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"本日は、お日柄もよく"

昨日の続きを書く前に、感想を書きたい本が着々と溜まってきているので先にこちらを書いておく。原田マハさんの、「本日は、お日柄もよく」いう作品についてだ。
簡潔にあらすじを述べる。
普通のOLだった二ノ宮こと葉は、昔好きだった幼馴染である今川厚志の結婚披露宴で、感動的なスピーチに出会う。そのスピーチをした人とは、伝説のスピーチライター・久遠久美だった。そのスピーチのすばらしさに涙した主人公こと葉は、久遠に弟子入りし 彼女の元でスピーチライターとして活動していくことになる。
大雑把にまとめるとこんな感じである。

主人公の憧れの人の職業が「スピーチライター」であるということもあって、この本の中には思わず涙してしまいそうな感動的なスピーチが数多く登場する。とてもじゃないけど目で追うだけは勿体無い言葉の数々だ。この本を読むのは何度目だろうか。読むたびに、素敵なスピーチを声に出して読みたくなる。

私は初めてこの本を読んだ時、「スピーチライター」になりたいと一瞬思った。そのくらい、私にとって言葉の力というのは特別だった。
この本の中では政治家のスピーチを考え、言葉の力で、スピーチで、政治を そして日本を変えようなんていうフレーズがあったりもする。スピーチだけで日本が変わるというのは大げさかもしれないとも思うのだが、かの有名なアメリカ大統領だったバラク・オバマは、スピーチの力で当選したとも言われているようだ。ChangeはChance。変化することで与えられた機会をものにする。
まだまだ「言葉の力」で何か大きなことを、成し遂げることが私たちにはできるのかもしれない。


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この本は、良い言葉がたくさん溢れすぎていて感想を書くのが難しい。読んでいて涙が溢れそうなシーンは多くあったし、自分が人前で話す時に参考になりそうなことはあったものの、改めて感想を書けと言われると案外難しい。

スピーチライターという仕事の存在そのものさえ、この本を読むまで知らなかった。スピーチライターは言葉を操る魔法使いのような気が今はしている。スピーチをするべき人のために、その人の考えをよく聞き取って、その人そのものの芯となっているような考え方に触れ、その人の思いが伝わるようなスピーチを創る。
決して簡単なことではないと思うし、その人が口にするにふさわしい言葉を探すのは、言葉というものについてより多く知っていなければ難しいことだと思う。もちろん語彙力やボキャブラリーの数も必要だろう。



この本の良いところは、言葉の力を何度も伝えてくれるだけではなくて、「時には言葉以上に力があるもの」についても伝えてくれているところだと思っている。
言葉は人の心を感動させ、幸せにすることがたくさんあるかもしれない。言葉を聴いて心が震え、涙する人がたくさんいるかもしれない。

282ページにこんな一節がある。

久美さんが言った。
「ほんとうに弱っている人には、誰かがただそばにいて抱きしめるだけで、幾千の言葉の代わりになる。そして、ほんとうに歩き出そうとしている人には、誰かにかけてもらった言葉が何よりの励みになるんだな、って」

言葉がなくとも、誰かに支えられる人がいる。むしろ言葉なんてないほうが、誰かのためになる時がある。


言葉は素晴らしいけど全部を言葉で伝えようとしなくたって良い。


大切なのは心(マインド)だから、と
この本は伝えてくれているような気がしているのだ。


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