鼻の手術第3回 「術後ってめっちゃくるしかった話」

 手術が終わった。麻酔が切れてくるにつれて、だんだん痛くなってきた。
 鼻が痛いのはあたりまえだけど、頭も半端なく痛い。
 痛み止めの薬はもらえるのだが、これがもう、全然効かない。点滴から痛み止めを入れてもらったらだいぶ楽になった。ともかく、寝たい。寝たいんだけど、点滴が常につながっていて落ち着かない。
 ところで、俺はそうとう寝相が悪い。寝相が悪いというか、寝ぴくが激しい。電車で転寝しているだけでもそうとう震えるらしく、隣に座っていた知らない人を肘でぼこぼこにしてしまう。トラブルにならないといいのだが。
 そんな訳で、点滴につながれたまま寝て、激しく動いて針が変な所に刺さったら、
とか思うとおちおち寝てられない。
 ちなみに手術の最中に寝ぴくしたらどうしようと思って、前日に先生に、
「寝ぴくが激しいんですけど、麻酔で寝ている間、大丈夫でしょうか?」
って聞いてみた。
 「まあ、はあ、大丈夫だと思いますよ」
という、なんとも煮え切らない回答だった。たぶん、過去にそういうこと聞いたやつはいなかったんだろう。不安を払拭できずに迎えることとなったが、今こうして無事ということは、きっと俺は手術中はおとなしくしていたんだろう。
 たまに意識は飛びつつ、なんとなく朝を迎えた。翌日は1日ベッドの上で過ごした。まだ、点滴につながれたまま。手術をした日の夜は、食事が出てこなかったが、次の日の朝食から普通に出てきた。
 「朝、昼、夜と、徐々に通常の食事に戻します」
という説明だったはずなのだが、普通にパンが出てきた。マジで、何の変哲もない、パン。
 食べてみたら、以外と普通に食べられた。もしかしたら、消化しやすいようにとか、呑み込みやすいようにとか、工夫されてるのかもしれないが、あまりにも普通のパンに感じられた。なんだ、俺、もう大丈夫じゃないか。
 その次の日は、もう退院。まだまだ鼻も頭も痛いし、もうちょっと入院していたいような気もしたのだが、相変わらず看護師のお姉さんは冷たいし、なんか、「そんな軽い病気で健康なおまえ、とっととでていけ」という空気感が満載だったので、逃げるように退院してきた。
 手術が終わって、すぐに鼻が開通する訳ではない。出血の恐れがあるので、鼻には止血剤の綿がぱんぱんに入っている。
 さらに、その止血剤の上から、普通の綿を詰めて蓋をして保湿する。
 この止血剤は特殊な素材で、水に溶ける。なので、退院後は、鼻うがいをして、この止血剤を徐々に溶かして抜いていく。
 鼻うがい。鼻に入っても痛くないと言われる食塩水を、片方の鼻の穴から入れて、逆の鼻の穴へと通すことで、鼻の中を洗浄する。最近は感染症の予防にも有効で流行っているらしい。特におミクロンは、鼻の奥で活発に活動するので、今はみんなやった方がいいっぽい。
 そんな訳で、退院してからの2週間は、ひたすらに鼻うがい。中に詰まっている綿がすぐになくなる訳ではないので、ずっと鼻は詰まった状態。100%口呼吸。苦しい。
 あきらめずに鼻うがいを続けていると、だんだんと綿が溶けだしてくる。どろっどろの、血の混ざった個体と液体の間みたいなのが、すこしずつ鼻から出てくる。たまに、喉に落ちて、口からも出てくる。
 2週間もするとほとんど綿がなくなり、病院でみてもらう。最後の残りかすみたいなのを吸いだしてもらって終了。この吸いだしてもらうのがまた、とんでもなく痛い。頭からも脳みそが吸いだされてバカになってしまいそうになる。
 引き続き様子を見ていくことにはなるし、鼻うがいも継続しなければいけないのだが、さしあたり術後の経過は順調らしい。
 ところで、俺、まだ鼻声なんだけど。いや、きっとまだ完全に手術から回復してないからか。もともと病院を受信したのは、体調が悪いというより、鼻声だったからのはず、声が通るようにならないと、なんか治った気がしない。

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