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【短篇】深夜のタクシー
都心の繁華なところで会社の飲み会があり、二次会、三次会とあっという間に時は流れて、その帰り。近場の者は終電に間に合うが、他は方向別にタクシーに分乗する。
高層ビル群を抜けて、街道を郊外へと向かうタクシーから客が一人減り、二人減り、ようやく一人切りになった二宮は、大きくため息をついた。前を走るタクシーのテールランプが、酔眼にぼんやり滲んでいる。心底疲れていた。仕事に脳が疲れ、人付き合いに心が疲
【短編】ガード下の女
飲食店のひしめくガード下に、早朝にオープンする呑み屋が一軒あった。午前四時から正午ぐらいまでの営業で、こちらが前を通る(というのは呑み歩く)時間帯にはいつもシャッターを降ろしているから、人から教えられるまで気がつかなかった。飲食業など夜勤明けに足を運んでくる客で賑わうという。一度くらいは行ってみたいと思いつつ、長い間縁のない店であったけれど、転職して夜勤になってみると、仕事帰りの早朝にふらっと立
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