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どこでもドア(超短編小説)
うちの近くのゴミ捨て場にどこでもドアが捨ててあった。
持ち帰ろうとしたが、重くて持ち上げることができなかった。あきらめようと思ったとき、ドアの下部に車輪が付いているのに気づいた。これなら持ち運べると思い、押しながら家に持っていった。
自分の部屋まで運んで、ピンク色のドアを見た。
「さあ、どこに行こうかな」
僕は考えた末に、ディズニーランドに決めてドアを開いて、反対側に足を踏み出した。
しかし、ただ
酔っ払い<超短編小説>
元陸上選手の酔っ払いが、千鳥足で歩いていると、反対側からやってきた人とぶつかり、水溜りに転んでしまった。
酔っ払い曰く、
「畜生。このコースはクネクネ曲がっていやがるだけでなく、障害物までありやがる」
シングル・シンデレラ(ショート・ショート)
王子様が持っていたガラスの靴に合っていたのはシンデレラだった。王子様はシンデレラに求婚し、めでたく結婚しましたとさ。
これはその後のお話。
城に迎えらたシンデレラは幸せの絶頂にいた。
“過去の不幸を取り返すくらい幸せになってやる”
シンデレラがそう思ったとして、誰に文句が言えましょうか? シンデレラは素敵な服を着て、豪華な冠を被り、靴はガラスの靴、そして贅沢な食事を毎日食べました。夜のほうも、王
正夢(ショート・ショート)
夢の中で僕はユニホームを着ていた。小さい頃から大好きだったジャイアンツのユニホームだ。
子どものとき、プロ野球選手を夢見ていた。もちろんジャイアンツの選手だ。でも、少年野球でレギュラーにもなれなかった僕の夢はあっさりと散った。
それが夢とはいえ、ジャイアンツの選手として打席に立っていた。60歳の太った体のまま。
球場は静まり返っていた。9回裏0対0の場面。ツーアウトランナーなし。僕が思い切り振
追い剥ぎ(超短編小説)
「やい、金を出せ」
「お金は渡しますから命だけはお助けを」
「顔を見られたからにゃ生かしてはおけねえ」
追い剥ぎは旅人を包丁で刺した。
そのとき、一人の観客が、
「わあ、私も顔を見てしまった」
遺書(ショート・ショート)
ゴミ箱から丸めた紙が溢れている。
この世はつらいばかりで何も楽しいことはない。だから遺書を書いている。
最初は遺書の遺の字を書き間違えた。
次に第一人称を俺にするか、僕にするか、あるいは私がいいのか迷った。
平仮名ばかりでは恥ずかしいから、携帯の辞書を見ながら書いている。
最後の仕事くらいマトモにしたかった。
自殺する日を今日にしたが、もう外は暗い。
今日中に遺書を書き終えることは不可能だろう