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本の感想

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自分だけの日記なんて書く必要ある?『さみしい夜にはペンを持て』 #読書感想文

自分だけの日記なんて書く必要ある?『さみしい夜にはペンを持て』 #読書感想文

 タイトルに惹かれて、この本を買った。

 著者は古賀史健。『嫌われる勇気』を岸見一郎と共著した人。
 中学生向けに書かれた物語。主人公の男の子はあるおじさんに出会って、日記を書くことを薦められる。それによって『自分との人間関係』を築くことができるという。
 2023年7月出版。(今年のものだからけっこう新しくて、今のSNSなどの状況を反映してると思う。)

自分だけの日記なんて書く必要ある? 本

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仕事のもやもやと、『わたし、定時で帰ります。ライジング』

仕事のもやもやと、『わたし、定時で帰ります。ライジング』

 『わたし、定時で帰ります。ライジング』を読んだ。

前作、前々作が出た時も、そして今回もハマった。

 今の日本の職場に共通する問題なんだろうか? 第1作から、安く仕事請けちゃうとか、会社に住み込む人とか、うわーー、うちの会社と一緒だーー、と思う話ばかりだ。
 今回のテーマは生活残業。この小説の中で、若い社員は、残業代を稼がないと基本給だけでは生活していけない。そのために、わざと非効率なやり方で

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『旅する練習』乗代雄介

『旅する練習』乗代雄介

 『旅する練習』を読んだ。サッカー少女の姪と鹿島を目指し、利根川の堤防沿いを歩いて旅をする。
 サッカーの話、近代文学の話、野鳥の描写、その土地の名所や歴史、風景について読んでいるだけで面白い。 
 でも一番旅にパワーを与えているのは、姪の亜美ちゃんだ。元気で素直でサッカーが大好きで、プロになることを夢みている。毎日スパイクを磨き、リフティングの練習しながら旅は進む。目標は500! 更新されていく

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『オルタネート』加藤シゲアキ #読書感想文

『オルタネート』加藤シゲアキ #読書感想文

面白かった。
それぞれ悩みを持つ高校生の青春ストーリー。
どの登場人物も、まっすぐで純粋で一生懸命で、共感できるし応援したくなる。

舞台も華やかで、高校は生徒の自主性を重んじる(おそらく名門)私立校。主軸となる、料理コンテストの様子も豪華だし、ギターやドラム、パイプオルガンなどの音楽も多く登場する。映像化したら、きっと楽しいだろう。
自分の地味な高校時代とはほど遠い。憧れるなあ。

でも、一番面

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宇佐美りん『推し、燃ゆ』 ダイレクトに伝わる生々しい描写、10代の心のぐらぐら·ふらふら感 #読書感想文

宇佐美りん『推し、燃ゆ』 ダイレクトに伝わる生々しい描写、10代の心のぐらぐら·ふらふら感 #読書感想文

芥川賞受賞作 宇佐美りん『推し、燃ゆ』を読んだ。
すごかった。

なにがすごかったかって、その文章·日本語が、私が今まで読んだ小説と圧倒的に違う。教室や街などの風景、SNSの波に呑み込まれる感じ、生々しい肉体の感覚の描写が、細やかに描かれていて、リアルにダイレクトに伝わってくる。
床から立ち上がるところを
「フローリングから太腿を引き剥がすと、」
と表現したり、
「石の塀が上から黒くなった。夕方の

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孤独な家事、育児・・・小説『対岸の家事』朱野帰子

孤独な家事、育児・・・小説『対岸の家事』朱野帰子

『私、定時に帰ります。』に続いて、同じ作家の小説『対岸の家事』を読んだ。これも面白かった。

育児中の専業主婦。
バリバリ働くワーキングマザー。
育休中の父親。

みな、ひとりで家事、育児を抱え込んで、
24時間休む間もなく必死。
夜遅くに疲れて帰ってくる夫や妻とも、
ほとんど会話できず、孤独。

幸せになるために、
仕事をしたり、子供を産んだりしたはずなのに、
これでいいのだろうか?と
と途中ま

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