもまだそれくらいしか知らない。
けれどもその、歌のある演劇がものすごいんだった。

まず、私は生歌というのをほとんど聴いてこなかった。そんな私にもわかるほど、ミュージカルの生歌は、遠くからマイクで

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『深く、しっかり息をして』を読んだ

『深く、しっかり息をして』を読んだ

川上未映子さんの『深く、しっかり息をして』を読んだ。

川上さんの語り口の優しさとか、気になったものに対して丁寧にかんがえるところとかが好きで、一気に読んでしまった。

左手に残ったまだ読んでないページの方がだいぶ薄くなったころ、どうして川上さんは、「女の子」とか「女性」に対して結構たくさんのお話をされていることが気になった。

私は女性として生まれながらも、世代なのか、生理が軽いという身体的なこ

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北野武・首 雑感想|お前らはどう生きんの?な映画

北野武・首 雑感想|お前らはどう生きんの?な映画

北野武監督の最新作「首」を見てきました。
初めて鑑賞した北野映画かつ前情報なしで見に行きましたが、とても好きだったので感想をシェア。以下ネタバレ含みます。

まず、私が一番好きだったのは、四肢欠損の俳優さんや、遊女の中に女装男性役が自然にいたこと。話のネタにされるでも、笑いにされるでもなく、一見気づかないほど自然に存在していた。「首」で描かれていた群衆の姿は、今描きうる最大のダイバーシティーだと思

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ゴジラ-1.0 雑感想|2023年で一番面白かった邦画かも。

ゴジラ-1.0 雑感想|2023年で一番面白かった邦画かも。

面白かったよ、ゴジラ!
宇野維正さんのMOVIE DRIVERを見て、ウノコレさんが面白いというならぜひ見たいと思い、映画館へ。

まず、ゴジラのビジュアルが良い。なんだあの、背びれが一個一個出てきて光るやつ。効果音もいいし、光り方も高級感のあるLEDみたいでいい。チェレンコフ放射をイメージした青なのかな。やばいことが始まったのが本能でわかる。
今回のゴジラはもう勝てっこないよ…と思うほど怖くて強

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五彩緋夏と私

五彩緋夏と私

五彩緋夏さんのyoutubeはもう更新されない。メイクをする時には本当に毎日彼女の動画を見ていた私にとって、直視するに耐えない現実だった。

眠れない夜が続いた。疲れ切った頭では、彼女がまだどこかで懸命に暮らしていると自分を騙し切ることもできなくなってしまった。
この文章は、鉄格子みたいな世界で生き抜くための、大きな支えの一つであった五彩緋夏さんへ、感謝を伝えるために残します。
筆者の勝手な解釈を

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劇場版アイドリッシュセブンと、2020sのアニメが向かう先

劇場版アイドリッシュセブンと、2020sのアニメが向かう先

2023年の半分が過ぎた。新入社員としてあたふたしていた昨年と比べると、多少余裕が出てきた。学生の頃には及ばないけれども、月1、2回のペースで映画を見、毎日Netflixで海外ドラマを見ている。上半期のベスト映画といえば、スラムダンクと怪物を真っ先に挙げる。この2本は20余年の人生の中でも、最も好きな映画にランクインしてくる。そしてまさか、そこに劇場版アイドリッシュセブンが追随しようとは。
※コン

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20210826

社会人一年目の私は小学生のような夏を過ごしている。リモートワークになってからは、残業しなければ定時=帰宅時間。6時半に仕事が終わった瞬間、友達の家に集合、月曜日までそのまま友達の家でだらだら過ごす。コロナだから外には出ない。もともと暑すぎるので出る気もなかった。
「もう9月だよ。夏終わるよ。何もしてないよ」と私が言うと、「そうかあ。そういえば何もしてないね」と友達がどうでも良さそうに言った。「あっ

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