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Letter to ME

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自分へ送る日々の備忘録(その2)
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あなたのそばで

まだこの世に生まれて3ヶ月も経たない人間の泣き声で起こされる。抱き上げると力強くのけぞって何かを伝えるように泣きが激しくなった。寝ぼけた頭と体では取り落としそうになるが、必死に耐える。手元の小さな灯りだけをつけて自分の乳房を含ませた。必死という言葉しか当てはまらないほど喉を鳴らして母乳を飲み始めた横顔を確認して、どっと疲れが体を巡る。慣れない姿勢の連続で首から背中は重く痛い。エアコンと、赤子がただ

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明日の最高気温は

本当は1年の振り返りをしてみたかったのだけど、特に思い出せることも無く、毎年こんな調子なので自分の中の書くことへの興味がどんどん失われていく。
好きなことについても、努力をしなければならないなんてあほらしすぎる。そう思うと、私はもう書くことなんて好きじゃなくなってしまったのかな、と途方に暮れる気持ちにもなる。好きでいることを努力で昇華させなきゃいけないなんて。
もっと切実に、書くことを愛している人

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20221008あまねく夜に

急に冷えるようになって、毛布を引っ張り出してきた。体調が優れず、心も引っ張られるようで、木曜日も金曜日も仕事を休んだ。期せずして五連休になった私を、同僚は責めないだろう。優しく、干渉のない職場だ。そういうところに救われたり、傷つけられたりする。私が、ワガママだから。

寒い夜は、つまり、感傷に浸りやすい、ということだ。腹まで毛布をかけ、上半身は凛とした空気に投げ出していると、ざわざわと甘い痛みが胸

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Battle for your life―LADY GAGA CHROMATICA BALL TOKYO 9.3.2022

Battle for your life―LADY GAGA CHROMATICA BALL TOKYO 9.3.2022

今でも、夢を見ていたのではないか、と思っている。

2022年9月3日、埼玉の西武ベルーナドームでレディー・ガガの来日公演に参加してきた。参戦、という方が正しいのか、そもそも来日公演なのか、来日コンサートなのか、どういう言い方もしっくりこないが、とにかく、8年ぶりの来日と聞き、思い切ってチケットの抽選に申し込んだのは4月だった。当選したときは、本当に9月が来るのか信じられなかった。そして本当にガガ

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いつか思い出になる

もうすぐ8月が終わってしまう。何をするでもなく、暑かったな、という印象だけで今年の夏も終わると思う。
職場のクーラーが壊れている。設備課に問い合わせると、壊れてません、という。では設定温度を下げてくれないか、というと、28度と決まっています、という。プリンターもパソコンも、その他電子機器も、人間以上に熱を吐き出していて、私たちの事務所はいつも30度をこえていると思う。あきれてため息をつくと、後輩が

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怒れる人

先日、あんまりにも我慢ができなくて、課長に嚙みついた。物理的にではなく、仕事的な意味でだ。そうしたら課長が目をひん剥いて私に怒鳴り散らしてきて、すぐに後悔した。後悔したけれど、心臓の動機が激しく、肋骨がガンガンと痛み、口を閉じることができないほどだったので、それに任せてまた嚙みついた。ふだんから、あまり褒められたものではない仕事ぶりの係長が、私の隣であわあわしながら、フォローのようなよくわからない

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祈りを託していいですか

こんばんは。ご無沙汰してます。お元気ですか。
いつも思い出したようにあなたに書いてばかりでごめんなさい。でも、こういうこと、あなたにしか言えないんですよね。なんて、本当、怒らないで、今日もまた、ゆっくり相槌を打ってくれるだけでいいんです。聞いてくれますか?

もう、あっという間に年末ですね。そろそろ年賀状を書かないといけません。どのくらいの人に書きますか?10枚?20枚?――年賀状って人宛てだから

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20210405 朗らかな天気に飛ばされて

本当は、朝早くに職場に行こうとしたけれど起きられなくて、今朝いつもの時間に家を出た。
新年度はぬるっと始まり、バタバタ過ぎていく。結局、年度が切り替わるタイミングでしか発生しない年1回の仕事に毎回翻弄されている。分かっているはずなのにいつも翻弄されている。愚かだなと思いつつ、そういうことをもう10年も続けているのだった。

でも、午後は休みを取って歯医者に行った。予防歯科なのでキレイに磨いてくれる

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20210329 桜よりも快晴

年度末になると慌ただしく人事異動が発表になり、数年前に地方の支部に勤めていた後輩が本社に戻ることになったのを知ったのは先週だった。
仕事の愚痴を良くこぼしながら日付が変わる頃まで一緒に残業をした仲だ。お互いその頃は独身で、自分たちが本当にダメになるまで仕事をしていた。仕事に洗脳されていた時期でもある。今となっては自分を犠牲にしなくても良かったと思うが、その頃はそれが1番楽しかったのでまあよかったの

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20210328 雨、激しい、雨

描きたいことがなければ筆は動かないし、筆が動かなければ描けない。当然なことも、こういう風にそれらしく書くとそれらしく見える。

深夜に、雨が外壁にあたって砕ける音が突然し出して、大雨になった。どこかで大雨警報が発令されたとテレビにテロップが出る。
以前、激しい雷の音で夜中の3時に起きてしまった不安症の夫は、私の布団にいそいそと潜り込んできておそがい、と、寝ぼけながら泣いていた。だのに、激しい雨の音

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性格の悪い人

性格が悪いので、自分が嫌いな人が褒められたり庇われたりするのがあまり好きでない。というか私が嫌いな人はみんなからも嫌われて欲しいと思っている。私の性格が悪いから、というか人間、みんな、口に出さないだけで嫌いな人が虐げられても心が痛まない人はわりといると思っている。こういうところが性格悪いというかいつまでも上辺だけの明るさを引きずっている原因だと思う。

同じ課の、担当は違う男が苦手だ。まず歩く時の

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7日間で世界を作ることはしないだろう

小説を書いている。すごく久しぶりだ。長い時間をかけて、なにを書こうか考えていて書き出したのは数か月前だったけれど、2,000字ほど書いてずっと手が止まっていた。あれこれしているうちにもう締め切りがすぐそこに迫っていて、それでも私はまだ内容をこねくり回して考えあぐねている。

書くことがすごく楽しかった何年か前に比べると、今はそれほどの楽しみも興奮もない。そもそも書く機会や書く時間が減っているのだか

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心の丁寧さ

夫が起き上る衣擦れの音で目が覚めた。外からは相変わらず雨の音がしていても、厚い雲の向こうではちゃんと太陽が出ているらしくほんのり明るい。朝だな、とだけ思ってまた瞼を閉じる。夫が階段を下りていく音がする。静かに、ゆっくり、少し湿った足の裏をそっと階段につける音。平日中々起きないのになぜか休日だけはさっと起きる彼は、私を無理に起こすことはしない。私も、小学生の頃は5時とか6時に目が覚めていたんだけどな

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さようならが言えなくて

先日実家に帰ったら、知り合いがくれたんだけど、と、まるまる太ったすいかが出てきた。実家には父母しかおらず、ひと玉食べることはできないからもらってほしいという。私も夫もすいかは好きではないが、季節のものとなると食べたくなるのが人間のさがとでも言うのだろうか。協議の末、半玉もらうことにした。大きなすいかは、半分に切られても重く、入れてもらったビニル袋の持ち手がだらしなく伸びていた。

のらりくらりと生

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