胤田一成

初めまして、胤田一成(タネダカズナリ)と申します。小説投稿サイト、【小説家になろう】と…

胤田一成

初めまして、胤田一成(タネダカズナリ)と申します。小説投稿サイト、【小説家になろう】と【カクヨム】を中心に短編掌編小説を書いています。主に恐怖小説や幻想小説を書いていますが、力の及ぶ限り、様々なジャンルの小説を書いていきたいと考えています。どうぞ、今後とも宜しくお願い致します。

マガジン

  • 『毒を食らわば 〜妄言随想〜』【まとめ】

    『毒を食らわば』という題名のエッセイ集のまとめとなります。不定期連載となりますが、多くの方々に笑顔を届ける内容になるように努めます。よろしかったら 、御一度下さいませ。

  • 奇妙な話【まとめ】

    身近で起こった奇妙な体験談を書き綴って記事にしようと考えています。週に二度ほどの頻度で更新できると良いかなぁ……と漠然と考えています。ホラー小説好きな方は是非ともお立ち寄りくださいませ。

記事一覧

『毒を食らわば ~妄言随想~』:恋の鞘当て

「親譲の無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」。これは夏目漱石の『坊っちゃん』からの引用であるが、私自身も「坊っちゃん」よろしく、随分と無茶も重ねてきた。熱しや…

胤田一成
10日前
3

『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:大人になれよ

 久しぶりに小学校のアルバムを開いてみた。懐かしい顔ぶれが満面の笑みを浮かべて未来の自分へ問い掛けている。「将来の夢は叶えられましたか?」と。不安や葛藤を微塵も…

胤田一成
2週間前
3

『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:序

 不幸とは突如として訪れるものではない。往々にして、何かしらの先触れというか、兆候のようなものが確かにあって、これからやって来る嵐を事前に告げている場合が殆どな…

胤田一成
2週間前
4

奇妙な話:おさげ髪の幽霊

 これは五年くらい以前のお話になるが、私の妹は悪い男に騙されて茨城県に身を隠すように暮らしていたことがある。僅かに残された足取りを辿り、漸く行方を探り出したのだ…

胤田一成
2週間前
2

奇妙な話:落下する幽霊

 これは月並みなお話かもしれないが、自殺した人の霊魂は土地に縛られるという。また、その幽霊は延々と自殺を繰り返すことになるようだ。俄かには信じがたいが、私の親戚…

胤田一成
4か月前
9

奇妙な話:宝船

 これはちょっとした笑い話になるのだろう。父方の家系に奇妙な気質を持った人々が多いことは先に述べた通りなのだが、普段は大方のことには寛容に受け止めるはずなのに、…

胤田一成
5か月前
3

奇妙な話:親子

「あの光景が心霊現象だったら良い」と思うようなことが屡々ある。直視するにはあまりに痛ましい光景というか、胸を締め付けられるような情景というか――そういうことを目…

胤田一成
9か月前
8

奇妙な話:古井戸

 私の母校である高等学校は90年以上の沿革を誇る学校だ。それほどの歴史があるのだから、奇妙な噂の一つや二つは当然のようにある。いわゆる、「学校の怪談」や「学校の…

胤田一成
9か月前
15

奇妙な話:学校の怪談に関する考察

 これも中学校時代の小話である。私の母校はどれも歴史が古く、中学校は創立七十年、高等学校に至っては創立九十年以上を数えるほどである。それほど由緒ある学校であるか…

胤田一成
9か月前
7

奇妙な話:風呂場

「どうにも困ったことになっちゃたのよ」従妹のRちゃんが麦酒をぐびぐびと飲みながら言った。年始になると親族一同が祖母の家に集まることになっているのだが、このお話も…

胤田一成
9か月前
11

奇妙な話:腕

 これは友人のS君から聞いたお話です。私達が中学生だったころの話題ですから、二十年近く以前の出来事になるのでしょう――懐かしいことこの上ありません。こういった奇…

胤田一成
9か月前
6

奇妙な話:エレベーターの幽霊

 これは叔父に聞かされた話である。新年会の何気ない歓談の最中でも、我が家ではこの手の話がちょいちょい語られる。怖がる親戚は殆どない。むしろ、酒の肴となって場を盛…

胤田一成
10か月前
7

奇妙な話:昆虫採集の記憶

 私の父親は経済不況の煽りを食らうまで、町の小さな居酒屋を経営していた。父は腕の良い料理人だったので、バブル経済が弾けるまでは相応の収入を得ていたらしい。とはい…

胤田一成
10か月前
7

奇妙な話:金縛り

 数年前から金縛りにあうことが屡々ある。疲労が私の脳みそを侵しているのだろうとは思うが、これもまた「奇妙な話」には違いない。レム睡眠とノンレム睡眠の周期に関わっ…

胤田一成
10か月前
4

奇妙な話:カラオケボックス

 大学進学をきっかけにアルバイトを始めた。近所のスーパーマーケットでレジ事務を担当しているのだが、地域密着型を謳っている店舗ということもあり、知人友人とカウンタ…

胤田一成
10か月前
8

奇妙な話:壁男

 私が暮らしている町はお世辞にも治安が良い地域とは言えない。警察官と不良少年が取っ組み合っている晩もあるし、精神を病んだ老人が往来で卑猥な言葉を突如として叫び出…

胤田一成
10か月前
6
『毒を食らわば  ~妄言随想~』:恋の鞘当て

『毒を食らわば ~妄言随想~』:恋の鞘当て

「親譲の無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」。これは夏目漱石の『坊っちゃん』からの引用であるが、私自身も「坊っちゃん」よろしく、随分と無茶も重ねてきた。熱しやすく冷めやすい――というのとは少し違う。敢えて言うなら、それは「義侠心」に近いのかもしれない。この時代では滅多に耳にすることのない、「義理」や「人情」といったしがらみに雁字搦めにされており、不正が行われるようなら飛んで忠言、諫言の類を述べな

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『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:大人になれよ

『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:大人になれよ

 久しぶりに小学校のアルバムを開いてみた。懐かしい顔ぶれが満面の笑みを浮かべて未来の自分へ問い掛けている。「将来の夢は叶えられましたか?」と。不安や葛藤を微塵も感じさせない笑顔である。が、その屈託のなさが却ってこちらの居心地を悪くさせる。毒気が抜かれるどころか腹の底に溜まった泥水を強烈に意識させるものがある。

 さて、二十年以前に僕らが抱いていた希望は何だろう。《将来の夢》と題されたページを開い

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『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:序

『毒を食らわば 〜妄言随想〜』:序

 不幸とは突如として訪れるものではない。往々にして、何かしらの先触れというか、兆候のようなものが確かにあって、これからやって来る嵐を事前に告げている場合が殆どなのである。が、人間とは自身が思っているほどには敏くない生き物である。だから、再三にわたって到来を告げているにも係わらず、災禍に見舞われると寝耳に大水の音を聞いたように慌てふためき、お門違いにも神様や仏様に対して愚痴を垂らさずにはいられないの

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奇妙な話:おさげ髪の幽霊

奇妙な話:おさげ髪の幽霊

 これは五年くらい以前のお話になるが、私の妹は悪い男に騙されて茨城県に身を隠すように暮らしていたことがある。僅かに残された足取りを辿り、漸く行方を探り出したのだが――まあ、詳しいお話は割愛させて頂くとして、これもまた奇妙な出来事があった……らしい。

「それにしても、ひどい交際経験だった」と妹は述懐しているが、意外にも恋人の家族に対しては今でも好意的な印象を抱いているらしい。というのも、恋人の母親

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奇妙な話:落下する幽霊

奇妙な話:落下する幽霊

 これは月並みなお話かもしれないが、自殺した人の霊魂は土地に縛られるという。また、その幽霊は延々と自殺を繰り返すことになるようだ。俄かには信じがたいが、私の親戚の多くはこの説を支持していたりする。というのも、彼らのほとんどが「落下を繰り返す幽霊」を見ているかららしい。

 祖母が暮らしている団地の近くに有名な心霊スポットがある。一見すると変哲のないマンションなのだが、「あそこには行かない方がいい」

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奇妙な話:宝船

奇妙な話:宝船

 これはちょっとした笑い話になるのだろう。父方の家系に奇妙な気質を持った人々が多いことは先に述べた通りなのだが、普段は大方のことには寛容に受け止めるはずなのに、とある事実や事象に関しては頑なに首肯しようとしない節がある。

 それは「未確認飛行物体(Unidentified-Flying-Object)」、通称・UFOのこととなると途端に狭量になってしまうのである。「神仏を信仰しているから、そんな

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奇妙な話:親子

奇妙な話:親子

「あの光景が心霊現象だったら良い」と思うようなことが屡々ある。直視するにはあまりに痛ましい光景というか、胸を締め付けられるような情景というか――そういうことを目の当たりにしてしまうことが屡々ある。この挿話もそういった類のもの悲しい記憶を辿ったものである。

 これは私が中学生だったころのお話である。私が住んでいたマンションは学校の真正面に建っており、ちょっと通りに顔を出せばタバコを吸いに休憩してい

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奇妙な話:古井戸

奇妙な話:古井戸

 私の母校である高等学校は90年以上の沿革を誇る学校だ。それほどの歴史があるのだから、奇妙な噂の一つや二つは当然のようにある。いわゆる、「学校の怪談」や「学校の七不思議」といったものである。全てを把握していたわけではないが、それでもいくつかの話は聞き及んでいたし、興味本位ながら噂の真偽を確かめようとしたことがある。

「この学校には古井戸があって、それには良からぬ由来があるらしい」

 とある社会

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奇妙な話:学校の怪談に関する考察

奇妙な話:学校の怪談に関する考察

 これも中学校時代の小話である。私の母校はどれも歴史が古く、中学校は創立七十年、高等学校に至っては創立九十年以上を数えるほどである。それほど由緒ある学校であるから、いわゆる、「学校の怪談」や「学校の七不思議」なるものが当然ある。真偽のほどは確かでないが、いずれの学校にもタブーやジンクスのようなものが存在したし、時には暗黙の了解として教師陣の方も「校則」を定めることもあった。

「午後五時以降はS棟

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奇妙な話:風呂場

奇妙な話:風呂場

「どうにも困ったことになっちゃたのよ」従妹のRちゃんが麦酒をぐびぐびと飲みながら言った。年始になると親族一同が祖母の家に集まることになっているのだが、このお話もそのような折に聞いたものである。これから新しい一年が始まるというのに、困った話を打ち明けようとするRちゃんに辟易しながらも、一応は聞いておいてやろうと思って仕方がなく傾聴することにした。「どうやら、質の悪い幽霊を新居に連れてきちゃったみたい

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奇妙な話:腕

奇妙な話:腕

 これは友人のS君から聞いたお話です。私達が中学生だったころの話題ですから、二十年近く以前の出来事になるのでしょう――懐かしいことこの上ありません。こういった奇妙な話は時間が経てば、「なんてないことだった」と解釈されるものですが、今になっても皆目見当もつかない不可思議な体験談の一つだったりします。

 S君の家はとある小学校の裏山の頂上にあり、中々の景観を誇る場所に建っているのですが、好んで近寄ろ

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奇妙な話:エレベーターの幽霊

奇妙な話:エレベーターの幽霊

 これは叔父に聞かされた話である。新年会の何気ない歓談の最中でも、我が家ではこの手の話がちょいちょい語られる。怖がる親戚は殆どない。むしろ、酒の肴となって場を盛り上げる役割を果たす方が多いから理解に苦しむばかりである。

 叔父の職業は配管工である。他にも色々と建築関係の仕事を手掛けているらしいが詳しくは知らない。とにかく、様々な建築現場の赴き、水道関係の仕事をしているようだ。建て増しした建築物の

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奇妙な話:昆虫採集の記憶

奇妙な話:昆虫採集の記憶

 私の父親は経済不況の煽りを食らうまで、町の小さな居酒屋を経営していた。父は腕の良い料理人だったので、バブル経済が弾けるまでは相応の収入を得ていたらしい。とはいえ、飲食店の経営はそれなりに大変だったようである。明け方近くまで帰ってこないことも多かった。

 それでも、父は父なりに考えがあったのだろう。ある晩、ふらりと帰ってきて、寝ている私の肩をゆすぶり言ったことがある。「カブトムシを取りに行こう」

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奇妙な話:金縛り

奇妙な話:金縛り

 数年前から金縛りにあうことが屡々ある。疲労が私の脳みそを侵しているのだろうとは思うが、これもまた「奇妙な話」には違いない。レム睡眠とノンレム睡眠の周期に関わっているのかもしれないが、何とも言えない不吉な感じがするのも確かである。

 人間誰しもが一度は経験するだろう現象だが、私の場合、金縛りに遭遇する際にいくつかの前兆が必ず現れる。
 まずは、玄関の方からチャイムを鳴らすような音が聞こえる。当然

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奇妙な話:カラオケボックス

奇妙な話:カラオケボックス

 大学進学をきっかけにアルバイトを始めた。近所のスーパーマーケットでレジ事務を担当しているのだが、地域密着型を謳っている店舗ということもあり、知人友人とカウンター越しに鉢合わせすることが屡々ある。

 無論、仕事中なので私語は慎むようにしている。だが、「やあ、お久しぶり」ぐらいの挨拶はどうしても避けられない。お客様に気持ちよくお買い物をしていただくためにも、多少のリップサービスは許されている。あま

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奇妙な話:壁男

奇妙な話:壁男

 私が暮らしている町はお世辞にも治安が良い地域とは言えない。警察官と不良少年が取っ組み合っている晩もあるし、精神を病んだ老人が往来で卑猥な言葉を突如として叫び出して驚かせる日もある。確かに彼らは迷惑な存在ではある。だが、自ら危険に踏み込もうとしなければ、実害を被ることは少ない。彼らのテリトリーを侵さない限り、牙を剥かれることはない。

 彼らはある種のルールに則って生きているだけなのだ。そして、そ

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