【写真】届くだろう、やがて訪れる光が。
学生のころ、西村良太という友達がいた。
ラーメン屋のまかないで食い繋いでいる良太の好物は吉野家の牛丼だった。
良太は毎日のように、ときには三食、牛丼を胃に送り込んでいた。大量に紅しょうがを載せて紅しょうが丼にし、それを食べ終わると大量の七味を投入して、甘辛い牛丼にするのだ。
「よくそんなに食えるなあ」
誰もが呆れた顔で良太に声をかけていた。
「あっさりしとるからね」
良太は平然と言い放った。牛丼が、あっさりしていて食べやすいのだと言う。
「どんな味覚なんや」
誰もが不思議に思った。
「とんこつラーメンに比べたら、牛丼はあっさりしてるやん」
「なんで、とんこつが味の基準やねん」
誰もが良太の発言を笑った。
「いや、だって、とんこつは地元の味じゃけ」
……うん? 地元?
「とんこつは博多ちゃうの。福岡やろ」
「良太は山口県やろ」
新たな笑いの火がつく。
「関門海峡渡ったら着くやん。地元と同じじゃ」
海峡を渡らないと着かないくらい遠いって思わないのだろうか。
なんて、いい加減なんだろう。
なんて、ざっくりと生きているのだろう。
良太はほんとうにとんでもない奴だった。天才には敵わないと、僕たちは首を振るしか術がなかったのだ。
スピッツの新アルバム、「ひみつスタジオ」が素晴らしくて。
これはもう、ベテランバンドの真骨頂なのでしょう。力が入っていない。いつも通り、いつものスピッツが鳴らされているのに、新しい音楽がある。疾走感のあるロックもあれば、じっくりと聴かせる歌もある。
ドラッグストアで買い物をしていたとき、YOASOBIが、米津玄師さんが、yamaさん(ガンダムで覚えてたぜ)が、あのちゃんが、有線で流れていて。そこにスピッツ。大物。大物なのに、まったく力が入っていない、いつものスピッツ。
「軽みに至る」なんて言うけれど、その極地かもしれない。力の入れ方より、抜き方。人目を憚らず、思わずガッツポーズ。
大人ってかっこいいな。こんな大人になりたいな。なんて、思う、とっくに大人のビリーでした。それでは、またね。
p.s.最近。「新しい学校のリーダーズ」と「あのちゃん」がとてもお気に入りです。
新しい学校……は、BiSHの後の特殊アイドル枠になりそうですね。
あのちゃんは、やっぱり可愛い。
photograph and words by billy.
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