マガジンのカバー画像

短編小説・読切小説集

30
自作の一回読切の小説や、数回で完結する短編小説を集めています。基本的にハッピーエンドな青春時代を描いています。
運営しているクリエイター

#彼女

【読切小説】ガラスのPALM TREE

【読切小説】ガラスのPALM TREE

「もう…あたし達はダメなのかな…」

知子が助手席でそう呟いた。

「俺は…知子次第だと思ってる」

「もうっ、正志君のバカッ…」

夜の首都高の大黒パーキングエリアに停めた車の中で、俺達は最後かもしれない話し合いをしていた。

2人の中がギクシャクし出したのはいつだろう。

夏に海で出会った頃には、互いが互いを必要としていた。

必然的に俺達は惹かれ合い、どちらからともなく告白し合い、付き合うよ

もっとみる
【読切小説】初戀

【読切小説】初戀

1「今度、映画に行こうよ。俺と、三井と、田川さんと井上さんで」

「え?4人で?」

「そうそう。最近、三井と田川さんが上手くいってないみたいでさ、三井から相談を受けたんだ。じゃ、2人で解決出来ないなら、俺が一肌脱いでやるって言ってね。でも俺が1人加わるだけじゃ、ちょっと…ね」

「それで、アタシを誘ってくれたの?」

「うん…。ダメかな」

「ううん、いいよ。アタシで役に立てるなら」

「本当に

もっとみる
【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第10回)

【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第10回)

<前回はコチラ>

28平成2年、2月。
俺はバレンタインデーに軽音楽サークルの後輩、サキちゃんからチョコをもらう約束をし、つい浮かれていたことで、妹の由美からドン引きの不審な目で見られてしまい、若干兄と妹としての関係がグラついてしまった。

それ以来、俺は徹頭徹尾アパートでは無表情、無感情を貫くようにしていた。

これまで高校のバレー部時代、1つ年上の女子の先輩と付き合ったことはあるが、学年違い

もっとみる
【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第11回)

【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第11回)

<前回はコチラ>

31「お帰りなさい」

由美は戸惑った。明らかに若い女性の声だったからだ。正樹なら、おかえり~としか言わないのに。誰?

「由美、今朝は悪かったな。置き去りにして…。こちらは、俺の大学の軽音楽サークルの後輩、石橋咲江さん」

「由美さん、はじめまして」

由美は玄関で固まっていたが、とりあえず挨拶した。

「どっ、どうも…。由美です」

「由美がビックリするのも仕方ないよな。兄

もっとみる
【短期集中連載】保護者の兄とブラコン妹(第14回)

【短期集中連載】保護者の兄とブラコン妹(第14回)

<前回はコチラ>

40俺と由美の3年生としてのスタートは、ほぼ順風満帆といえるだろう。

俺も火曜日に家庭教師していた女の子が高校に合格したおかげで、ぜひウチに…と新たな引き合いがあり、再び家庭教師として火曜日にバイトすることになった。
何かの因果か、又も中3の女の子が相手なのだが、今度は英語ではなく数学が苦手な子らしい。

「えー、お兄ちゃん、数学得意だっけ?お兄ちゃんよりアタシが教えに行って

もっとみる