木村敬一

パラリンピック競泳S11(全盲)クラス、ロンドン,・リオデジャネイロ大会で銀メダル獲得…

木村敬一

パラリンピック競泳S11(全盲)クラス、ロンドン,・リオデジャネイロ大会で銀メダル獲得。東京パラリンピックでの金メダル獲得に向けて、現在米国ボルチモアを拠点に練習中。アメリカでの生活のことを、少しずつ書いていこうと思います。

記事一覧

50m自由形で日本記録を更新した時の話

 世界選手権初日の50m自由形。大きな試合というものは、何回出場しても緊張する。特に初日は緊張する。  俺の自己ベストは26.56。リオパラリンピックの記録だ。…

木村敬一
9か月前
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英会話スクールに通い始めた話

 コロナ禍でアメリカから日本に戻ってきて3年が立った。当時からものすごく英語が話せるわけではなかったが、それにしても最近、だいぶ英語を忘れてきてしまっているよう…

木村敬一
11か月前
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鼻の手術第3回 「術後ってめっちゃくるしかった話」

 手術が終わった。麻酔が切れてくるにつれて、だんだん痛くなってきた。  鼻が痛いのはあたりまえだけど、頭も半端なく痛い。  痛み止めの薬はもらえるのだが、これがも…

木村敬一
2年前
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鼻の手術第2回 「入院の話」

 2022年、新しい年が始まった。東京2020退会は、もう昔のこと、俺は鼻を直すのだ。  入院。記憶にある限りでは、入院したことはない。幼いころに目の手術で入院…

木村敬一
2年前
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鼻の手術第1回 「副鼻腔炎と診断された時の話」

 2019年夏、まだアメリカに住んでいたころに盛大に風邪を引いた。完全に冷房にやられた。それ以来、鼻声が治らない。別にずっと詰まってるとか、そんなんじゃないけど…

木村敬一
2年前
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東京パラリンピックの選手村が楽しすぎた話

 8月21日、入村。自国開催であり、かつ俺のレースは試合の後半なので、無理に選手村に入らなくても、ナショナルトレーニングセンターなどの隔離施設で調整することもで…

木村敬一
2年前
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東京パラリンピックで金メダルを取ったときの話

初めに、沢山の応援、本当にありがとうございました。初めてパラリンピックに出場してから13年、メダリストになってから9年、これ以上ないほど悲しい思いをしてから5年…

木村敬一
2年前
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世の中で1番尊敬している男、室伏広治の話

 今朝のニュースはびっくりした。室伏長官が難病と戦ってたなんて。かってに病気しない人かと思ってた。 https://news.yahoo.co.jp/articles/67f04f1c4f518f26f45fbbab4d

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第29回(最終回) 「コロナに振り切られてトレーニングが終わってしまったときの話」

 2020年3月。いよいよアメリカでも感染者が出てきた。もはや、世界で安全な場所はなさそうだ。  3月11日、多くの大学が休校を決めた。俺が住んでいる大学も、練…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第28回 「コロナに振り回されてたときの話 その2」

 2020年3月。コロナウイルスの感染が拡大し、日本で開催される予定だった試合がなくなった。なので、日本に帰らないことにはなっていたのだが、その一方で、俺がアメ…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第27回 「コロナに振り回されてたときの話 その1」

 2020年2月、徐々にコロナウイルスの感染が広がり始めた。中国に始まり、日本もクルーズ船から感染が広がっていった。それを眺めていたアメリカは、完全に人事のよう…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第25回 「少しずつ元気を取り戻しつつあったときの話」

 2020念1月はどん底だった。お世話になっていた人が次々といなくなり、寂しくてホームシックになっていた。  その要因の一つであったのが、トレーナーのTonyがいな…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第24回 「1年半も経って、今更ホームシックになったときの話」

 2020年1月。合宿を終えてボルチモアに戻ってきた。もう、語学学校にMBはいない。常に気にかけてくれていて、オフィスに行けばいつでも話し相手になってくれたMB。…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第23回 「お世話になっていた人が突然いなくなってしまったときの話」

 2019年12月。語学学校のディレクターMBが、突然退職することになった。 視覚障害のある俺を受け入れてくれた張本人であり、コーチと並んで俺のアメリカ留学を実…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第22回 「再びプエルトリコへ行ったときの話」

 2020年1月。今年も合宿の季節がやってきた。場所は去年と同じプエルトリコ。去年はすべてが新鮮であった一方、全体のペースについていくのに必死だったが、今年はな…

木村敬一
3年前
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アメリカでのトレーニング第21回 「日本から寺西先生が試合に来てくれたときの話」

 2019年12月、アメリカの国内大会に出場した。今回は、日本から寺西先生にもきてもらい、試合でのタッピングをお願いすることになった。寺西先生とは、俺が中学生の…

木村敬一
3年前
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50m自由形で日本記録を更新した時の話

 世界選手権初日の50m自由形。大きな試合というものは、何回出場しても緊張する。特に初日は緊張する。
 俺の自己ベストは26.56。リオパラリンピックの記録だ。日本記録あ、大先輩、河合純一さんの記録、26.37。2000年にマークされたこの記録は、23年間破られていない。いつかは破らねばと思っていたこの記録。0.2秒という差は、長きにわたる地球の歴史からするとあっという間だが、50mの中では大差と

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英会話スクールに通い始めた話

 コロナ禍でアメリカから日本に戻ってきて3年が立った。当時からものすごく英語が話せるわけではなかったが、それにしても最近、だいぶ英語を忘れてきてしまっているように感じる。一応、World Para Swimmingという組織の中で、アスリート同氏の会議なんかに出るようにもなったので、これはもう一度勉強をしなおした方がよさそうだ。というわけで、英会話スクールに通うことにした。
 ちなみにアメリカに住

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鼻の手術第3回 「術後ってめっちゃくるしかった話」

 手術が終わった。麻酔が切れてくるにつれて、だんだん痛くなってきた。
 鼻が痛いのはあたりまえだけど、頭も半端なく痛い。
 痛み止めの薬はもらえるのだが、これがもう、全然効かない。点滴から痛み止めを入れてもらったらだいぶ楽になった。ともかく、寝たい。寝たいんだけど、点滴が常につながっていて落ち着かない。
 ところで、俺はそうとう寝相が悪い。寝相が悪いというか、寝ぴくが激しい。電車で転寝しているだけ

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鼻の手術第2回 「入院の話」

 2022年、新しい年が始まった。東京2020退会は、もう昔のこと、俺は鼻を直すのだ。
 入院。記憶にある限りでは、入院したことはない。幼いころに目の手術で入院していたのが最後、全身麻酔の手術もその時が最後、だと思う。どきどきするけど、入院したら翌日には手術、1日様子をみて、四日目には隊員という、入院にしては短いもの。
 入院当日、病室にチェックイン(であってるのか?)すると、次から次へと来客がく

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鼻の手術第1回 「副鼻腔炎と診断された時の話」

 2019年夏、まだアメリカに住んでいたころに盛大に風邪を引いた。完全に冷房にやられた。それ以来、鼻声が治らない。別にずっと詰まってるとか、そんなんじゃないけど、ずっと鼻声。最近知り合った人には分かってもらえないけれど、俺はこんな声じゃないんだ。

 でもまあ、風邪が治ってしまえば、生活に支障をきたす訳でもないし、ほおっておいた。ところが、それ以来、しょっちゅう風邪を引くようになった。東京パラの内

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東京パラリンピックの選手村が楽しすぎた話

 8月21日、入村。自国開催であり、かつ俺のレースは試合の後半なので、無理に選手村に入らなくても、ナショナルトレーニングセンターなどの隔離施設で調整することもできたが、せっかく東京パラリンピックだから、村に滞在することにした。ご飯もおいしいって噂だったし。
 ご飯は、確かにおいしかった。おいしいというか、普通だった。
 国際大会に行った時って、「これはなんなんだろう」とか、「どんな味がするんだろう

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東京パラリンピックで金メダルを取ったときの話

初めに、沢山の応援、本当にありがとうございました。初めてパラリンピックに出場してから13年、メダリストになってから9年、これ以上ないほど悲しい思いをしてから5年。長年の目標を達成することができて、幸せいっぱいです。

 さて、この金メダルまでのこと、忘れないうちに文章にしておきたい。

 9月2日、レース前日。前日に平泳ぎで銀メダルを取ってはいたが、あくまで目標は金メダル。この日も、アメリカからか

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世の中で1番尊敬している男、室伏広治の話

 今朝のニュースはびっくりした。室伏長官が難病と戦ってたなんて。かってに病気しない人かと思ってた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/67f04f1c4f518f26f45fbbab4dad098a3d677df4
そんな室伏さんとは、何度かお会いさせていただいたことがある。で、これまたかってに、俺は室伏さんのことを、世の中の男の中で一番尊敬している。今回、病魔

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アメリカでのトレーニング第29回(最終回) 「コロナに振り切られてトレーニングが終わってしまったときの話」

 2020年3月。いよいよアメリカでも感染者が出てきた。もはや、世界で安全な場所はなさそうだ。

 3月11日、多くの大学が休校を決めた。俺が住んでいる大学も、練習している大学も。コーチが緊急ミーティングに呼ばれて、どうにかプールだけは利用を継続できることとなった。しかし、俺の住んでいる寮の食堂はあと3日で終了、そこから3週間は営業を停止することとなった。
 もちろん語学学校も休校。翌週からオンラ

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アメリカでのトレーニング第28回 「コロナに振り回されてたときの話 その2」

 2020年3月。コロナウイルスの感染が拡大し、日本で開催される予定だった試合がなくなった。なので、日本に帰らないことにはなっていたのだが、その一方で、俺がアメリカに滞在できる資格が、後1ヶ月で切れてしまう。
 という状況に陥ったことで、所属企業から帰国せよとの指令が出た。しかし、その時点では(強調するがその時点では)、ウイルスが蔓延しつつあるのは日本、危ないのは日本。
 語学学校のスタッフは、日

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アメリカでのトレーニング第27回 「コロナに振り回されてたときの話 その1」

 2020年2月、徐々にコロナウイルスの感染が広がり始めた。中国に始まり、日本もクルーズ船から感染が広がっていった。それを眺めていたアメリカは、完全に人事のように捕らえていた。
「3月に日本で試合があるから帰るんだ」とかって話していると、「ウイルスもって帰ってくるんじゃないぞ」といじられていた。
 そんな3月の試合の中止が2月26日に出された。つまり、日本に帰らなくなった。今回の帰国はすごく楽しみ

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アメリカでのトレーニング第25回 「少しずつ元気を取り戻しつつあったときの話」

 2020念1月はどん底だった。お世話になっていた人が次々といなくなり、寂しくてホームシックになっていた。

 その要因の一つであったのが、トレーナーのTonyがいなくなってしまったこと。後任として彼の後輩、Jakeが引き継いでくれることになった。Tonyとの最後のトレーニングの日に対面して、引継ぎをしてくれるとのことだったが、Jakeは現れなかった。
もちろん、こっちも期待はしていない。
 とり

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アメリカでのトレーニング第24回 「1年半も経って、今更ホームシックになったときの話」

 2020年1月。合宿を終えてボルチモアに戻ってきた。もう、語学学校にMBはいない。常に気にかけてくれていて、オフィスに行けばいつでも話し相手になってくれたMB。彼女のいない学校で、果たしてやっていけるのか、いまだに不安でいっぱいだ。
 ところが、この不安は始まりに過ぎなかった。

 日曜日の午後に、トレーナーのトニーから連絡があった。ここでも何度も登場した、ドタキャンだらけで豪快な性格のトニー。

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アメリカでのトレーニング第23回 「お世話になっていた人が突然いなくなってしまったときの話」

 2019年12月。語学学校のディレクターMBが、突然退職することになった。
視覚障害のある俺を受け入れてくれた張本人であり、コーチと並んで俺のアメリカ留学を実現させてくれた最重要人物。彼女が退職するとは、とんでもないことになってしまった。

 俺が通っていた、かつ住んでいた寮は、ノートルダム大学メリーランド校。この大学の付属機関としてあるのが語学学校。かつて視覚障害者を受け入れたことはないのだが

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アメリカでのトレーニング第22回 「再びプエルトリコへ行ったときの話」

 2020年1月。今年も合宿の季節がやってきた。場所は去年と同じプエルトリコ。去年はすべてが新鮮であった一方、全体のペースについていくのに必死だったが、今年はなんとなく流れが分かっている。
 去年は1月3日スタートだったので、ボルチモアからみんなと一緒に向かったが、今年は1月2日スタート。年越しはなんとしても実家で過ごしたかったので、日本から直接現地プエルトリコに向かった。
 直行便はないのでヒュ

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アメリカでのトレーニング第21回 「日本から寺西先生が試合に来てくれたときの話」

 2019年12月、アメリカの国内大会に出場した。今回は、日本から寺西先生にもきてもらい、試合でのタッピングをお願いすることになった。寺西先生とは、俺が中学生の時からタッピングをしてもらっている。

 場所はテキサスのダラス。寺西先生は日本から、俺はボルチモアからなので、現地の空港で集合することになっていた。はじめから、うまくいく気がまったくしない。

 俺が練習をしていたLoyola大学関係には

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