大きな音
テレビやタブレットの音が大きい。何度注意しても大きい。一度は小さくするのだが、気がつくとまた大きくなっている。
数字だと理解しやすいので「大きな音はやめましょう。テレビは15まで。」とボリュームの可視化も目指してみたが、適正ボリュームがわかっていないわけではなく、ただ大きな音で聞きたいのだからいたちごっこだ。
なぜ大きな音になるのか、いろいろ考えてみた。小さいときに中耳炎を繰り返した時期があったので、器質的な問題も疑ってみた。耳鼻科的には問題ないという。
実際に小声で「アイス食べる?」と聞いてもちゃんと返事をする。
器質的に問題がないとすれば、あとは気持ちの問題かも。嬉しいとき、楽しいとき、何かを言いたいときに声は大きくなる。同じように「聞いてほしい」「ノリノリ」の時に音は大きくなるようだ。まぁ、当たり前だと言えば当たり前なのだが、早朝でも窓が全開でも関係なく、自分の気分で音や声が大きくなるのはちょっと困る。
自閉症療育のハンドブックなどには、声の大きさを段階として認知させて、時と場合によって使い分けるとよい。などと書かれているが、ボリュームの違いはわかっていて、それでも大きくしてしまう時にどうしたらいいのかについては書かれていない(書いてあるものを見たことがない)
「病院では「1の声(ひそひそ)」で話しましょう」と言っても、最初はできていてもだんだん大きくなるのだ。その都度「ひそひそしましょう」「はい」トーンダウン、また大きくなる。というのを繰り返す。
その場所での経験が少ないからとか、そういうものではないと思う。他者の存在が頭にないからそうなるんだろう。どこにいても「自分の言動が他者に与える影響」というのが考えられないから「自分のペース」だけで行動してしまうのだ。
他者の存在や、その人がどう思うかなどを教えるのは至難の技だ。その人にとって「嫌な言動」は、彼には嫌な言動ではないのだから。
「他人の立場になって」とか「自分がされて嫌なことは人にもしない」などというのが通用したのは暴力に関してだけだ。
さすがに、叩かれたり噛まれたり、親愛の表現で誰彼構わず抱きつくという行為は嫌だったようで、これは「自分がされて嫌なことは人にもしない」で十分に伝わったし、叩かれたからといって報復もしない。そばに来たらそっと離れる。そういう子になった。
延々と続くだじゃれや、替え歌など、彼はとても面白いと思っていて、それを伝えたい。同じことの繰り返しになるので、どうしても聞く方はお座なりになる。そのうち、自分で言っただじゃれに自分でウケまくり、近づいてきて「どうだ面白いだろう」と言わんばかりのどや顔で、大きな声で繰り返すのだ。
これを主治医に相談すると苦笑していた。そして「お母さんは大きな声は嫌です」って言っても良いですよ。とお墨付きをもらった。
そりゃそうだ。私は母親だ。母親が困ってしまうくらいの大きな声や音は、他人さんには耐え難い。私が嫌だと思っていることを伝えれば、彼も自分以外の人が面白いと思わないことに気づくかもしれない。
それ以来、大きな音や声は少し減った。それでもウケてしまうと声も大きくなるし、何でウケているのかを伝えようとテレビやYouTubeの音量も大きくなる。
ほんと、適正音量のコントロールって難しい。
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