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水木三甫の短編小説よりも短い作り話

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自著の超短編小説(ショート・ショート)をまとめました。 ユーモアあり、ブラックあり、ほのぼのあり、ホラーらしきものあり、童話らしきものあり、皮肉めいたものあり、オチのあるものあり… もっと読む
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記事一覧

夏の江ノ電で(超短編小説)

夏の江ノ電で(超短編小説)

女「何読んでるの?」
男「『彼女との別れ方』っていう本だよ」
女「何それ? 私と別れたいっていうわけ?」
男「いや、違うに決まってるだろう。もう一人の彼女のことだよ」
女「えー。二股かけてたわけ? ひどい。じゃあ私が別れてあげるから、もう一人の彼女と付き合えばいいじゃない」
女は怒って、次の駅で降りてしまった。
男は追いかけようか、そのまま電車に乗っていようか迷った様子だったが、結局車内に残った。

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どこでもドア(超短編小説)

どこでもドア(超短編小説)

うちの近くのゴミ捨て場にどこでもドアが捨ててあった。
持ち帰ろうとしたが、重くて持ち上げることができなかった。あきらめようと思ったとき、ドアの下部に車輪が付いているのに気づいた。これなら持ち運べると思い、押しながら家に持っていった。
自分の部屋まで運んで、ピンク色のドアを見た。
「さあ、どこに行こうかな」
僕は考えた末に、ディズニーランドに決めてドアを開いて、反対側に足を踏み出した。
しかし、ただ

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大虐殺(超短編小説)

大虐殺(超短編小説)

早朝、「ギャー」という声で目を覚ました。続いて「助けてー」という声が聞こえた。
大虐殺でも始まったのか。しかし、体が動かず逃げられない。
叫び声がだんだん近づいてきた。私は体を硬直させたまま、そこに立ちすくんでいた。
とうとう「ギャー」という叫び声が隣から聞こえた。私は「助けてー」と叫んだ。
目の前に男が立ち塞がった。手には刃物を持っていた。
「ギャー」私は刃物で体を真っ二つに切られてしまった。

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巨人の星(超短編小説)

巨人の星(超短編小説)

「飛雄馬、あれが巨人の星だ」
星一徹が指差した先に星が輝いていた。
「お前はあの星のように、巨人の星となるんだ」
「わかったよ、父ちゃん。俺は頑張るよ」
一徹と飛雄馬が見つめる中、その星は流れ落ちていった。

限りなく”ゼロ“に近い”イチ“(超短編小説)

限りなく”ゼロ“に近い”イチ“(超短編小説)

「3、2、1」
「ちょっと待て」
「どうしたんですか? 死刑執行を止めて」
「もう彼は死んでいる。恐怖で心臓麻痺でも起こしたんだろう」

✕✕世代<超短編小説>

✕✕世代<超短編小説>

ある会社での出来事。
課長「この書類をコピーしてくれ」
社員「はい、わかりました」
課長「おい、シュレッダーにかけてるじゃないか。勘弁してよー」
社員「別に、課長が謝らなくてもいいですよ」

酔っ払い<超短編小説>

酔っ払い<超短編小説>

元陸上選手の酔っ払いが、千鳥足で歩いていると、反対側からやってきた人とぶつかり、水溜りに転んでしまった。
酔っ払い曰く、
「畜生。このコースはクネクネ曲がっていやがるだけでなく、障害物までありやがる」

シングル・シンデレラ(ショート・ショート)

シングル・シンデレラ(ショート・ショート)

王子様が持っていたガラスの靴に合っていたのはシンデレラだった。王子様はシンデレラに求婚し、めでたく結婚しましたとさ。

これはその後のお話。
城に迎えらたシンデレラは幸せの絶頂にいた。
“過去の不幸を取り返すくらい幸せになってやる”
シンデレラがそう思ったとして、誰に文句が言えましょうか? シンデレラは素敵な服を着て、豪華な冠を被り、靴はガラスの靴、そして贅沢な食事を毎日食べました。夜のほうも、王

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マラソンランナー(超短編小説)

マラソンランナー(超短編小説)

監督「後もう少しだ。頑張れ」
選手“うるさいんだよ。お前は口だけだからいいけど、こっちは走ってるんだ”
監督「もっと腕を振って」
選手“わかってるよ、そんなこと。振りたくても振れないから困ってるんだよ”
監督「お前の優勝がかかってるんだぞ」
選手“優勝したって、どうせ名誉は監督が一人占めするんだろう”

アナウンサー「優勝おめでとうございます。勝因は何ですか?」
選手「はい、監督の指示のおかげです

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不合格の理由<超短編小説>

不合格の理由<超短編小説>

父「試験が不合格で残念だったな」
子「十分努力はしたから」
父「あれだけ勉強したんだからな」
子「僕、考えたんだ。試験の前日に右手をケガしたら、今までの努力がムダになるじゃないかって」
父「うん。それでどうしたんだ?」
子「左手でも字が書けるように、ずっと練習していたんだ」

正夢(ショート・ショート)

正夢(ショート・ショート)

夢の中で僕はユニホームを着ていた。小さい頃から大好きだったジャイアンツのユニホームだ。

子どものとき、プロ野球選手を夢見ていた。もちろんジャイアンツの選手だ。でも、少年野球でレギュラーにもなれなかった僕の夢はあっさりと散った。

それが夢とはいえ、ジャイアンツの選手として打席に立っていた。60歳の太った体のまま。
球場は静まり返っていた。9回裏0対0の場面。ツーアウトランナーなし。僕が思い切り振

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追い剥ぎ(超短編小説)

追い剥ぎ(超短編小説)

「やい、金を出せ」
「お金は渡しますから命だけはお助けを」
「顔を見られたからにゃ生かしてはおけねえ」
追い剥ぎは旅人を包丁で刺した。

そのとき、一人の観客が、
「わあ、私も顔を見てしまった」

超短編小説1

超短編小説1

<失恋殺人事件>

「どうして私が犯人なんですか?」
「あなたは被害者の元カノですよね」
「そうだけど、私は殺してなんかいないわ」
「でも、あなたの別れの言葉が被害者の胸に致命傷を与えたんです」

<起承転結殺人事件>
僕は君と出会い、
僕は君と恋に落ちた。
でも君に新しく彼氏が出来たので、
僕は君を殺した。

遺書(ショート・ショート)

遺書(ショート・ショート)

ゴミ箱から丸めた紙が溢れている。

この世はつらいばかりで何も楽しいことはない。だから遺書を書いている。
最初は遺書の遺の字を書き間違えた。
次に第一人称を俺にするか、僕にするか、あるいは私がいいのか迷った。
平仮名ばかりでは恥ずかしいから、携帯の辞書を見ながら書いている。
最後の仕事くらいマトモにしたかった。

自殺する日を今日にしたが、もう外は暗い。
今日中に遺書を書き終えることは不可能だろう

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