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たこ焼き10個入り300円 #食エッセイ

大阪という土地をひとことで表すなら
どこの駅で降りても必ず駅前に
たこ焼き屋がある町だ。

そして大概の店がとても値段が安い。

よく見かけるのは「じゃんぼ総本店」とか「てこや」とか。駅前の商店街とか道路に面してお店が建っていて、常にそこらへんにいい匂いが漂っている。奥様やおっちゃんやちっちゃい子供が小銭片手にたこ焼きを買いに来ていて、大阪の下町を感じる牧歌的な光景である。

もちろんそういうチェーン系のたこ焼き屋もあれば個人でやっているような小さなお店もあって、そういうお店は決まって破格の値段でたこ焼きを提供してくれる。まあ〜目ん玉飛び出るぐらい安いのだ。

私が大学時代暮らしていた富田林。
この町にも、駅前には2軒のたこ焼き屋があった。

片方の店は小さい堀の上に建っている屋台のようなとってもちっこい店で、いつも夫婦2人で切り盛りしているいい店だった。なんかこう、風が吹いたら吹っ飛んじまうほどちっこいみせで。でも不思議と風情があって好きだった。

その店のたこ焼きは
なんと驚きの10個入り300円。
まさに破格のたこ焼き屋だった。

大体平日は夕方に大学から戻ってきてそのまま夜までバイトをするのだが、その合間1時間ぐらいでさっと買って帰るのにちょうどいいお店だった。その店のたこ焼きで小腹を満たして仕事するのがいつものルーティンである。

で、もう片方の店は同じ大学の学生なら皆知っているほどの有名な店だ。たこ焼きは普通に美味しいし、しかもその店はカスタマイズが自由自在に効く。大量のトッピングパターンが用意されていて、みんな思い思いに注文して自分流のたこ焼きを食っていた。

その店はあまり行っていなかったので
値段まではよく覚えていないが
そこも大概安い値段だったように思う。

引っ越して以来、久しくその店に行ってない。冬場でも暖房もなしで店に立っていたあのご夫婦。今年の冬も元気にたこ焼きを焼いているだろうか。これを書いていて、ちょっと気になった。

そういう生活をしている者だから
粉もん料理の値段にはうるさくなる。

よく観光ガイドで紹介されているような「くくる」とか「甲賀流」とかは滅多に食べないし、道頓堀とか難波にいって6個800円とかするたこ焼きを見ると「ぼったくりやんけアホ」と思って馬鹿らしくなる。

そんで、我がまちの贔屓のたこ焼き屋に寄って、たこ焼きとお好み焼きをダブルで800円で買って、熱々を公園のベンチでホフホフ言いながら頬張る。最高に癒される時間だ。

別にタコが大きくなくていいし、材料へのこだわりとかもいらないし、外カリカリで中とろとろじゃなくったっていい。なんとなくチープで、すぐ出てきて、並ばなくてよくて、毎日でも同じのを食べたくなる。

そんなたこ焼きが、私は好きだ。

たこ焼き、と書かれた赤提灯は
今日も駅前を明るく照らす。

それは、私が大阪に住んでいることを思い知らせてくれる優しい灯りであり、私にとってふと心が落ち着く瞬間だ。



おしまい。



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