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妄想のカケラたち

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書く習慣アプリのお題 シロクマ文芸部のお題 ....などから妄想したもの
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#ショートショート

満月ベランダの美しいケモノ【妄想のカケラ】ショートショート

満月ベランダの美しいケモノ【妄想のカケラ】ショートショート

【満月ベランダの美しいケモノ】

いい夜ですね。
アパートのベランダ
仕切り板の向こうから声がした

こんな夜更けに誰だろう?

眠れない夜のベランダから少し身を乗り出して隣を覗くと、ふさふさとした銀色の毛の、狼の人、でも人懐っこそうな、そんな獣人がタバコをふかしている

どうやら隣の部屋の住人のようだ

よく手入れしているのだろうか?
満月に照らされた部分が特に白く輝いて美しくて惚れ惚れする

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星へ、お花見。(ショートショート)

星へ、お花見。(ショートショート)

星へ、お花見。

銀河鉄道に乗って火星まで
早咲きの桜を見にゆく

最近ICOCAが使えるようになったって聞いたから使おうとしたら
チケット売り場のおっちゃんが

あん?
ICOCAなの?

…って
めっちゃめんどくさそうに眉間にシワ寄せ寄せでにらむからさっ

はぁっ?
なんかあかんことあんの?
◼️%&$%◎△()0=!!!

…って
ヘンテコになるから普段はほとんど使わない関西弁で
窓口に貼っ

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夜を待つ理由【妄想のカケラ】

夜を待つ理由【妄想のカケラ】

夜を待つ理由

雨が降りそうだけど夜が来るのを待っている
ほら、ずっと向こうにネオンの灯りが見えてきたよ
君の行った遠い街の明るい灯り
降り出した雨にけぶりながらも輝いている
おやすみを言うタイミングを逃しそうなくらい
明るく輝いている

君はどうしているのだろう?…

気になるけれど、
灯りに背を向けてこうもり傘をさす
確かめに行く勇気はないから暗い
僕の街へ戻ってこうもりになろうと思う__

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脱力ラッキー🍀【3行日記】

脱力ラッキー🍀【3行日記】

脱力ラッキー🍀

今日こそ伝えなければ...
と、拳を力強く握りしめていた昼下がり
ところが、春になりかけの陽ざしが優しすぎて何だかもうどうでもよくなってきて、このままここで野良猫を愛でながら春を待とうと思い至る。ベンチに座り直し、握りしめた拳をひらいたら、足元のクローバーの葉が四枚なことにやっと気がつけた。

お題: 伝えたい

書く習慣アプリのお題「伝えたい」から #3行日記

ミッドナイト・ゼリー【ショートショート】

ミッドナイト・ゼリー【ショートショート】

ミッドナイト・ゼリー

形にならずに散らばった言葉を型に入れ、ゼリー液を流して冷蔵庫へ。

夜がいっそう深くなったころ、再び冷蔵庫のドアを開けると、眩く白い光を浴びせられてしまった。

これで今夜も私に「夜」は来ないだろうと確信しながら冷蔵庫から出した型から慎重に中身を外し、皿の上に無事に着地させると、ぷるんっ♪と波打つ深夜のゼリー。

この間、月面に着陸した探査機にもこんな緊張があったのだろうと

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月へ昇るエレベーターのペンギン【ショートショート】

月へ昇るエレベーターのペンギン【ショートショート】

月へ昇るエレベーターのペンギン

君に会いたくて、月エレベーターのチケット売り場前。

ICOCAは使えないけど、Suicaならオッケーって言われたよ。君がトーキョーにいた頃、一応、作っておいてよかった...。

ホッとしながら出発ロビーの椅子に腰掛けて空を見上げる。

今夜は月に木星が寄り添っているよ
君の見る宇宙はどんな様子なんだろう?

初めての月と久しぶりの君を想い、大人気なく高ぶる気持ち

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踊る彼女【ショートショート】

踊る彼女【ショートショート】

踊る彼女

カラカラと乾いた風に舞う木の葉
赤い靴を履いたパジャマ姿の彼女も優雅に無心に舞っている。

TikTokに載せたらBuZZるかも?
悲嘆に暮れすぎてとうとう打算が生まれ始めたよ(苦笑

彼女の呪いを解くのを諦めた訳じゃないけれど、こうやって見守り続けるのもアリなんじゃないかなって思うんだ。

お題「木枯らし」

書く習慣アプリのお題「木枯らし」から #ショートショート

眠らない筋肉フェチ【ショートショート】

眠らない筋肉フェチ【ショートショート】

【眠らない筋肉フェチ】

三日月にぶら下がり懸垂する男の美しい広背筋を愛でながら更けてゆく夜に身を置いている。
ほとばしる汗が、キラキラと、どんどん星屑に変わるのを、飽きずに眺めながら、来ないかもしれない睡魔を今夜も待っている。

お題「三日月」

書く習慣アプリのお題「三日月」から #ショートショート

夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者

夢から覚めた午前3時
よく覚えていないが、
日向の匂いのする温かくて、ふわふわした心地の良い夢を見ていたような気がする。

現実は真っ暗で冷たく真冬の夜明けはまだ遠い。

でも、再び夢の中に戻るのはためらわれ、寝床からはいだし明かりをつけた。

「ちっ!」

舌打ちした何かの影が部屋の隅から消えたように思えたけれど、それは、気のせいかもしれないし、心地良い夢に乗じて私を連れてゆこ

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りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

今回はこちらのスピンオフ作品になります↓

りんご箱から鈍色の空を見上げて僕はみゃぁ~と鳴き、まだ柔らかい爪でカリカリと箱底をひっかきました。
箱が深くて小さな僕は外に出られないのです。

何度かこちらを覗く人の顔がちらりと見えたけど僕と目が合うと困った顔をして去っていきました。

ぽつりぽつりと冷たいものが顔を濡らし始めたころ、ある人が僕を拾いあげました。

「寒かったね、大丈夫かい」

彼はし

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最強オカンと繊細な僕【シロクマ文芸部】

最強オカンと繊細な僕【シロクマ文芸部】

月めくり用の指サックをなくしてしまい
めくれない9月をどうしたものかとセンチメンタルの沼に浸っていると

なんやー
まぁだ9月にしとるんかー?

ドヤドヤッと部屋に押し入ってきたオカンは、ペロッと指先をひと舐めすると何のためらいもなく月をひとめくり

ビリッと一気に9月を切り取った

そして、

はよおいで
ごはんにしよ

と言うと
めくった9月をくしゃくしゃに丸め、どすどすと音を立てながら慌ただ

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夫婦円満の秘密【超ショート】

夫婦円満の秘密【超ショート】

#127 夫婦円満の秘密

いちじく畑を潰してできたコインパーキングの灯りが我が家を照らしている。
夫が「防犯になっていいね」と言うので「そうね」と口を合わせたけれど、本当は、月明かりよりも白く、強く、煌々と夜を照らすこの灯りの遠慮なさが嫌い。でも、そんなことを言うとめんどくさがられそうなので、この灯りのように白々しい笑顔の仮面をかぶって「そうね」と微笑んだ。

書く習慣アプリのお題「窓から見える

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夜の灯りを喰らうひと【超ショート】

夜の灯りを喰らうひと【超ショート】

#125 夜の灯りを喰らうひと

夜の灯りが地上に広がる
このひとつひとつの灯りに
人生があり幸せがある

今夜も地上に広がる灯りに手を伸ばすと
灯りは一粒のあめ玉となり
彼はそれを口に運んだ

誰かの幸せが胃袋に広がる

叶うなら、喰らう側ではなく
これら一つの
ただの灯りになりたかった...

そんな憂鬱を抱きながら
彼は灯りのあめ玉をもう一粒口に入れた

あぁ 胸が焼ける
でも 今夜はもう少

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いつか星屑にしてあげましょう。【ショートショート】

いつか星屑にしてあげましょう。【ショートショート】

#123 いつか星屑にしてあげましょう。

きらめく星々をシロップにして
綿菓子のような氷の山を壊さないように
そっとかけました

この夏、最後のみぞれ氷です

ところが、
無遠慮にあなたが追い掛けしたイチゴシロップが、きらめきの綿菓子氷の山を赤くえぐります

それを乱暴に一気に平らげて
赤く染まった唇から
「やっぱり抹茶が好きだな」
と、屈託なく放たれた言葉が棘となり
チクリと私を刺して
小さな

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