【BL二次小説】 炎の金メダル②
「ラジコンラジコン!」
「ドローンだ」
翌週の日曜。
荒北は庭で数機のドローンをホバリングさせている。
健がはしゃいで寄って来た。
ジャンプして捕まえようとしているが、届かない。
「ねぇ、なんでプロペラも翼も無いのに宙に浮かんでるの?」
「国家機密だ」
「へー!コッカキミツかー!かっけー!」
なんとなく言葉の響きだけで大興奮している健。
新開が皿に盛ったビスケットをガーデンテーブルの上に置く。
すぐに華が飛んで来て、手を伸ばした。
「慌てなくてもまだたくさんあるから。ちゃんと座ってお食べ」
新開が笑いながら華に言う。
「ハカセとジョシュは何屋さんなの?」
ちょこんとガーデンチェアに座り、口をモグモグさせながら華が尋ねる。
「博士はね、特許をたくさん取得してるんだ。その収入で次の研究をして、また特許を取る」
向かい側のチェアに腰掛けながら、新開が説明する。
「トッキョってなあに?」
「オレ知ってる!」
健が聞き付けて走って来た。
「東京特許キョキャキョキュだよね!」
自信満々に答える健。
「キョキャキョキュってなあに?」
疑問点が増える華。
「余計難解にしてンじゃねーよ健!」
荒北が怒鳴る。
健は再び荒北のドローンへ駆けて行った。
「私ね、ジョシュ」
「なんだい?」
華は口の周りにビスケットの欠片を付けたまま、テーブルに頬杖をついている新開の顔を覗き込んで言った。
「大きくなったらジョシュのお嫁さんになるの」
頬を赤らめウフフと微笑みかける。
「華ちゃんにプロポーズされたよ今」
すぐに荒北に伝える新開。
「へェ」
それを聞いて荒北がテーブルへ寄って来た。
「受けンのか?ン?」
テーブルに両手をつき、新開と華の両方の顔を覗き込む荒北。
「華ちゃん……」
新開は華に優しく言った。
「オレね、好きな人がいるんだ。だから、華ちゃんをお嫁さんには出来ないんだよ。ごめんな」
「ダメなの?」
華はしょんぼりする。
「罪なヤツ」
荒北はフン、と鼻を鳴らした。
~研究室~
「靖友。もう遅いよ。今夜はここまでにして寝よう」
ドライバーを持つ荒北の手をそっと握る新開。
「……もう、こんな時間か……」
作業を止め、時計を見てフーッと息を吐く荒北。
両腕を上げて伸びをする。
「……」
そのまま天井を見上げ、考え事を始めた。
新開はその様子を見て声を掛ける。
「ダメだよ。何も考えずに寝よう、ほら」
荒北の肩に手を置き、椅子から立ち上がらせようとする。
「……オレぁ……」
荒北が呟く。
「オレぁ……バカだ」
涙が頬をつたいポタッと落ちる。
「靖友……」
「バカだ。バカだ。バカだ」
「靖友!」
頭を抱えて泣き出す荒北を、抱き締める新開。
「靖友はバカなんかじゃないよ。再生可能エネルギーだって超伝導量子干渉計だって、靖友の発明は世の中の役に立ってるんだから」
「そんなモン、どーだってイイ。オレには関係ねェ」
顔を両手で覆う荒北。
「靖友の悲しみは全部オレが受け止めてやる。オレはどんな時でもおめさんの傍にいるよ」
「新開……」
荒北は新開に抱き付いて胸に顔を埋めた。
「新開ィ」
「靖友、愛してる。おめさんにはオレがずっとついてるからな」
「……ウン」
子供をあやすように、新開は荒北の背中をゆっくりポン……ポン……と優しく叩く。
そうしてもらうと、だんだん荒北の心は安らいでいくのだった。
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