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R-50 Ladies Only

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本来は中年女性である私の心の触れたあれこれ綴るつもりが、「父がひとりで死んでいた」という記事が思いがけず多くの方に読まれたことで、親の死や介護や実家の空き家問題を書くことが増えて… もっと読む
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記事一覧

写真が紡ぐ記憶 富士フイルムの『写真幸福論』と私の物語

写真が紡ぐ記憶 富士フイルムの『写真幸福論』と私の物語

富士フイルムが「写真幸福論」というプロジェクトをやっている。

今までFUJIFILMのカメラとはなんとなく相性が悪く、X-T2、X-T3と使ってみたけれど今ひとつ身体になじまず手放してしまった。その後、たまたまソーシャルメディア上で人気になり始めたX-100Vを手に入れる機会があり、これはちょっと持っていてもカッコいいしおもしろいカメラだぞと気に入り、遡るかたちでX70も購入した。

そのうちや

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よい写真ってなんだろう

よい写真ってなんだろう

最近、写真家さんの書籍が人気というので、2冊購入して読んでみた。テクニックではなくもっと根っこのほうの、撮るという行為にていねいに触れた素晴らしい内容だった。また、2冊とも、写真と言葉は不可分なのだということが書いてあった。文章を書くことを仕事にしている私には、その部分がとても理解できた。

写真のディレクションも私の仕事のひとつだけれど、自分でカメラを持つとあまりにもつまらない写真ばかりを撮って

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雪の日はカメラを持って

雪の日はカメラを持って

昨日の東京の雪はすごかった。
みなさまご無事でしたでしょうか。

私はたまたま友人との夕食の約束があり、SIGMA fpを持って出かけていたので(ありがたき防塵防滴構造!)、帰宅の途中でいくつか写真を撮ることができた。もし家で食事をしていたら、とても出かける気はしなかっただろう。

昨日は降雪と雷が同時に起こってとても驚いたけれど、ニュースで「降雪と雷が同時に起きるのは世界でも珍しく、日本以外では

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誕生日といういちにち

誕生日といういちにち

誕生日というのは年々、何を感じていいのかよくわからなくなる日だ。子どもの頃はあんなに待ち遠しかった日曜日や夏休みが、大人になるとただの平凡な休日になってしまうことと似ているかもしれない。

昨日は、日付が変わるとメールで必ず1番にハッピーバースデーとメールが届き、何十年も欠かさず図書券を贈ってくれていた父が亡くなって3回目の私の誕生日だった。

無人の実家を整理するために帰省すると、いつもそこにい

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いつも空を探している

いつも空を探している

季節が移り変わってゆく土地に暮らしていて良かったなとよく思う。四季が繰り返してゆくことは、再生を感じさせる。春が年にいちど必ず巡り来るように、「今回はだめだったけど、またやればいいかな」と信じることができる。

たぶんそうやって生き延びてきた。

季節は空からやってくる、とずっと思っていた。あるとき友人たちと話していたところ、空から来るんじゃなくて「風が運んでくる」という人も「光が変える」という人

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きっとひとりじゃないんだよ

きっとひとりじゃないんだよ

日常生活で、見知らぬ人や弱い社会的つながりしかない人々との会話や挨拶、感謝の言葉が多いほど生活満足度が高まるという研究結果が2023年11月に出たとき、実感と合うなあと思った。

研究では、例としてスーパーマーケットでレジ係に挨拶する、バスで隣に座る人と会話をする、庭の世話をしている隣人と話す、同じシフトで働いている同僚と会話する、毎朝コーヒーを買う店のバリスタと会話するなどの例が挙げられている。

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MY PERFECT DAYS

MY PERFECT DAYS

かつて、同じ映画をこんなに多くの友人達が見たり話題にしたり考察したことはなかったように思う。『PERFECT DAYS』のことだ。監督はヴィム・ヴェンダース、主人公の平山を演じるのは役所広司。東京を舞台に清掃作業員の男が送る淡々とした日々を描いている。

ある寒い火曜日、自宅から徒歩20分かかる映画館まで、ダウンを着てポケットにカメラを突っ込んで見にいった。帰りにお茶でもしようと考えていたけれど、

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変わってゆくことと変わらないこと 

変わってゆくことと変わらないこと 

2020年に半年あまり使っていたけれど、流り病で外に出るのが憚られるようになり、夏過ぎには手放してしまったSIGMA fpを2024年初頭にふたたび手に入れた。どうしてまたほしいと思ったのか定かではないのだけれど。

2020年夏といえば、母が急激に認知症になっていることがわかり遠距離介護となり、その半年後には父が死んでしまい4匹の猫と無人の実家が残されるという家族のオオゴトにひとりで立ち向かう日

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10月20日までもう少し

10月20日までもう少し

「今日は10月10日でしょう」と、母は言う。
「うん、そうだよ」と、スマートスピーカー越しに私は答える。私の手元のスマートフォンで母の姿が見える。施設で寝たきりの母の部屋にある小さなディスプレイには、私の顔が映っているはずだ。

「私の誕生日じゃなかったかな」
「いや、お母さんの誕生日は10月20日だから、もう少し後だね」
「そうか、今日かと思っていたよ。美智子妃殿下と同じ誕生日ということは覚えて

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猫へのバースデーカード

猫へのバースデーカード

「HAPPY BIRTHDAY ルルちゃん 6歳」と書いたハガキが、どうぶつ保険の会社から届いた。毎年、3週間前にこうやってバースデーカードが届くと、私は猫の誕生日を思い出すことができる。

ルルは私が実家を出てから初めて一緒に暮らした猫だ。生後半年で私のところにやってきて、それからずうっと一緒にいる。旅の多い私が、猫のお世話なんてできるだろうかと思っていたけれど、何とかなるものだ。さまざまな私の

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5月は、まるで

5月は、まるで

5月は、まるでいつもと違う土地にいるかのようだ。朝はバリ島のウブドのようにほんの少しひんやりして空気が澄み、目を閉じればそれが旅になる。

今日の東京にオフシーズンのリゾートを感じて、カメラを持って散策してみた。

写真については下手の横好きで、作家についても詳しいわけではないのだけれど、例えばニューカラーと呼ばれる一群の写真の雰囲気や色はとても好きだ。

下記のリンクからエグルストンの写真など見

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「小さな自分」を大切に〜ウェルビーイングを高めるささやかな方法

「小さな自分」を大切に〜ウェルビーイングを高めるささやかな方法

もし宇宙から地球を見ることができたら、どんなに心震えるだろう——。天体望遠鏡を買ってもらった小学生の私はそんなことばかり考えて、実家のベランダから月のクレーターや土星の輪を飽きず眺めていた。それから数十年。今生では、宇宙飛行士になれそうにもないけれど。

本記事のカバーに使っている写真「地球の出(Earthrise)」は、1968年にアポロ8号の宇宙飛行士ウィリアム・アンダースが撮影した地球の写真

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自分を取り戻すための半年間が過ぎて

自分を取り戻すための半年間が過ぎて

本来この「R-50 Ladies Only」というマガジンは、ふざけたタイトルからもわかるようにnoteに「50代になって感じたこと」を、時には笑える話など交えながら書いていこうと思っていた。

けれど、2021年1月に「父がひとりで死んでいた」経験をしてからは、孤独死や遠距離介護や空き家や老猫の飼育のことを書かざるを得なかった。私の生活が1年以上、それ一色に塗りつぶされたからだ。

その過程で多

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