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Essay

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母親の私が見ているもの。感じていること。
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私達のキラキラを携えて

私達のキラキラを携えて

東京に大雪が降ったあの日、彼女は大はしゃぎしていた。

大学のゼミの卒業制作展の、展示準備をする日だった。

彼女と私は、その準備日に一緒に行こうと言って、前日の夜は彼女のアパートにお泊りして、ずーっとおしゃべりしていた。

テレビの下に、彼女が好きだという雑誌のバックナンバーが積んであって、それらを見ながら、この服が好き、このモデルさん可愛い…そんなことを延々とおしゃべり。

以前の彼女のアパー

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我が家のパイオニア

我が家のパイオニア

今年は下の娘が受験生。

夏休みも、オープンスクールもろもろ、ハードだった。

でも上の息子の時に比べたら、労力は3分の1くらいに感じる。

実際、無駄な動きはしていないと思うし。

今思えば、上の子の受験は、ガチガチに力が入っていたな。

同じようにお腹を痛めて産んだ子でも、何でも初体験の第一子には、自然と力が入る。

慣れてくる第二子以降は、力が抜ける。

というか、下の子を育てる段になって

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シマウマ骨折事件

シマウマ骨折事件

子ども達が小さい頃、折り紙で何かを折ってと頼まれるのが苦痛だった。

もちろん、「鶴」や「手裏剣」くらいなら折れる。子どもの頃に散々折ったから、手が覚えているのだ。

しかし、最近の折り紙は、とても立体的だったり、パーツを組み合わせて大きな作品にしたりと、もはやアート作品である。私が子どもの頃に折ってきた「鶴」や「手裏剣」のレベルより遥かに難しいので、「折り方の本」を読んでも、展開図と矢印の連続で

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ママンつれづれ

ママンつれづれ

息子が18歳になった。
成人式こそまだだけれど、一応、選挙権を持ったり車の免許が取れたり、「大人」な面を持つ年齢になったということだ。

娘は16才。
え?
下の子も、もう16なの?
このぶんだと、すぐに18、ハタチと大人になっていくのだろう。

※※※

子ども達が大きくなってくると、季節のイベントごとを家族で楽しむことに関しては、年々あっさりとしてくる。

子ども達の方から「それどころじゃない

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気づかれないけど応援してる

気づかれないけど応援してる

少し涼しくなり始めた、ある日曜日。
いつものようにダイニングテーブルで書き物をしていると、外から子どもの泣き声がした。
泣き声は、小さい子によくある「うわーん」という感じではなくて、「おんおんと泣いている」とでも表現するのがピッタリくる、少し大きな子のそれだった。小学生くらいの女の子のようだ。

カーテンを少しだけ開けて外をの様子をうかがうと、ヘルメットをかぶって、倒れた自転車を起こそうとしている

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「約束」はゆるく

「約束」はゆるく

歯医者さんに行くと、次回の予約のことを「次回のお約束」と言われる。

私が子どもの頃に通った歯医者さんでは「予約」は「予約」だった気がするのだけど、いつのまに「予約」は「お約束」と言われるようになったのだろう。

でも、ここ数年で、私も「お約束」という言葉にだいぶ慣れて、あまり気にしなくなっていた。

ところが、この間、美容院でも「次回のお約束」をいつにするか聞かれた。今までそんなことはなかったか

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歯と歯のソーシャルディスタンス

歯と歯のソーシャルディスタンス

「会いたい人にこそ会えない」という状況が続いている。

その人が自分にとって大切であればあるほど、会いたければ会いたいほど、離れていた方が、相手を守ることになる。

遠方の友人にも、高齢の親にも、とにかく、物理的にに距離を取れ、と。

なんだそれは。

心の準備が整わないままに「新しい時代」とやらが始まってしまった。

        ※※※※※※※

歯医者さんには、定期的に通っている。

舌の

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安否確認の回覧板

安否確認の回覧板

今日、回覧板が回ってきた。

この地区では、回覧板に目を通したら、「読みました」の印として、名簿の自分の家の欄にその日の日付を書いて、次へ回すことになっている。

ところが、今日の回覧板には、日付を書く名簿しか挟まっていなかった。

※※※

ん?

何も文書が入っていないのに、ただ日付だけ書いて回すって…何かな?

こんな世の中だから、安否確認なの?

※※※

「うちは、みんな、元気です」

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「この世界もまんざらじゃない」と思って生きていたい

「この世界もまんざらじゃない」と思って生きていたい

毎日毎日、テレビをつけてもネットを見ても、

「今日は何人」

「どこで何人」

とやっている。

ザワザワと不安になっては、テレビを消したり、スマホを放り投げたりする。

何かの本で読んだけれど、この世界は、修行のための場なのだそうだ。修行の必要がないほどに魂が成長した人は、そもそも地球に生まれて来ない。
…なるほど。

試練が続くのは、仕方がないのかもしれない。
なんたって修行だからね。

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若者の音楽を聴く私

若者の音楽を聴く私

高校生の息子が好きなバンドがある。
ロックバンドらしい。

電車通学の時間を、英語のリスニングを聴く時間に充てているはずだったけれど、最近は、英語なんて聴かずに、そのバンドを聴いているに違いない。

日に日にそのバンドの曲に詳しくなっているし、お風呂から聞こえてくる鼻歌にも、バリエーションが増えてきているもの。

私も昔はいろいろ聴いていたけれど、最近は、運転中しか聴かない。
しかも、歌詞が耳に入

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ラーメン屋で祈る

ラーメン屋で祈る

息子が部活の大会を終えた。

ガチガチに緊張してピリピリし、親も遠ざけ、迎えた本番。

本番当日の朝になって応援を拒否された夫と私は、手持無沙汰で、ラーメンなど食べに行った。

休みまで取って、応援に行く気満々だった夫は、ラーメン屋でヤケ食い。

私は、息子がうまくやれているか気になって、あまり食べられず…。

子どもが本気の戦いに挑むとき、親の応援を拒否することがある。

親とすれば、悲しい。

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サンタ卒業の時

サンタ卒業の時

子ども達のクリスマスプレゼントを手配し終えて、今年もサンタ業務終了と、ホッと一息ついている。

私が子ども達に欲しいものを聞いて、予算と折り合えば、それを用意する…。
クリスマスプレゼントが、サンタではなく親からというこの形になったのはいつだったか…。

子ども達がまだ小さくて、クリスマスプレゼントはサンタさんが持ってくると信じていた頃、息子はサンタさんに会うまで寝ないと言って、舟を漕ぎ漕ぎ待って

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息子の男気

息子の男気

ゴールデンウィークも開けて、中総体・高総体の地区大会に向けて、子どもたちの部活が活発になってくる時期である。

息子は中学の時、ある運動部に所属していて、中3の時は部長だった。

本人なりに、学校の部活の練習の他にも外部コーチに付いたりして、結構本気でやっていた。

でも、彼は、利き手の手首に先天性疾患があり、酷使すると、腫れたり痛んだりする。

中3の、最後の地区大会前、頑張りすぎたのか、これま

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オニヤンマ事件

オニヤンマ事件

子ども達が大きくなった今では、夏の田舎への帰省は、ままならなくなった。昨年も今年も受験生を抱え、そして世の中の大変な状況も重なってしまって、次に私の実家へ帰れるのはいつになるのか、見通しが立たない。

でも、幼い息子が初めてオニヤンマと格闘したあの夏のことは、毎年思い出す。

※※※

私の実家は田舎にあるので、夏は、カブトムシもいるし、大きくて怖いくらいのオニヤンマも、ブンブン飛んでいる。

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