創作大賞にSF、連作短編、ショートショートをエントリーさせていただいて、さて次は、と考えたのは公募。noteはお休みにして、公募向けに小説を書くことにしました。 ログインもしませんので、しばらく不在になります。それでは、皆さん、ご機嫌よう。ビリーでした。またね。
「雷鳴」 埃を被った瓶詰めの葡萄酒を、 吐き出しながら飲んだ日のこと、 噛みつき合いの無駄話、浅薄なる戯言や、 走る羊の数え歌、滑らかなる肌を探した、 忘れようとも思えずに、 喉の奥で転がしている、 狼狽えながら過ぎたあの日を、
「遠雷」 あまりに僕は無力に過ぎず、 呆けたように見上げる天、 気晴らし程度の軽い雨やら遠雷と、 手向けた花なら暇な鴉が持ち去った、 慈しみを持ち寄って、 どうにか優しくあろうとするも、 横目に欠伸の猫がゆく、
「荒野」 独りで在るということに、 慣れずに生きることはできない、 雨のなか、風の隙間を縫うよう走った、 子供はもうここにはいない、 激しさも、静けさも、 諦めすらも背負う他ない、 私たちはあまりに独り、 心を荒野に置くしかない、
「雨晒し」 古い猫は雨を待たずに空を見る、 風は路を撫でて泣いてた、 忘れたいことだけ憶えてしまう、 そのとき君は、そのとき僕は、 昨日よりもあまりに儚い、 風に揺られる砂の粒、 それなのに、 昨日今日明日、祈り続けることをやめない、
「残響」 淋しさに慣れるほど、僕らは歳を取ったんだろう、 痛みを忘れたふりするくらい、 記憶を辿れど知った日のこと思い出せない、 幸福さという幻を、呪いにして背を撫でる、 海鳥鳴いて潮風切った、 初夏の日は、残響みたいに過ぎてゆく、 生きゆく四季は絹雨みたいに過ぎてゆく、