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日記やエッセイを綴る場所

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日常の何でもないできごと、心を震わした瞬間を残したい。そんな想いでつらつらと文章を綴るマガジンです。
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記事一覧

親友 -旅のはじまり編-

親友 -旅のはじまり編-

からだを小刻みに揺らす新幹線の振動が、うつらうつらと瞼を重くする。となりでもうすでに目をつぶっているのは、いっしょに旅をする相棒だ。

「東京駅に7時集合で!」の約束通り、無事に合流した駅のホーム。見上げるとカラッと晴れた青空越しの電光掲示板が、博多までの停車駅をなんどもなんども教えてくれている。新幹線ってずいぶん遠くまでいけるんだなぁ。

するとなんの前触れもなく、目の前をスピードを緩めた新幹線

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親友 -うどんのねぎ編-

親友 -うどんのねぎ編-

「もしここが東北です。って言われても、わかんないかも」

岡山駅から乗った在来線の車窓から見える景色は、あまりに馴染みのない、それでいてどこか見慣れた"いつもの"風景だった。ゴトゴト、ゴトゴト、ゴトゴト。東京ではあまり聞かない、落ち着く不器用な音に身をゆだねながら、少々失礼な第一印象をひとり言のように呟いた。

「たしかに、日本ってどこも景色似てるよね〜。東京だけが特殊なのかも」

こんなふうに嘘

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そんなわたしの2023年バケットリスト📍

そんなわたしの2023年バケットリスト📍

あけましておめでとうございます。
2023年がはじまりましたね🐰

年末年始は心置きなく夜更かしをして、昼間はソファに寝転がり、これぞまさに寝正月!と言わんばかりに"なんにもしない"を楽しんでいました。(そう、ぷーさんのように)

そしておみくじは2回引いて2回とも大吉という運気うなぎのぼり!(何回も引くな)ということで、今日から仕事はじめ。さっそくバタバタですが徐々にギアをかけていきたいと思い

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「海の向こうにも人の人生が詰まっている」ということ。

「海の向こうにも人の人生が詰まっている」ということ。

PCR検査を受けずともチケット片手に自由に飛び立てた頃は、時間とお金ができるたびに海の向こうへと渡った。宿も行く場所も決めずに、ただ飛行機に乗るだけのときもあった。街を歩き、そこで感じたままに生きる。なにも決まっていない。ただ1秒、1秒、したいことをする。

道ゆく人と話し、売店で買い物をし、路面電車やバスに乗った。

今思うと、私にとって「自分の目で世界を見ること」がどれほど大切だったのかわかる

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愛犬との15年と約束。

愛犬との15年と約束。

「約束だよ?」

「うん、約束。」

2021年11月20日、愛犬ももちゃんが亡くなった。15才と11ヶ月だった。寂しいけど、悲しくはない。ある約束をしてお別れをしたからだ。

ここに、15年間の思い出と、これからのことを残しておく。明日からもものいない世界を、ももといっしょに、生きていくために。

***

わたしが10歳のときに、突然やってきた柴犬がももだ。あれはまだランドセルを背負っていた頃

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夜のドライブ

夜のドライブ

夜のドライブが苦手だった。暗い車内には、彼の好きな曲が迷いなく流れ、街並みは容赦なく過ぎ去る。何もついていけない。何も捉えられない。

夜のドライブは、「どうせ終わる」ことの象徴だ。もうすぐデートが終わる。楽しかった時間が終わる。そのあと芋づる式に頭に浮かぶ言葉は、今度いつ会うのかわからない、もう会わないかもしれない、だった。

頭をぐるぐる......巡る、独りぼっちの感情たち。言葉にしてみれば

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大好きな人たちのおかげで

久しぶりに、夜の日記を。わたしは、大好きな人たちのおかげで、元気に、自分らしく、生きられているのだなと。夜の瞑想をしていたらぶわっと涙がでて止まらなくなった。

会社の上司・先輩・同僚。フリーランスの仕事でお世話になっている先輩やクライアントさん、編集者さん。同じライター仲間の友達や先輩方。いつも見守ってくださっている、社会人になってから出会った方々、そして学生時代からお世話になっている先生や先輩

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このさえない現実を夢みたいに塗りかえればいいさ

このさえない現実を夢みたいに塗りかえればいいさ

“そう何度でも 何度でも 僕は生まれ変わっていける
そしていつか捨ててきた夢の続きを”
──Mr.Children 蘇生

イヤホンから流れるみずみずしいメロディーに背中を押され踏み出した一歩は、吹き抜ける春風とともに空高く舞い上がった。

仕方なく、交互に動かしていた足を止める。澄み切った空を眩しく見上げ、踏み出した一歩は「新しい」なんて言葉で表現するには大げさな、平凡な一歩だった。

それでも

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何もできない痛み、力になりたい痛み

何もできない痛み、力になりたい痛み

灰色の薄い雲が、今にも雨粒を降り落としそうにだらだらと居座っている。視線をさらに遠くに移すと青空が。白い雲とともに浮かんでいる。とても宙ぶらりんな頼りないその青空は、今にも消えそうに、ただ"青空"でいるばかりだ。

インタビュー原稿の続きを書こうとPCを開いた。書いては消し、書いては消し、何日目だろうか。結局筆は進んでいない。何にこだわっているのか、何に納得できないのか。書けなかった。一旦PCを閉

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元気です、でも寂しいです

元気です、でも寂しいです

「ここではないどこかへ」行きたい衝動が、人よりすこーしだけ多い自覚はある。

そんなわたしが月〜金お家に引きこもっている。仕事に支障はない。なのにモヤモヤは膨むばかり。今朝目覚めて最初に心に浮かんんだ言葉は「一週間、なっっがっ!」。外に出ていろんな刺激をもらい帰路についていた数ヶ月前がなつかしい......。「会いたい人には会いに行くが、モットー!」と鼻息荒くに言っていたのに、いつまで続くんだろう

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しょうがない、と許していい空。

しょうがない、と許していい空。

いつもと変わらない朝。雲ひとつない。薄いカーテンに太陽がまっすぐに飛び込むけれど、風に揺れかわされる。床には木漏れ日がゆらゆらと。カーテンはふくらみ、しぼむ。まるで呼吸をしているみたいだ。

みずいろの空は、濃くなく、薄くもなく。チューブ絵具のキャップをくるくると開け、キャンバスにみずいろを押し出した。少し湿った筆を乗せ、迷いなく引く。すっと大きく、世界中すみずみまで。今日の空は、そんな色だ。

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「命」を「使」って、生きる時間

「命」を「使」って、生きる時間

雨の日は、文章が書きたくなる。
雨音を聴きながら、しとしと筆を走らせる時間を愛でる。書くことが心底好きだ。そんな感情は、雨の日が連れてきてくれるのかもしれない。何を考えるでもなく、何を感じるでもなく。それでも指はなめらかだ。

ただ生きている証を残したい。「文章を書く」ことに出会ったのは、ちょうど就活を終えたばかりの頃。当時はとにかく、自分の世界を書きたかった。胸の奥からえぐられるような生々しい傷

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生きづらさは、選択していた

生きづらさは、選択していた

いつもビクビクしながら過ごしていた。特に社会人になってから。いつ獲物に喰われるかわからないと怯えながら周りをキョロキョロする。

安心安全な屋根のある家を見つけられず、いつも野宿をしているかのような、疲れと空虚でいっぱいの心理状態だった。

「生きづらい」

そうはっきり言葉にし涙を流した日。会社に行けなくなった日。ちょうど1年半くらい前のことだろか。あの日から本当の意味で「自分のための人生」が始

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Happy Birthday自分と仲良くなれた自分へ

Happy Birthday自分と仲良くなれた自分へ

死なずに24歳の誕生日を迎えられた。お風呂の湯船につかりながら呟いた「生きててよかったぁ」は、心の奥底から出た本音。

なんせ去年の誕生日を迎えた朝、心に浮かんだ言葉は死にたいだった。スマホ画面にはおめでとうの文字が並んでいる。嬉しい。でもなぜだろう。次の瞬間、涙がぽろぽろとこぼれた。生きている実感を体いっぱいに受け止めることができず、頭の中がぐちゃぐちゃになった。

去年のわたしにとって誕生日は

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