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2023年3月の記事一覧

連載小説「超獣ギガ(仮)」#12

連載小説「超獣ギガ(仮)」#12

第十二話「初陣」

 破裂音。もしくはそれによく似た破壊音。質量を持つ物体が破壊される、弾ける音。埠頭にそれが鳴り落ちた。質量、重量を伴う音塊が氷の溶け始めたアスファルトに跳ねて、そして消えた。
 いまだ戦闘の終わらない、東京、晴海埠頭。間もなく午前八時。十二月二十五日も八時間を刻んだ、午前。進化した人類と、正統進化外のモンスター、通称、超獣ギガの交戦が続いていた。
 
 対超獣ギガ(仮)を目的と

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【写真】#slowlight with early summer and light.

【写真】#slowlight with early summer and light.


 育った家の近くに、JRの電車基地があった。その敷地内に廃線が放置されていた。廃線沿いで遊んでいると、作業用の黄色いディーゼルが警報を鳴らしながら、僕たちを追い払った。
 やがて、その区画は民間業者が管理するようになって、有刺鉄線を張り巡らせて立入が禁止された。僕たちは遊び場を奪われた。
 けれど、そのまま、その場所を諦めはしなかった。陸橋を渡り、対岸の水路からその区画に侵入することを思いついた

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「薄紅灯歌」

「薄紅灯歌」

薄紅纏う儚き花よ、いまなお色を重ね合い、
酔いに集いし祭囃しや酔いしぐれ、
散らす間際にあってなお、四季を東へ導ける、

物見の衆は我が身たらんと、艶姿を奪い合う、
稚拙に過ぎぬと無言に笑う、宴も醒めしは恥を知る、
散り際にこそ集まる灯火、四季よ凪ぐまま移り気なまま、

薄氷溶かす薄紅よ、さらなる深みをその身に纏い、
一夜限りよ後には馳せず、その雅やかなる艶姿、
今宵も歌に舞いに酔う、赤ら顔を静か

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【写真】get loud,our spirit,with #slowlight.

【写真】get loud,our spirit,with #slowlight.

#slowlight

 春先というのは、例年どおり、今年もやっぱり気分が乗らない。
 熱狂の早春が走り抜けてしまうと(WBC)、なんだかさ、抜け殻みたいになっちまった。そんなこと言ってる場合じゃないんだけど。

 思えば一昨年の夏。
 知り合いすらいない、ガソリンスタンドの場所も知らない、見慣れたチェーンのスーパーさえない、高知に移住してきたとき。
 心細かった。
 しかし、あのときはオリンピッ

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「星を見る犬」

「星を見る犬」

野良は野にて夢を見ていた、
垂れ穂の陰の農道脇の側溝だったら追う声や、
退屈凌ぎや日々にて受ける苛立ちついでに振り上げられる、
堅い爪先、木の踵、彼を見下ろすあぶくの浮く水晶体から逃げられた、

彼は星のために夜を待つ、
瞼であれば其れはいつも輝けど、永遠に眠る気にはなれない、
12月の夜の空を想うとき、指笛吹いてた細い背中が揺れる小刻み、
今や星は冷たく微か、穴の開いたソファで肋骨の凹凸確かめあ

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【雑記】映画にまつわる思い出。

【雑記】映画にまつわる思い出。

#映画にまつわる思い出

 というお題を見つけまして。なんだか、懐かしいなWOWOW。すみません、過去のことのように言ってますけど、以前、加入していたことがあるんです。フジロック・フェスティバルを観たいがために加入していました。
 ミッシェルガンエレファントの解散以降は(ずいぶん古い話ですけど)、ロックフェスへの熱も冷めてしまって。近年では聴く音楽も変化して、スピッツ。幾田りらさん。それから山下達

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【おさらい】超獣ギガ(仮)【好評連載中】

【おさらい】超獣ギガ(仮)【好評連載中】

 さて。今回は、回を増すごとにご好評いただいています(ありがとうございます)、#超音速スーパーバトル #連載小説 「超獣ギガ(仮)」のここまでをおさらいしながら、今後の展望などについて触れておこうと思います。
 何卒、お付き合いくださいませ。

 物語は昭和99年。架空の日本。クリスマスの朝。東京、晴海埠頭に謎の巨大生命体があらわれます。「あらかじめ予期された災厄」とありますように、そのモンスター

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「雨は君を横から殴る」

「雨は君を横から殴る」

雨が君を横から殴る、
春の夕刻、隠れた街路樹、天は雷伴って、
そのさま、まるで機関銃、撃たれた猫が萎びたように痩せ細り、
俯き二歩先くらいしか見えぬ、視線の先に逃げ場を探す、
雨はときに喚き散らして戸惑わせる、

夜明けに抱いた希望は午前の終わりにゃ向かい風に煽られて、
黄昏れ刻には琥珀で喉を焼きつつ紛いの夢を誰かに語る、
其れからいつものようにまた、錆びた鉄のにおいが残る、檸檬を齧り吸い出して、

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【WBC】【世界一】【野球日本代表】【侍ジャパン】プレイボール

【WBC】【世界一】【野球日本代表】【侍ジャパン】プレイボール

(画像はMLB JAPANからお借りしました)
#野球が好き #WBC

 野球、その世界一を決める、WBCという幸福な体験。野球という競技の面白さと、その怖さも思い知ることになった祭典。
 子供のときから大好きだった。陸上競技や水泳、サッカーなど、他の競技をしていたころもあったけれど、僕にとって、野球だけが特別に難しく、面白い競技として、絶対的に「好き」でした。子供のときから、ずっと変わらずに

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【写真】kafka (is not raven)and your #slowlight.

【写真】kafka (is not raven)and your #slowlight.

#slowlight

 僕にとって、もっともかっこいいのは野球選手だった。ロック・ミュージシャンや、映画監督や、漫画家や、小説家ではなく、野球選手が一番だった。
 いま、その野球選手が、この国を代表する選手たちが世界の頂点に立つチャンスにいる。
 いつだって、野球選手が最高にかっこいい。そうであって欲しい。
 世界一の英雄になってくれ、野球日本代表チーム、侍ジャパン。

#うちの中野がすみま

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「ラーズに会いに」

「ラーズに会いに」

夏を間近な日照りのあまりの激しさに、
昨日今日明日、目をしかめるだけの無力よ、
喪失しながら狼狽え続けるやわな記憶が、
いつか見た気がする草原へ、
走り続けた犬と羊と白いシャツを繋ぎ止めては止まらせようと掴む影、
焼け野をうろつく肋の浮いた野良犬たちは、逃げ場に屋根に十字を保つ荒屋へと軽い軽い躰で這うのさ、
サイレン鳴ったら残念だけれど焼夷弾が落ちてくるから、この地の生き物すべて灰になるまで焼かれ

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【写真】it's a flash,#slowlight

【写真】it's a flash,#slowlight

#slowlight

(前回のつづき)
 座席と座席が離れていない、講堂での授業だった。机の下では、その女の子に引き寄せられるまま、手を握られてしまっていた。指が絡んだり、両手で握られたり、くんずほぐれず感さえあった。
 ドキドキしていた。断る理由もなかった。
 少しずつ、距離は縮む。絡められていた指は解け、腕そのものをがっしりと捉えられてしまう。巻きつくように体を寄せられ、二の腕や、肘に、その

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#11

連載小説「超獣ギガ(仮)」#11

第十一話「神技」

 見上げると透き通る冬の青。北から鳴る風はその音色だけで耳たぶを揺らすには至らず、しかし、正面の、視界の先の南、東京湾からの潮風が凍える体にさらなる試練を突きつけていた。岸壁に立ち向かった冬の波は縦に弾けて潰れて、止まることなく落ちる。発破によく似た音塊が飽くことなく繰り返されていた。

 東京、晴海埠頭。
 招かれざる災厄、地球の進化外生命体とされている、超大型の類人猿、もし

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短編小説「国旗線上の蟻」#12

短編小説「国旗線上の蟻」#12

 君が放った銃弾によって、ワン・イーゼンは絶命した。小口径のピストルだった、至近距離からの頭部への狙撃以外に方法はなかった。そもそもがそのつもりだった。君はそのタイミングだけを狙っていたのだ。
 額から後頭部へと貫通した弾はアスファルトに跳ね、弧を描いて水面へと消えた。そしてそこには一人の男の死だけが残されていた。
 戦争の仕掛け人として、武器商人として暗躍した男はその生涯の凄絶さに比べ、呆気なく

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