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#エッセイ

夏目漱石の「二百十日」/毎年この時期になると読みたくなる名作中編小説

夏目漱石の「二百十日」/毎年この時期になると読みたくなる名作中編小説

二百十日って、立春から210日目の日のことを言います。9月の今頃の台風が襲来し風が強い日だと言われています。今はあまり使われない季節をあらわす言葉ですが、この「二百十日」という題のついた夏目漱石の中編小説があります。私はこの小説が大好きで夏の終わりになると読みたくなるのです。

九州の阿蘇登山に都会(熊本)から来た若者2人。登山の途中、悪天候で道に迷い遭難寸前になって麓の宿に戻ってくる、という話で

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随筆家 岡部伊都子さんのこと

随筆家 岡部伊都子さんのこと

今の若い方は知らないかも知れないが、十数年前に亡くなった岡部伊都子さんという随筆家がいた。多くの雑誌に紀行文や随筆を書いていた。彼女の随筆は文章が香り高く巧みで、でも文章のテクニックに流されることなく対象を的確に捉えていて大好きな文章だった。

日本各地の工芸品の美しさを読み易い文章にまとめ、多数の雑誌等に発表されていた。彼女の随筆集を20代の頃はよく読んだ。たくさん読んでも読み飽きることなく、図

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小学生の頃読んだ本と食いしん坊の私

小学生の頃読んだ本と食いしん坊の私

字を覚えるのが遅くて、本好きになったのは小学校の2年か3年の頃じゃなかったかな。

昔の小学生だったので、学齢に達するまで字が読めないのなんてフツーだったよ。

その中でも私は殊更文字が読めるようになるまで時間が掛かった覚えがある。

字がスラスラ読めないから、授業なんて面白い訳もないし、低学年の頃は授業中ぼーっとしてたんじゃなかったかな?

そんな理解力イマイチの私だか、字がちゃんと読めるように

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トンプソン ツインズ Live in JAPAN/1984年のヤングミュージックショウ

トンプソン ツインズ Live in JAPAN/1984年のヤングミュージックショウ

かつてNHKにヤングミュージックショウという番組があった。来日した「外タレ」(来日した外国人タレント。洋楽ロックのミュージシャン達のことをこう呼んだ。今もこう言うのかな?)の来日公演の様子をイレギュラーに放送していた。私ら洋楽ファンには貴重でありがたく、年に数回ほどの放送を楽しみに待ち望んでいた番組だ。

そのヤングミュージックショウの中でも特に良く覚えているのが、1984年の来日公演の様子が流れ

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「ヤバいモノを見てしまった❗️」感が半端なかったRELAXのミュージックビデオ/フランキーゴーズトゥハリウッド

「ヤバいモノを見てしまった❗️」感が半端なかったRELAXのミュージックビデオ/フランキーゴーズトゥハリウッド

ストーリィ性のある作り込まれたミュージックビデオといえば、マイケルジャクソンのスリラーが有名だ。あの曲がヒットしMVが流れるようになったのは80年代初めの頃だったか。

洋楽ミュージシャンのライブ映像が見られることさえ稀だったその頃に、あの凝ったMVを目にしてその斬新さと面白さに圧倒された。

その当時、他の多数のMVが多くのミュージシャンによって制作されたが、たまにしか目にすることができなかった

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ロキシーミュージック サイレン Roxy Music SIREN

ロキシーミュージック サイレン Roxy Music SIREN

洋楽ロックにどっぷりだった頃、Roxy Music(ロキシーミュージック)と言うイギリスのバンドのSIREN(サイレン)と言うアルバムが好きで、一時期よく聞いていたことがあった。

不意にそのことを思い出して、YouTubeで検索しそのアルバムを聞いてみたんだよね。耳馴染みの良い楽曲が多数で、改めて聞いてなんか良いなぁと思った。都会的で洗練された雰囲気だけどどこかに毒が潜んでいて、ただの軽いポップ

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熱狂と孤独と/ロックミュージシャンのアンバランスな日常を想像する

熱狂と孤独と/ロックミュージシャンのアンバランスな日常を想像する

最近のYouTubeはコンテンツが凄い。私がまだ中〜高校生だった頃の伝説のライブとか憧れて恋こがれるように思っていたミュージシャンの音源がアップされているのだ。これはかつての音楽ファンからすれば夢のような事だ。視聴し始めると時間を忘れてしまう。

つい最近は高校生の時、制服のままで何度も見に行ったツェッペリンの映画「永遠の歌」がYouTubeに上がっているのを発見し、ひゃ〜❗️と思いながら視聴した

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ロック雑誌「rockin`on(ロッキングオン)」を読んでいた

ロック雑誌「rockin`on(ロッキングオン)」を読んでいた

中学〜高校にかけて、夢中になって聞いていた洋楽ロック。もう45年も前の事だ。そのロック少女だったワタシが熱心に読んでいた雑誌がロッキングオンだった。今思い出してもかなりとんがった雑誌だった。

その頃一番売れていたロックの情報誌は「ミュージックライフ」だ。写真も情報も満載で当時の洋楽ロックの情報No.1がミュージックライフ。一番メジャーな雑誌だった。

だけどミュージックライフ誌は洋楽ロックの本質

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あの頃は「冬はスキー」がデフォルトであった

あの頃は「冬はスキー」がデフォルトであった

私、若い頃は典型的なインドア派でね、外でスポーツとかは全然やらない人だった。活動的に動くのが普通の20代の頃でも、体を動かす事なんてほぼ何もやってなかったよ。あんまりそういうの好きじゃなかったんだね。必要があれば長距離でも歩くし、普通に自転車にも乗ってたけど必要があってそうしただけで、体を動かすのは心底億劫だった。

東北の仙台に住んでいる訳だから、冬になったらスキーって当時の若者ならば当前だった

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「王様」のロック魂(笑)

「王様」のロック魂(笑)

私の自分形成(アイデンティティとも言うね)の大きな要素の一つに、中学生の頃に出会った「洋楽ロック」がある。Queen、Led Zeppelin、King Crimson、DAVID BOWIE その他のニューウエーヴのバンドの数々……。いまだにその頃よく聞いた音楽を耳にするとその頃の気持ちが蘇ってくる。半人前で未熟で出来ない事だらけで、自分の置かれた環境には不満ばかりで何をどうすればいいのか、自分

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久世光彦氏の文章/初エッセイにして老練な文体

久世光彦氏の文章/初エッセイにして老練な文体

「昭和幻灯館」と言う1冊のエッセイがある。TVドラマの製作者・演出家で有名な故・久世光彦(くぜてるひこ)氏の処女作だ。私は20代の頃この本に出会った。確かその時まだ古い建物で西公園にあった頃の市民図書館だったと思う。開架書庫の良さであまたある本の背表紙を見ながら「今回はどの本を借りよう?」とゆっくりと書庫を巡っていた時に目に入った本だった。

↑ハードカバーの丁寧な作りの本。硫酸紙がかけられ細部ま

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カッコつけようとしないのって大事だ/20代の頃愛読してた 椎名誠

カッコつけようとしないのって大事だ/20代の頃愛読してた 椎名誠

本音を言って本音で行動する。これってカッコ悪いかも、とか思わない。カッコつけてて良い結果になった試しがない。知ったかぶりしたりでカッコつけない。

だいぶ前のことだけど、一流の写真家としても活躍していた人がいた。その人は本当に多才な人だったんだろう、小説まで書いて本も出した。その人が書いた小説を偶然読む機会があったのだけれど…………正直言ってつまらなかった。自分の若い頃の人間関係や挫折を描いた自伝

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聖歌隊のソリストとして評判の修道士/グレッグ レイク (ELPに関するごく個人的な見解)

聖歌隊のソリストとして評判の修道士/グレッグ レイク (ELPに関するごく個人的な見解)

ELP(エマーソン レイク&パーマー)聴きまくりの数日を過ごしてた。キエフの大門にはまってから、その他のELPが聴きたくなり、家にいる時はずうっとリピートしっぱなし。リリースされて約50年経って、ようやく聴く耳を持ったワタシです。

アルバムを全て聴いた訳でもないし、今更こんな昔のアーティストのことを書いてもどうだか、という気もするがどうしても書きたくなったので書いてみる。

ELPの音楽の魅力っ

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日本に美術ファンはそんなに多いのか?

日本に美術ファンはそんなに多いのか?

すごく不思議に思っていることがある。東京あたりの美術館でちょっと名の知れた画家の展覧会があると、びっくりするほど人が並んでいたり大賑わいで入館制限がかかったりする。東京だけでなく国内で開かれる美術展、知名度の高い画家やアーティストのものだと臨時駐車場まで設置されたりする。日本にそんなに美術愛好家は多いのか???すごく疑問なのよ。

数年前に伊藤若冲の大規模な展覧会があって、かなりの盛況だったみたい

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