台風21号で町家から逃亡!京都の状況 そして歴史に学ぶ | デザインか
今日は「災害対応のデザイン」か? 建築の構造の話、京都という土地の話。交通機関の話。雨水処理の話。なんだろ。まぁ敢えて気持ちが落ち着く前に書こうと思います。(気持ちの整理ができていない分、長文になりました。またいつか小分けに整理しなおして書こうと思います)
我が家はたしか築80年の古い町家。台風のときに家にいると、家ごとふっとびそうで気が気でないので、今日はずっと外におりました。
というか、結果的には、打ち合わせがあったから出たのですが、打ち合わせ先のビルの中にいるほうが家にいるより絶対安心だと思って出かけた、っていうのもあります。例えば、古い町家の木製建具は、立て付けも悪くなっているし、ガラスも薄いので、もう並のがたつきではありません。
というわけで、家を守らず、逃げるように外に出たわけでございます(笑)冒頭の写真は朝9時。今日は覚悟してたけど、ここまでひどくなるとは。
12時くらいには、閉店しているApple Store 京都のインテリアが人がいなくて美しくみえるわーみたいなのんきな写真を撮っておりました(笑)
ちなみにこの写真Facebookで今もいいねをたくさんいただいています。たぶん台風の被害投稿が多いので、少し癒やしをお届けできたのかもしれません。
さて、京都市内は、いわゆる生きた「コンパクトシティ」だと思っています。歩こうと思えば、今日の打ち合わせ先にも、実家へも歩いて行けます。そして、観光都市なのでタクシー台数も人口に対してかなり多いですし、さらにほぼどんなときでも運休しない最強の交通機関「京都市バス」が存在するので安心してでかけました。
今日は結局打ち合わせが本当は4つありましたが、2つは流れました、さすがに。で、1カ所目のあと、会社に寄り、2カ所目へ。がっつり頑丈な建物で台風が過ぎ去るまで打ち合わせかつ待機してました。
最初、窓際にいたのですが、お店の方から、もしガラス割れたら危ないので奥へ、といっていただいたり。結果、相当、長居させてもらったのですが、お店の方も「どちらにしても、私たちも身動き取れませんし、ごゆっくり」って言ってくださって。「ああ、おおらかで、やさしいなぁ。日本人って細かかったり、融通きかないことも多いけど、こういう天災のときの、どんと構えた感はやっぱりすごいな」と思いました。(もちろん、人によるがw)
あと、そもそも地震に対応するために、特に現状の建築基準法に対応した建築は、日常的にいうとオーバースペックな構造強度を持っていることもあり、そのあたりの余裕も感じられるということもあります。いやまじに安心して嵐を眺めてられましたから。
いったん市バスの話に戻ります。最強市バスっていってるのは、例えば冬の大雪でもほぼ運休はありません。タクシーはスタッドレスをはいていない車は出なくなるので一気に減りますが、バスはチェーンで対応してます。京都の地形は北に向かってかなり高くなりますので、主要な循環系統バスが回る北側では雪が積もっていて、南は積もってないとか普通にあるので、そういうのに強いのですよね。今日はその最強の市バスも13時から17時くらいまで運休したのです。これはただ事ではない(笑)しかし、あの風の強さを見ていると横転の危険性も十分あるのでとても賢明な判断だったと思います。危機管理が今日はいろいろ成功してますよね。
ネットの投稿をまとめた下の動画(無許可だと思いますが)が、一番極端な被害をうまく表していると思うので、張っておきます。
台風がやんだら、ただいま絶賛留学中の弘道館へ状況確認へ。日本家屋なので心配してましたが、軽微な被害のみでした。直すところはありますがまぁ大丈夫です。で、庭。毎日、弘道館の方々が掃除して、落ち葉一つなくしておられるというのに、こんな状況ですわ。はい、留学生として明日からがんばって掃除しなきゃ…
で、夜もふけた烏丸今出川。雨水系統の下水のマンホールから水があふれ出し、このような幻想的な風景へ。千と千尋のラストの電車かよ!です。場所によってはふくらはぎくらいまでつかりましたので20cmは浸水してました。
範囲としては直径200mくらいの狭い範囲ではありましたが、ほかの箇所でも同じようなことがあったとのこと。雨水の排水ラインが滞るところであふれ出ていたのでしょう。高校時代に実家前のマンホールから噴水のように噴き出して床下浸水した経験があるので、そんなに焦りはしませんでしたが、まぁカオスな状態です。こういうとき、もし雨水升の蓋が浮いてしまっていると、ドブンと落ちてしまう可能性があるので、少々危ない状況ではあります。
しかし、そこに颯爽と現れた、最強・京都市バス!(マルシン飯店広告入りw)ほんと頼もしいです。乗客は少ないのに、走らせてくれてほんと助かる。ありがとう。タクシーはかなり減ってたので、バスが来なければ、歩いて帰るかと思っておりました。(ここからだと30分くらいで帰れる。足はドボドボやけど)
そして、自宅の町家が、三匹の子豚の木の家のように吹き飛ばされてないかと気が気でないまま、家にたどり着きました(誇張してますよw)で、被害について。ここ最近台風が多かったのですでにいろいろ壊れかけていた部分があったので、無事ではないのは覚悟してたのですが。
まず玄関が軽く浸水。すだれかけが半壊。庭の木塀が一部倒壊。トイレについている障子が風で吹き飛んでいる。まぁこのくらいで済みました。
玄関が浸水っていうのも驚かれるかもしれませんが、元々は庭だったところに屋根をかけている構造なので、雨樋(トユ)の設計にまぁまぁ無理があるので、トユがあふれたらあっさり浸水です。
さらにトイレの障子っていうのは、障子だけなんです。わかります?ガラスの建具はありません。外に直結して、木と紙だけね。それが枠ごと吹っ飛んでました、はい。
心配だった木製建具とガラスは無事。町を歩いているといくつかの家でガラスが割れていたので、風圧だけでも割れそうな薄さなので本気で心配してましたが、大丈夫でした。ガラスと建具の隙間も大きく、普段からすきま風が入ってくるので、風圧はそこで逃げるんだな、と納得。なんて大らかな設計?いや施工?まぁ両方ですね(笑)
ちなみに、家のネットが死亡してます。古い町家で、一番実害あるのって、おい、そこかよ!(笑)光ファイバー側の問題か、ルーターが停電の過電流で壊れたか明日検証しますが、このnoteはソフトバンク iPhoneのテザリングで投稿してます。広域無線ネットワーク環境って本当に偉大。有線と無線、両方あると、どっちかが生きててくれる可能性が増すわけで、安心できますね。これでFacebook/twitter/Yahoo天気など情報が途切れなくて済んでますし。
しかし、今回の関西の被害は相当なものです。関空の浸水と橋の破損、あと各地での屋根がふっとぶとか、京都駅のガラスアトリウムに何かが当たってガラスが割れて降ってきて、下にいた人、危機一髪で避ける映像とかいろいろ見ました。
そして京都でも数々の文化財の甚大な被害も上がってきています。京都の立派な建築は、過去にも災害でたくさん壊れてきました。のちに再建されたもの、部分だけ別の場所に移築されたもの、話や絵巻だけ残ったものなど、その結果も様々です。
でもこの国は、ずっと天災に襲われながら2000年以上やってきているのです。ずっと付き合ってきた。そんな激しい気候の土地で、三匹の子豚の一番しょぼい扱いの木の家。厳密にいえば「木と土と竹と紙」でできた家に住んで、ずっとそんな環境に付き合ってきた。ご先祖様、ほんと偉い。
結局、この国は、ずっと「仮設」なんです。永遠に仮設。命というのはそういうもんだということをよくわかっている。法隆寺が1300年残っているのなんて奇跡の奇跡のまた奇跡。なんでなん?ぜんぜんわからん。偶然と努力がうまく合わさっての奇跡としかいいようがない。実は1200年の都の京都に1000年超える建築なんてないんです。千本釈迦堂が700年だそうですが、200〜300年くらいのが多いと思います(改めて調べてないけど、経験上です。気になるのでまた文化財リスト調べます)
とはいえ、木造が脆いわけではないんです。確かに揺れるし、部分的に壊れたりもするけれど、地震でも台風でも致命的な倒壊はなかなかおきない。むしろ京都で過去失われた理由の大半は火災でしょう。今回、風で倒壊してしまった平野神社の事例は珍しいかもしれません(これも調べてませんけど、わたしはあまり聞いたことがなかった)
2011年、東日本大震災の数ヶ月後、どうしても現地を見ておきたかったので、石巻に行きました。この日のこと、この日の写真、まだ一度も文章に起こしてないんです。Facebookにも投稿してない。どうしていいか今でもわかっていない。やっぱり、津波に比べれば、今回の関西の被害なんて大したことないかもしれません。
でも、その津波も、昔は家を建てなかったエリアに家を建て始めたからこそ人的被害が拡大したり、地震や土砂災害で被災していまうことにも同じ理由があったりもします。この件は「地名に注目して土地を見る」という記事がいくつかネットで見られたりします。また、先日の関西での地震も、慶弔伏見地震(秀吉の大仏と大仏殿が開眼前に倒壊した地震)との関連性も指摘されていたりもします。
台風は、気温上昇でパワーが増しているのであまり参考にはならないかもしれないけど、今回も事前から、室戸台風や伊勢湾台風と比較もされていたりするし。日本列島と天災は切っても切り離せないので、特に津波、水害、土砂災害、地震は、歴史に学ぶことが重要なように思います。
「この国は永遠に仮設である」
今日、私が言ったのか、打ち合わせ相手が言われたか忘れちゃった。でも今日言った言葉です。これって、自然環境が信仰に大きな影響を及ぼすことと関連すると思っています。日本では、天災と付き合ってきたからこそ、森羅万象、自然のすべてに神が宿るという信仰が生まれたのであり、龍も洪水や津波の比喩だとも言われています。ゴジラに象徴されるような怪獣を生み出した思想もその延長にあるのでしょう。特にシン・ゴジラは東日本大震災を踏まえた上での設定・ストーリーですし。
また中東・アフリカなどのイスラム教のインシュ・アラーも、砂嵐ですべてが破壊されることがしょっちゅうあることからすべては神の思し召しである(まぁ平たく言うと諦める、というか、ありのままを受け入れるという理解でとりあえずよいかと)という考え方が生まれたという説があります。
そして、日本の「仮設」の象徴が「伊勢神宮の式年遷宮」だと思います。常に建て替えるのです。常に新しいのです。常に生まれ変わるのです。つまり「永遠に仮設」なのです。
むしろ、仮設であるということは、永遠の命ということを言っているのかもしれません。命は借り物であるとか、肉体は魂の容れ物にすぎないとか。西洋科学の「利己的な遺伝子」も、同じような考え方でしょう。
今晩の時点では関西空港に3000人が足止めされているといいます。関空は橋自体はあるし、もう気候も安定してきているので緊急事態があれば船もヘリも、場合によっては橋も緊急用車両なら使えると思いますので、急病人などの対応は可能と信じています。
また仕事関係で海外にいっている方が数日後に戻ってこられる予定なのですが関空が数日で復旧できるのかもわかりません。帰ってきてもらえないとまぁまぁ困るのですが… あと出国できないよーと嘆いておられるFacebookでの投稿も多数拝見します。
伊丹空港や神戸空港への振り替えも可能なのでしょうか。ハイジャックなどの非常事態であれば、よく映画でほかの空港へふるシーンがありますが、今回のような状況で、明日以降、各空港へ回せるのか。関空が止まるというのは、関西にはなかなかのインパクトなのだなとあらためて感じています。航空法や空港自体のキャパ・規制などハードル多そうですが、ここでうまく伊丹と神戸に振り替えが実現できるなら、空港3つ作っといてよかったね、ってなると思うので、ここは交通インフラ関係者のみなさま、がんばりどころだと思います。最善を尽くそうと考えておられる方がいらっしゃると思いますので、明日以降の対策に期待したいと思います。
そして建築的には、海上空港の浸水という事態(映像で見る限り相当ひどいと思います)に対して、どのようにどのくらいで復旧するのか、ということにも注目しています。ポンプだけでも相当数ないと追いつかないはず。ていうかポンプでいけるんか?っていうくらいの水量。こちらも現場ではものすごく大変なことが起こっていると思います。だからといって、私が駆けつけて手伝うということはできないわけですが、心から応援し、見守りたいと思います。
そして、今回も死者が出てしまいました。知っている方ではありませんが、謹んでご冥福をお祈りします。
とはいえ、やはり、また「明日死んでもおかしくない」ということがわかった日でもありました。毎日「明日死んでも後悔しないように」と思って生きるようにはしています。でもこういう日には、改めてそういうことを考えてしまいます。
でも、それって災害で死ぬとは限らない。ほんとにつまづいて転んで、打ち所が悪くて死んじゃうかもしれないわけです。
そういう生き方というか、命の尊さが、こないだ先輩・友人たちのおすすめでみた映画「君の膵臓をたべたい」でも描かれていました。泣きました。そして「今を生きる」以外に、やることはないのだと、また確認させてもらいました。
今日の、大きな台風がいったん過ぎ去り、明日は一日忙しいのでたぶん家の片付けもできないので、そんなちょっとすっきりしない状況のなかで、まずは書き殴ってみました。
公開できるレベルのものではない文章ですね。ここから切り分けて、何テーマかに切り分けて、また書き直すと思います。でも、時には、熱い状態のままの文章も良いだろうと。今日は書き殴ったまま公開しようと思います。
最後に、台風通過直後なので、不謹慎だと捉えられたり、不快だと捉えられる方もおられるかもしれません。そうとられたら申し訳ありません。そういう意図はありませんが、そういう可能性はあるなと思いましてお伝えしておきます(災害での受け取り方は人それぞれということは理解しております。)ご容赦ください。