はじめまして、絹子と申します。 本名ではありません。創作時に名乗っていたら、いつの間にか定着して15年が経ちました。 創作と表現を軸に生きてきて、文章、絵、音楽を…
ゴオォォォォ。 海の泡ってたしか、こんな音だった。うす暗い部屋で空調が海鳴りのようにうめいている。 私は手元をLEDライトで照らしながら、しがみつくようにノートに…
親指一本で濁流に飛びこんだ。 決死の覚悟をする前に もう体は動いている。 突然大海に放りだされた私の体は 早々にあらがうことをやめ 流れに身を任せた。 ※ 『SNS依…
丸めた背中から柔らかな羽根が伸びている。 紫や緑や赤であるそれらは背骨の流れに沿って植えこまれ、空調の風にあおられ揺らめいている。 大きな鏡に映る姿はまるで発情…
絹子
2024年8月13日 21:43
はじめまして、絹子と申します。本名ではありません。創作時に名乗っていたら、いつの間にか定着して15年が経ちました。創作と表現を軸に生きてきて、文章、絵、音楽を扱う日々です。本業は編集ライターです。取材して記事を書いています。書くのは好きで、喋りは下手で、でも人が好き。絵を描いて、展示して、というのは19歳から。子供のころは漫画家になりたかったので、時間の許す限りずっと絵を描いていまし
2024年8月12日 08:12
ゴオォォォォ。海の泡ってたしか、こんな音だった。うす暗い部屋で空調が海鳴りのようにうめいている。私は手元をLEDライトで照らしながら、しがみつくようにノートに文章を書き連ねていた。頭はボワボワと空想を膨らませ、見えない飛行船が天井にいくつも浮かぶ。この暗闇で私はどこのだれであってもいいのだ。その日の私は魚だった。カリブ海を泳ぐエメラルドの魚だった。陽の光はうろこに反射して水中で
2024年7月18日 22:54
親指一本で濁流に飛びこんだ。決死の覚悟をする前にもう体は動いている。突然大海に放りだされた私の体は早々にあらがうことをやめ流れに身を任せた。※『SNS依存で増長する現代人の歪んだ自意識』『ながらスマホの年間総時間数を調査』朝イチでネットニュースに目を通すと定期的にこんな見出しが飛び込んでくる。情報過多の現代を語る専門家の記事はスマホの画面を右から左に移動するばかり
2024年7月18日 00:05
丸めた背中から柔らかな羽根が伸びている。紫や緑や赤であるそれらは背骨の流れに沿って植えこまれ、空調の風にあおられ揺らめいている。大きな鏡に映る姿はまるで発情期の雄鶏のようだ。「いたくない?」あなたが僕の背中と向き合ってからおそらく一時間ほど。鈴の音に応えた僕の「あ」は、雄鶏のようにしわがれていた。「たまにいたい、けど大丈夫です」あなたは僕の背中に密集した羽根を確かめ「そう」