鼻の手術第1回 「副鼻腔炎と診断された時の話」

 2019年夏、まだアメリカに住んでいたころに盛大に風邪を引いた。完全に冷房にやられた。それ以来、鼻声が治らない。別にずっと詰まってるとか、そんなんじゃないけど、ずっと鼻声。最近知り合った人には分かってもらえないけれど、俺はこんな声じゃないんだ。

 でもまあ、風邪が治ってしまえば、生活に支障をきたす訳でもないし、ほおっておいた。ところが、それ以来、しょっちゅう風邪を引くようになった。東京パラの内定のかかった世界選手権も、マックス風邪を引いている状態で泳いでた。結果たまたま優勝して内定をもらえたのでこうやって笑っているけれど、実際全然笑い事じゃない。思い起こせば重要な国際大会は、ほぼほぼ風邪を引いている。
 なんやかんやしている間に、コロナの影響を受けてアメリカでのトレーニングは強制終了。鼻声と共に帰国した。ちょうどオリパラも延期になったことだし、これはもう、徹底的に直してやろうと、病院を受信した。
 そこで、とんでもない告知。
「これ、副鼻腔炎ですね。匂いわかりますか?嗅覚失うぐらい悪いですよ、手術しないとまずいですよ」
なんやそれ。鼻声なだけで、匂いは普通にわかる。
「ほう、やっぱり目が見えない分、匂いには敏感だから、こんなに鼻が悪くても嗅覚残ってるんですかね」
んなわけあるかい。もしそうなら、昔の俺、どんだけ鼻良かったんや。
 どうでもいいけど、鬼滅の刃の主人公は鼻がいいから、匂いで鬼を探すらしい。後、俺の所属する東京ガスには、かつて?今も?匂いでガス漏れを探し出す、「くんくん隊」なるものがあったらしい。鼻が良ければ、鬼退治も含め、仕事の幅も広がりそうだ。
 副鼻腔炎。鼻の内部の空洞にゴミがたまっている状態。
 「その手術って、眼球くりぬいて手術しないといけないんだよ」という脅しをかけられたこともある。痛そうではあるけど、眼球がなくなるのは実際それほど怖くない。
 なんかもう、さっきから書いてて「ほんまかいな」っていう話ばっかりなので、適当に読み流してほしい。あと、鼻が治るより、目が治った方が仕事の幅増えるってことにも今更気が付いた。

とりあえず、俺は手術が必要らしい。今後しょっちゅう風邪を引くのもいやなので、手術はする方向になった。が、述語1か月は、基本的には激しい運動は控えた方がいい。しかも手術ができるのは、先生のスケジュール的に、最速で2021年2月。そこから1か月。オリパラが延期されてはいるけど、大会半年前に1か月の休養はやりすぎだ。とはいえ、またレース当日に風邪を引くのも、それはそれでやりすぎだ。どうする。
 いろんな人に相談して。
 手術は、やめた(笑)
 どうせコロナ禍での開催、いずれにしても体調管理はいつも以上に気を遣う。ようは、風邪をひかなければいいのだ。で、パラが終わったらゆっくり手術してもらおう。それまではアレルギーの薬を飲んでやり過ごそう。
 それからまたなんやかんやあって、俺は無事に風邪をひかずにパラリンピック本番を迎え、金メダルを取った。一人緊張しててんぱっている俺に、安定のたくろう君は、

「大丈夫だ、今回は風邪引いてないから負けないよ」

と励ましてくれていた。ただ、風邪を引いていた2019年よりも、体調万全の今回の方が、タイムは遅かった。
しっかりしてくれよな、もうどうでもいいけど。
 そういう訳で、各方面へのご報告とかも一段落したので、いよいよ鼻を直すのだ。今まで「次の目標をしっかり見つけて行きたいです」とかって言ってきたけど、鼻を直すっていう、まあまあ大事な目標あったわ。
 結局、眼球はくりぬかない。鼻の穴から内視鏡を入れて、たまっているごみを掃除する。それから、軟骨をちょっとけずったりして、再発しにくい鼻の形に変えるらしい。ちなみに人間、9割の人が、基本的にはゴミがたまりやすい骨の形をしているらしいので、誰でも副鼻腔炎にはなる可能性を持っている。でも、この度俺は軟骨を削ってもらい、選ばれし1割の「鼻にゴミがたまりにくい側」に行くのだ。
最後に、粘膜の下に、アレルギー症状を引き起こしやすい、皮下脂肪のようなものがあるので、それを取る。脂肪吸引みたいなものだと理解している。
 たかが鼻と思っていたが、全身麻酔、3泊4日の入院。次回は、入院生活と手術のことを書きたいと思います。

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