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超短編戯曲・小説

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超短編戯曲・小説を不定期に書き綴ります。
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#毎日投稿

【才の祭】クリスマスケーキ(300字)

【才の祭】クリスマスケーキ(300字)

父「誕生日か。息子よ、お前はいくつになったんだ?」

子「5歳だよ、お父さん」

父「もう5歳か。じゃあ、誕生日だからお祝いするか」

子「わーい、じゃあ、クリスマスケーキ食べたい」

父「おい、おい息子よ、誕生日だぞ」

子「あれ? そうだっけ?」

父「ボケてるんじゃないか?」

子「違うよ。誕生日とクリスマスが一緒なんだよ」

父「あれ? そうだっけ?」

子「お父さんこそボケてるんじゃない

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【才の祭】クリスマスプレゼント(300字)

【才の祭】クリスマスプレゼント(300字)

母は悩んでいた。

一度もクリスマスプレゼントをもらった事がない。

今まであげてきたのだから、これからは息子からもらってもいいだろう。

隣の奥さんは、プレゼントにハワイ旅行をもらったというではないか。

今年こそはもらってやる、母はそう決意していた。

クリスマス当日。

母「息子よ、今日何の日?」

息子「土曜日。」

母「他には?」

息子「さぁ?」

母「この親不孝者! お前は一度だって

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【超短編小説】まつり(300字)

【超短編小説】まつり(300字)

まだこの世に祭が一つしかなかった頃の話。

三度の飯より祭が好きな男がいた。

祭の前日、男は興奮で眠れなかった。

明け方うとうとしてしまい、目が覚めた時には祭は終わっていた。

後の祭、男は途方に暮れた。

一年間楽しみにしていた祭が終わってしまったのだ。

男は発想を変えることにした。

祭は終わったのではなく、まだ始まってはいないのだと。

そこから男は毎日お祭り騒ぎだった。

だが、一年

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【超短編戯曲】猫の手も借りたい(300字)

【超短編戯曲】猫の手も借りたい(300字)

助手「先生、ついに猫の手を借りる実験に成功しました。」

先生「実験が成功するとは、犬も歩けば棒に当たるだな。」

助手「そんな実験は犬も食わぬと言ってた、犬猿の仲の研究室の奴らいい気味だ。」

先生「そんなもの負け犬の遠吠え。」

助手「これで私も一犬前としてやっていけます。」

先生「この研究室の成果は私の手柄だ。犬が西向きゃ尾は東。尾を振る犬は叩かれずと言う、ここはひとつ。」

助手「私はこ

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【超短編戯曲】魚屋殺人事件 最終章(300字)

【超短編戯曲】魚屋殺人事件 最終章(300字)

魚屋が脱走 追いつめる警部と刑事

刑事「もう網にかかった魚だ。」

魚屋「来るんじゃねえ。雑魚が。」

警部「ゴマメの歯ぎしりだな。」

刑事「ここは僕が。大船に乗ったつもりでいて下さい。」

魚屋「ちくしょう。」

警部「あぶない。」

飛び掛かる魚屋 警部が身代わりとなる

刑事「警部。」

警部「まさかサバ折りを仕掛けてくるとは。」

魚屋「エビでタイを釣るってやつだ。魚屋をなめるな。」

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【超短編戯曲】魚屋殺人事件 ビヨンド(300字)

【超短編戯曲】魚屋殺人事件 ビヨンド(300字)

警部「もうまな板の上の鯉だ、観念しろ。」

刑事「どうして他の魚屋を捌いたんだ。」

魚屋「にくかったんです。」

刑事「憎かったのか。」

魚屋「いえ、あいつ魚屋なのに肉を買ったことがどうしても許せなかったんです。」

警部「魚屋よ。しばらくは生簀に入って反省するんだな。」

魚屋「目からうろこでございます。」

刑事「さすが腐っても鯛。」

警部「よし水揚げしろ。」

刑事「へい。」

連行さ

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【超短編小説】もっと高く(300字)

【超短編小説】もっと高く(300字)

男は街の権力者。

男は自分の土地に、街で一番高いビルを建てようとしていた。

金にものを言わせ、ついに街一番のビルは完成した。

満足気な男をよそに、街外れにはビルより高い山がそびえ立っていた。

男は面白くない。

さらに金にものを言わせ、その山より高いビルを建てようとした。

山より高いビルが完成したが、男はそのビルよりも高い所にある雲が気に食わなかった。

男はさらに金にものを言わせ、雲よ

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【超短編小説】ひとりになりたい(300字)

【超短編小説】ひとりになりたい(300字)

男はいつもの様に満員電車に揺られ、帰宅した。

男の家は四人家族で、昔使っていた書斎は子供部屋となり、自分の部屋は無くなっていた。

「ひとりになりたい。」

男は心からそう思った。

トイレに駆け込み鍵をかけてみたが、ポケットの携帯電話と、ノックの音が鳴り響いた。

男はどうしてもひとりになりたかった。

男は家を飛び出し、おもむろに地面に穴を掘り始めた。

携帯電話も投げ捨て、男は一心に穴を掘

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