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同性愛 時々 異性愛 ~15話~
ねぇ聞いてよ、莉子。
貴方の人格全てを愛せなかった私が、これからずーっと愛されるらしいわよ。
貴方を裏切った私は皮肉にも一般的な幸せを手に入れます。きっとこのことを伝えたら私の両親は大喜び。初めての親孝行ね。
――この世の中に絶対はないよ。必要なものは残り不必要なものは消えていく。どんな時も試されていると思って生きるしかない。
違うよ莉子、私は絶対に貴方を愛していた、本当に愛していまし
同性愛 時々 異性愛 ~14話~
次の日、私の目が覚めたのはお昼過ぎだった。二日酔いで頭が痛く、体調は最悪だった。横を見ると莉子の姿はない。ズキズキと痛む頭で必死に昨日の出来事を思い出した。今日は一体誰なんだろう。隣に居ないことからするにメグではないことは確かだった。
寝室を出て廊下を歩くと、昨日私がマコに浴びせた非道な言動を思い出した。最低だったと自分の発言を顧みると同時に謝罪せねばと思い、莉子の姿を探した。しかしリビング
同性愛 時々 異性愛 ~13話~
やってしまった、と私は自分の発言をだいぶ後悔した。
ここまで感情的になって発言してしまったのなら私は莉子のこと、そして自分の心情をマコに話さなくてはいけない。
ため息をついて私は顔を上げた。心配そうな顔でマコは私を見ている。酔っぱらった頭でも、自分の発言がいかにマコを傷つけているか分かる。今まで現実から目を背け、莉子以外の人格と向き合うことを恐れ逃げてきた私こそ、被害者面をしていると言って
同性愛 時々 異性愛 ~12話~
店を出てスマホを見ると莉子から連絡が来ていた。今の莉子の人格は知らないが、連絡を寄越すことから予想するにマコかリンだろう。
千鳥足で私は莉子の家に向かった。莉子と初めて出会ったあの時、店を出た後すぐに莉子の家に向かい一夜を共にした。この道を二人で歩いた時の心臓の高鳴り、内容のない会話、少し触れ合った手の異様な熱さを思い出す。
出会って間もない私たちには早すぎる展開にも、私は身を任せた。そ
同性愛 時々 異性愛 ~11話~
「俺、大阪に転勤になったんだ。」
「え」
「それが決まった時、真っ先に思い浮かんだのが東だった。東は綺麗だし仕事も良くできるし、なんだかそばにいるだけで癒される。だからただそばに居て欲しいんだ。」
本郷のその言葉は、まるで小学生の告白のような純粋さがあった。ただそばに居て欲しい、その要求は私のすべてを肯定し、私の存在を愛すこの世で一番下心のない綺麗な愛の形かもしれない。
私がそばに居られな
同性愛 時々 異性愛 ~10話~
「お疲れ。」
私の同期で入社当時からなにかと世話になっている本郷誠二が、仕事中に私の部署に訪れ私に話しかけてきた。部署は違うが、以前あるプロジェクトで一緒に仕事をしてからは、話すことが苦にならない程度には私たちは打ち解けていた。本郷は男特有の上から目線な態度や、欲求をぶつけてくる気持ち悪さをあまり持っていない男であった。だから私は本郷に対しては特に嫌悪感も抱かず、一緒にいれることが出来た。
同性愛 時々 異性愛 ~9話~
莉子の病気がわかってから3か月が経った。私は莉子のスマホや持ち物にGPSをつけどこにいるのか把握できるようにし、そのほかのことに関しては当たらず触らずな態度をとっていた。
相変わらず莉子の人格は入れ替わるが、莉子の人格の変化を段々受け入れている自分が居て、それは言わば慣れというやつであった。しかし、決して莉子以外の人格を好きになったというわけではなかった。莉子以外の人格の前でどんな態度をとれ
同性愛 時々 異性愛 ~8話~
私の両親は熱心なカトリック教徒だった。そのため私は幼い頃から毎週日曜は教会に行き、ミサに参加することが義務付けられていた。生まれてすぐに洗礼も受けているらしいが、幼い頃からやんちゃで信仰心もなかった私は神様やキリストを信じてはいなかった。厳格な父は私の態度が気に入らず、反抗する私に親とは思えないほどの厳しい躾をしていた。
出来の良い兄は父親から可愛がられ、いつも私を悪者に仕立てる。父も兄
同性愛 時々 異性愛 ~7話~
「原因はストレスでしょう。清水さんに心的外傷を負うような出来事があったか、知っていますか?」
莉子は昔父親から虐待を受けていた。その名残で今も男性とコミュニケーションをとることが苦手だ。もしかしたら昔の恐怖を思い出す出来事が、最近あったのかもしれない。
「莉子は昔、父親から虐待を受けていました。そのことが関係しているかもしれません。」
医者は聞いているのかどうか分からない、真摯さを全く感
同性愛 時々 異性愛 ~6話~
病院へ行く日の朝、莉子は目覚めるとマコの人格を持っていた。今日は病院に行くんだよね? とマコは私に確認し、私がうなずくと颯爽と起き上がり朝ごはんを作り始めていた。マコの人格ならばあまり手を煩わせずに病院に連れていけると私は安心したのだが、それも束の間のことであった。
朝食を食べている途中莉子の人格がリンに変わり、リンは口を開くなり食事の文句や私に対して言いがかりをつけてきた。
「なにこれ。
同性愛 時々 異性愛 ~5話~
「私にとっての一番の幸せは夏南が幸せであることなの。」
莉子はいつも私の幸せばかり願っていた。自分が大変な時も私の幸せを願う莉子はどうかしている。私のことなんて利用して振り回して苦しめて、人生を滅茶苦茶にしてくれたっていいのに。
そう思うほど私は自分の人生に、莉子を置きたいと思っていた。莉子によって私の人生が変わるならば、それ以上の幸福は私にはない。
「私にとっての幸せは莉子と一緒に居るこ
同性愛 時々 異性愛 ~4話~
『もしもし』
『もしもし、夏南?今私どこにいるんだろう......。』
困惑したような声を出す莉子。先ほどの荒々しさはなく、この話し方はまさしく莉子であった。
『莉子?莉子だよね?』
『う、うんそうだよ。さっき夏南と電話したようだけど私記憶がなくて。』
私は心の底の深くからため息を吐き出した。安堵共にこれから先の未来への不安が私を襲う。
『迎えに行くからどっかお店に入って。』
私は
同性愛 時々 異性愛 ~3話~
家に帰宅しシャワーを浴びて着替えている間、私は一瞬も莉子のことを忘れることが出来なかった。一睡もしていないにも関わらず睡魔は襲ってこない。脳みそがやけにはつらつとしていて、昨日から今日にかけてあった出来事を鮮明に思い出させる。
もし私の知らない莉子の人格が、私がそばにいない間に現れて莉子がどこかに行ってしまったらどうしよう、という恐怖が常に私の中にあった。メグぐらい外に出ることに嫌悪感があれ
同性愛 時々 異性愛 ~2話~
莉子と私が付き合って3か月ぐらい経ったある日、私たちは街でデートをしているととある男二人組にナンパをされた。私の容姿はいい方なので男の人から声をかけられることがよくあったため、このような状況に陥ることには慣れていた。
私は男という生物が嫌いだった。支配欲出世欲を執念深く持ち続け、性欲に駆られると金魚の糞のごとく女に引っ付いて歩く男が、気持ち悪くて仕方がない。
昔は私も男と恋愛したことがあ