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自閉症の子どもを育てる

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2000年10月。 生まれた男の子は知的障害を伴う自閉症でした。 かなり早い時期に診断を受け、手探りで子育てしてきました。 今年、二十歳になります。 いい節目なのでまとめておこう… もっと読む
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冒険

冒険

別に、何かがあったから書けなかったわけでもなければ、何も無さすぎて書けなかったというわけでもなく、4ヶ月も放置したのは「書くことに楽しさを感じなくなったから」に他ならない。

というか、それ以外の楽しみを見つけて没頭していた。

私は不器用で、何かに没頭するとそれ以外のことがまったくできなくなる。興味をなくしてしまうのだ。いわゆるマルチタスクが可能な脳ではないのだろう。

今回、楽しんでいたのはデ

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学習

学習

もうすぐ二十歳になるうちの子どもは、重度知的障害である。3歳程度の言語能力しかないので、ほぼなにもわかっていないというのが実情だ。

それでも、なにやら感じたり考えたりすることはできるようで、それを表現することが全然できずにいるという感じに見える。

たとえば、空間認知能力は人並みにあるので、何かをするときに、工夫をするということができてしまう。その結果がどうであれ、効率という言葉の意味を知らずと

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お手伝いロボ

お手伝いロボ

台風で一日中家にいる。コロナの時もそうだったが、家にいると穏やかな顔をしている。外の世界は楽しいだろうけれど、それなりにしんどいんだろう。

家にいると、だいたいはゲームをしたりYouTubeを見たり、車を並べたりと一人遊びをしているのだが、飽きてくると「お手伝いロボ」になる。

お手伝いロボというのは、ピタゴラスイッチという番組で時々流れる歌だ。その歌に合わせて、子どもがお手伝いをする様子が流れ

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大きな音

大きな音

テレビやタブレットの音が大きい。何度注意しても大きい。一度は小さくするのだが、気がつくとまた大きくなっている。

数字だと理解しやすいので「大きな音はやめましょう。テレビは15まで。」とボリュームの可視化も目指してみたが、適正ボリュームがわかっていないわけではなく、ただ大きな音で聞きたいのだからいたちごっこだ。

なぜ大きな音になるのか、いろいろ考えてみた。小さいときに中耳炎を繰り返した時期があっ

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物の管理

物の管理

日常生活で人の手を借りまくっていると、自分では確認しなくなる。

先日のサッカーでは、ソックスを片方忘れて帰ってきた。

「次からは忘れ物しないように気を付けようね」と、いつもなら言うのだが、今回は趣向を変えてみた。

「じゃあ、土曜日に(スポーツ)デポにつれていってあげるよ。新しいソックスがいるでしょ?」

本人は親が買ってくれると思っているので、元気よく「はい!」と返事をしたが、予想外の次の言

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季節

季節

彼は、生活全般的に「準備」というものが苦手だ。たぶん、予測がつかないから「何を持っていけば滞りなく活動できるのか」がわからないからだ。

「忘れもの」が多いのにも理由があって、前回使わなかったから必要ないと、自分の頭の中で勝手に処理されているのだろうと思う。

「サッカーの支度できたの?」と聞くと「ママ一緒に。」と返ってきて、一から「あれを持ってきて」「これを持ってきて」と指図し、全部並べて一つず

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お経は苦手

お経は苦手

昨年の11月に、私の父が亡くなった。

実家は田舎なので丸一日遺体を自宅で保管する。子どもは全員揃っていたが、孫が次々と帰ってきて「じいや…」と泣いていた。

きれいにしてもらった父は、生前の苦しみから解放されて、ただ眠っているように見えた。ドライアイスの効果もあり、ひたすら冷たくなっていく父を見て、触って「じいや動きません」と言った彼が、何を感じていたのかはわからない。

「これが死ぬってことや

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健康診断

健康診断

学校に通っている頃の健康診断はけっこうアバウトで、身長体重。何年かに一回心電図とかレントゲンがあったが、採血はなかった。

作業所に通いだして1年半だが、昨年の健診で脂肪肝が発見されてありがたかった。

今年も健康診断が始まった。今日は身長、体重、血圧を測り、明日は医師の問診と採血、採尿便潜血などの検体検査がある。

血液以外の検体は自宅でとって持っていくので、問題はない。採血も大丈夫。問診は訳が

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みんな違ってみんないい

みんな違ってみんないい

SMAPの「世界に一つだけの花」という歌が流行り出した頃から、「みんな違ってみんないい」と口にする人が増えたように思う。

障害や生きづらさを抱えた人たちへの応援歌のように使われることが多いように思うが、その使い方って「ほんとにそれでいいのかな?」と私は思っている。

うちの子は「みんな違ってみんないい」などと思ってなくて、みんなと同じでありたいと思い続けているからだ。

かなり早くから障害はわか

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なんでも「はい」と言ってしまう弊害。

なんでも「はい」と言ってしまう弊害。

金曜日の連絡帳に「洋式トイレの蓋をしたまま放尿して、事業所から苦情が出ました。おうちでもしっかり指導お願いします」と書いてあった。

うちの彼に限ってあり得ない。

とは思ったが、念のために彼に確認してみた。
「蓋におしっこかけたの?」「はい」
「蓋におしっこかけてないの?」「はい」

そう、彼は何を聞かれても最初は「はい」しか言わないのだ。

で、よくよく聞いてみると「朝から水」「流しました」「

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ヘルパーさん

ヘルパーさん

私は専業主婦なので、仕事があるからとか用事があるからという理由で、物理的に一緒にいてやれないというわけではなかった。

長時間一緒にいても、イライラするような子でもなかったので、レスパイトが必要というわけでもなかった。

それでも、年に数回とはいえヘルパーさんを利用し続けているのは、家が核家族で一人っ子、父、母、本人しかいない状況だから。コミュニケーションが全くとれないという障害では「友達」を得る

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ゲームでお金の使い方を覚える

ゲームでお金の使い方を覚える

最近買ったPS4のゲームは、車のレースをするものだが、何度も同じコースを走ってコインを貯めないと、つぎのレースに使う車が買えないという、ちょっとシビアなゲームだった。

無制限に車が買えたり、カスタム仕様にできたりした今までのバージョンとはちょっと違う。

最初は、優勝しても次のレースに出られない理由がわからず「ママ、助けて~」などと言っていたが、ちゃんと説明すると理解した。

普段の生活でもこれ

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工作

工作

工作は、手先をよく使う。手指や手掌の感覚過敏があったり、それがとれてきても不器用だっりしたころは全くやろうとしなかったが、折り紙を三角に折れたら「ありがとう!これでママは工作が楽になるよ!」と言いながら千羽鶴を作ったり、コースターを作ったりしていると、三角1回しか折れなかったものが2回になり袋折りになりして、ついに鶴が折れるようになる。折り紙を触りだしてから10年くらい経っていた。

そうやって、

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スマホ

スマホ

うちの子は重度知的障害をともなう自閉症なので、二十歳になるが、まだスマホを持たせていない。

家では古いiPhoneなどを使ってYouTubeを見たりゲームをしたりしているし、出掛けるときにはカメラの替わりにそのiPhoneを持ち歩いたりしているが、電話番号のちゃんとあるスマホを持たせたことはない。

これは、もし知らない人から電話が掛かってきた場合や、迷惑メールが山のように来るようになった場合な

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