マガジンのカバー画像

Hint(まどろみ文庫)

140
駄文につき、お目汚しをご勘弁。
運営しているクリエイター

#読書レビュー

【随想】小説『ハサミ男』殊能将之

【随想】小説『ハサミ男』殊能将之

ハサミ男読み終えた
正味2週間ほど
長く感じた
仕掛けには程々に驚いたがそれ以外の点では
あまり心に響くものはなかった
どんでん返し小説に飽きてきてしまったのだろうか
やはり
過程というか道中が大切だ
そう考えてみると
よい小説とはなんだろう
キャラクターが魅力的か
ストーリーが魅力的か
心理描写に共感できるか
世の理が描かれているか
そう考えると
魅力的な警察、探偵役は出てこなかった
そして主人

もっとみる
【随想】小説『殺戮にいたる病』我孫子 武丸

【随想】小説『殺戮にいたる病』我孫子 武丸

とうとうね。
殺戮に至る病読みました。
いやーどんでん返し系の名作は一応一通り読もうと
去年から
十角館の殺人
葉桜の季節に君を想うということ
イニシエーションラブ
と読んできたけど、
これだけは躊躇していた。
体調が悪い時には読めない。
立ち読みしてそう判断した。
しかし
時期が来てしまった。
内容については
特に触れることができない。
一つ言えることは
文章がとても読みやすいということ。
癖が

もっとみる
【随想】小説『満願』米澤穂信

【随想】小説『満願』米澤穂信

第27回山本周五郎賞を受賞した米澤穂信の「満願」を読む。
短編集である。
買ったのはだいぶ前だ。
米澤穂信という作家は、あまり聞き馴染のない言葉を使う作家なのだな。
梁、マタボール、及時雨、墨痕、矍鑠、筵、長押、林冠、隘路、眦、霏々など。
知らない単語が出てくると少し躓いてしまう。
海外小説や学術書で注釈を逐一読まないと分からない状態と同じだ。
するっと物語に没入できない。
意味がきちんと理解でき

もっとみる
【随想】小説『1984年』ジョージ・オーウェル

【随想】小説『1984年』ジョージ・オーウェル

「1984年」を読んでいる。
ジョージ・オーウェルだ。
図書館で借りて読まずに返してから
10年以上の月日が過ぎた。
なぜ今になってまた読もうと思ったのか。
それはAppleのCMを見たからだ。
「1984」というAppleの伝説的なCMがある(これもまた古い)。
きっと何度も見ているのだろうが、あまり記憶にない。
それもそのはず。
「1984」の元ネタを知らないからだ(つまり記憶に残りにくい)。

もっとみる
【随想】小説『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

【随想】小説『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

昔に買って途中まで読んで挫折した
銀河鉄道の夜に再チャレンジ

最後まで読み終えることができた

あれ宮沢賢治ってこんな人だっけ

宮沢賢治といえば
人畜無害なファンタジーのイメージが
いつのまにか
自分の中で出来上がってしまっていた

子供向け、童話であることは間違い無いのだけど
大人になって読むと
結構嫌らしさや毒があるんだなと感じた

あったとしても
もっと勧善懲悪チックな
説教くさい
倫理

もっとみる
【随想】小説『イニシエーション・ラブ』乾くるみ

【随想】小説『イニシエーション・ラブ』乾くるみ

いやー、最後まで読んで「えっ!どういうこと?!」ってなったのは、我ながらいい読者だ…。
作者の思い通り、まんまと乗せられて乗せられて。
ラスト2行でひっくり返ると大々的に宣伝されていた本だったので、冒頭から注意深く読んでいたが、途中からは別におかしなところはないぞと思い始め、するとだんだん小さな違和感もスルーするようになり、結局最後にはどんでん返しされてしまった。

舞台は36年前の静岡と東京。

もっとみる
【随想】小説『グラスホッパー』伊坂幸太郎

【随想】小説『グラスホッパー』伊坂幸太郎

ちょっと次何読んでいいか迷い始めてしまったので、
途中まで読んでいた伊坂作品でお茶を濁すことにする。

『グラスホッパー』

2004年の作品だ。

杉江松恋の解説を読むと、
この小説は「伊坂幸太郎が初めて書いたハードボイルド小説」であるらしい。

ハードボイルドってなんだろう。

なるほど。
でも読んだ感じ、ハードボイルドというより、
ブラッドシンプルやノーカントリーを見た感じに近い印象を持った

もっとみる
【随想】小説『傲慢と善良』辻村深月

【随想】小説『傲慢と善良』辻村深月

さてさて。
初の辻村深月作品。
『傲慢と善良』と『かがみの孤城』のどちらにするか迷って、前者にした。
冒頭を立ち読みしたら、どちらも面白そうで、悩ましかったが、『かがみの孤城』は上下巻あって、ファンタジーかつ子供向けかなと思い、まずはボリュームが少なく、ミステリーというとっつきやすさがある『傲慢と善良』にしてみた。
ボリュームが少ないといっても、500ページはあるから、結構読むのに時間がかかった。

もっとみる
【随想】小説『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

【随想】小説『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

なかなかハードボイルドだった。
ハードボイルドという言葉であってるのか?
とにかく、書き味が猛々しいというか、雄々しいというか、勇ましい。
ネタばれ厳禁で、あらすじも書けないと言われるが、果たしてそうだろうか。
あらすじは、書いても特に問題ないような気がする。
自称なんでもやってやろう屋の主人公の成瀬将虎が、同じフィットネスクラブに通う久高愛子という女性から、蓬莱倶楽部という会社を調べてほしいとお

もっとみる
【随想】小説『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光

【随想】小説『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光

なかなか挑戦的な作品だった。
ミステリなのかなと読みながら疑問にも思ったが、
最後まで読むと確かにミステリであった。
感想を書くことが難しい作品である。
勝手ながら表紙の印象から、キミスイのような作品なのかなと思っていた。
まったく違った。
冒頭に宮沢賢治、作中に京極夏彦や坂口安吾、谷崎潤一郎などが語られる「本好きのための本」であった。
登場人物も小説家、編集者、校正者と、本に関わる人ばかりだ。

もっとみる
【随想】小説『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

【随想】小説『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

六人の嘘つきな大学生

いやー実に面白かった
二手三手予想しながら読み進めたが
まあ騙された

そりゃあ作者と読者は「フェア」じゃないから
騙されて当然なのだけど

その騙し方が巧みだった

どのタイミングで物語を終えるかで
登場人物の印象はガラッと変わる

嫌な面を見た後に物語が終わったら、その人は嫌な人の印象で終わり
良い面を見た後に物語が終わったら、その人はいい人の印象で終わる

たとえ嫌な

もっとみる
【随想】小説『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

【随想】小説『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

2021年本屋大賞受賞作品。
本屋で大々的に売り出されている。
杉咲花主演で、映画化も控えている。
装丁が美しい。
読み返していて、ふと文庫カバーの裏面に、
ショートストーリーが書かれていることに気付く。
危うく見逃してしまうところだった。
なんだこの粋な計らい。
ちょっと得した気分になりますね。
漫画でもあんまり見たことがない。
小説では初めてな気がする。
以下自分への備忘録として、目次ごとのあ

もっとみる
【随想】小説『死神の精度』伊坂幸太郎

【随想】小説『死神の精度』伊坂幸太郎

死神の精度を今更ながらに読んだ。
随分昔に中途挫折して、うっちゃってしまっていた。
どうも短編小説というのは、最後まで読み切るのが難しい。
最初の方を読んだら、それで満足してしまうのだ。
今回も読み切るのに、結構な時間がかかった。
ちびちびと飲む晩酌のように読み進めた。
して、どうだったかというと、思ったよりも楽しめた。
昔読んだ時は、「死神」というファンタジー要素(ストーリーがご都合主義になって

もっとみる
【随想】小説『奇妙な仕事』『死者の奢り』『他人の足』『飼育』大江健三郎

【随想】小説『奇妙な仕事』『死者の奢り』『他人の足』『飼育』大江健三郎

大江健三郎
初期の短編を四つ読んだ。

『奇妙な仕事』
『死者の奢り』
『他人の足』
『飼育』

とにかく描写が凄まじかった。

日本語がとにかく独特で難しい。

この筆力は、現代作家では
確かに誰も及ぶべくもないと、感じる。

最近は読みやすい現代小説ばかり読んでいたせいか、
日本語の判読に、酷く、手こずってしまった。

つい何度も何度も同じ箇所を読み直していた。
文意を理解するまでに時間がかか

もっとみる