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『わたし定時で帰ります。』第7話 人をコントロールすること、家族と本音で向き合うこと。

あらすじ(ネタバレ有り)

婚約者の巧を連れてやってきた上海飯店で、種田もやってくる。種田が独立の誘いを断ったのは、結衣が理由で、まだ気があるのかと巧が尋ねると、「好きですよ」と答える種田。しかし、酔っていてすぐに倒れるが、気まずさは残った。

そんな時、父から「母さんが、家出した」という連絡があった。仕事人間だった父は、休日も会社の付き合いで出かけることが多く、その日も付き合いで、泊まりがけでゴルフに行っていた。しかし、その日は母さんの還暦の誕生日だったのに、すっぽかしたことで、怒って出て行ってしまったのだった。
東山は実家に戻ると、あたふたしている父の携帯から、謝りのメールをする。すると、「結衣が結婚したら離婚しようと思っていました。離婚してください」と返事がきて、父は冷静さを失ってしまう。翌日も、父から「母さんから連絡ないか?」という連絡が連打で送られてくるのだった。

そして、仕事では部長の福永が、直々に取ってきた案件を東山が担当することになるが、その見積もりは、ありえない納期と予算設定で、残業を前提とし、大赤字になるようなめちゃくちゃなもので、全員反対しているのに、福永は「これでやってくれ」と強引に持っていく。種田が、概算の見積もりということで、取引相手と交渉しようとまとめて、取引先との会議に臨む。

ところが、取引先は、福永がお世話になった会社で、既に稟議も通ってしまっていた。種田は福永を擁護するが、以前の会社でも過労で倒れるくらい働かされたのに、なぜ擁護するのかを聞くと、「大学で肩壊してプロ入りを諦めた俺を拾ってくれた。仕事も一から教えてくれた。」その答えに「それだけ?それだけの理由で過労で倒れるまで働いたの?」と呆れる。

父からは母のことや家のことで何度も連絡が入り、仕事のペースを乱される東山。それは、定時に気付かないほどで、その様子のおかしさに、賤ケ岳と三谷が相談に乗る。いつもの中華料理で、東山の家庭の話から、家事の分担の話になり、世の男性にとっては耳の痛い話になる。

お土産を持って実家に行くと、父からは小言ばかり。巧より種田の方が気に入っていた父は、すぐにその名前を引き合いに出して、結衣を攻めた。仕事や家事の価値観に対しても「それはお前の価値観だろ?自分の価値観を人に押し付けるな。」と言うと、結衣も言い返す。「何なの!?晃太郎晃太郎って。うるさいよ!」そう言うと親子ゲンカの言い合いになってしまう。結衣は娘として、

「今まで黙ってたけど、今までどれだけ我慢してきたと思ってるの?毎日仕事ばっかりで、休みも取らない、夜も寝ない、家族旅行も途中で帰ったり。社会人になってお父さんの気持ちがわかると思ったけど全然わかんない。私はお父さんみたいな働き方はしない。お父さんみたいな人とは絶対結婚しない!」

娘の本音に何も言い返せない父を置いて、結衣は帰ってしまう。次の日から、父から連絡は来なくなる。

福永案件は、取引相手に迷惑かかからないよう、どうせ通らない自社審査に出して、相手の面子を立てよう、という話になる。種田の進言と聞き、東山も審査担当が元上司でよく知っていた為、大赤字の案件が通るわけないと同意したが、種田はそのことを知らず、見積もりを作り直すことになる。そこで、実家のお隣さんから電話が入り、家から煙が出ていたから消防車を呼んだとの連絡が入る。火事ではなかったが、家事をしたことがない父が料理を失敗しただけだった。

子供の頃からの不満をぶつけてしまい、会い辛い東山を、賤ケ岳と三谷が一緒に実家に連れていく。家は散乱し、焦げたハンバーグ?がそのままになっていた。それが家事疑惑の原因だった。「家事は難しいね」と言う父。
食事をしながら、同僚に娘のことを聞く。
「結衣は、毎日定時で帰る、有給を取る、日本の会社員の美徳が何一つない。皆さんに迷惑をかけてないですか?」
しかし、結衣のことを認めている二人の話を聞き、安心する。
それから二人が帰り、父と娘、二人になると、片付けを手伝おうとする父。冷静に話し合う親子。
「好きで帰らなかったわけじゃない。転職なんかできる時代じゃなく、定年まで耐えなきゃいけなかった。仕事以外の付き合いも、簡単には断れなかった。」
「それでも、私は無理して欲しくなかった。この前はごめんね、言い過ぎた。」
「今は時代が違うんだな。巧くんのような人の方が、合ってるんだろうな。」
と巧を認める父。
「結衣が好きなハンバーグだって、上手に作ってくれるだろうし。」
父がハンバーグを作ったのは、娘の為だった。
そこに、母親が帰ってくる。温泉に浸ってたら、どうでもよくなったと。
本音でぶつかったことで、家族の絆はまた深まったのだった。

会社では、東山に家事は大丈夫だったかと心配するが、「東山さん、あんまり自分のこと話さないから。」と言われてしまう。

そして福永は、会社の上層部と会い、今回の福永案件について根回しをしていた。


種田と福永の関係はジョーカーゲーム

仕事ができる種田が、なぜ福永にいいように使われてしまうのか。それは、怪我でプロ入りを諦めて傷心の時に、仕事に誘い、仕事を教えたからです。人は、弱っている時に、詐欺にあったり、心を奪われてしまうものです。種田にとってはタイミング良く(悪く?)、福永に拾われたことで、恩義を感じ、前の会社でも倒れるまで働き、今また一緒に働いているのですが、今は、会社を辞めたと言うことが、福永を裏切ってしまったという罪悪感が芽生え、強くも言えなくなっています。

これはまさに詐欺の手口であったり、宗教のやり口だったりします。怪我は偶発的なものではありますが、詐欺やジョーカーゲームは、ターゲットが困る状況を作り出し、手を差し伸べて心をグリップします。好きな娘を落とすために、怖い人に襲わせて、自分が助けるというアレです(笑)。特に日本人は、「一宿一飯の恩」というものが強いので、そういう状況になれば、簡単に手玉にとることができるでしょう。

困った状況で助けてくれた、都合よく自分の望みを叶えてくれた相手には、「地獄に仏」というように、当然恩を感じることと思いますが、願いは叶わないほうがいいという創作ことわざにあるように、下手に叶ってしまったことで、恩や罪悪感を抱き、代償として、またいいように使われてしまうのです。
恩返しは大事ですが、気をつけないとその恩を利用する人もいることを忘れないようにしたいですね。

言葉はブーメラン

親子の会話で、父が、結衣に対し、「自分の価値観を押し付けるな!」と言いますが、それはまさに自分自身のことでもあり、この言葉で結衣もブチ切れて喧嘩に発展しますが、「言葉はブーメラン」として返ってきます。また、第6話のコラムで、東山が種田に言った「自分の気持ちを言わないから、皆話しかけづらいんですよ」という言葉が、そのまま自分に返ってきます。東山も、自分が大変な時でも、心配かけないように、何も言わなかったことで、助けることもできません。こうやって、言葉はブーメランとして返ってくるんですね。

気をつけないと、人を傷つける言葉が、自分に返ってくることがあります。逆に言えば、人を幸せにする言葉も、ブーメランとして返ってくるということも言えます。だからって、お世辞とか過剰に褒めてもよくはないと思いますが、本心であれば、言葉にすれば、相手を経由して、または思いもよらないところから返ってくることもあるかもしれませんね。

本音で向き合うこと

お母さんが家出したことで、父に余裕がなくなり、娘に対して言いたい放題言いました。その結果、大人になった娘は、父以上に強く言い返せるようになります。その時に、子供の頃から抑え込んでいた思いを吐き出してしまうのですが、喧嘩にはなっても、本音を晒すということは、相手に自分の本心を伝えることはもちろん、自分自身が自分の気持ちと向き合うことでもあります。

親子関係の問題は、とても根深いものがあります。簡単に解決するものではなく、向き合わなければ、一生解決することがなかったりもします。家族は、距離が近いからこそ、難しいものがあります。時代も変わるし、価値観も変わる中で、親は古い価値観で子供と接しますが、話が合わなくて当然です。だからこそ、頭ごなしで話したり、自分の価値観を押し付けるのではなく、本音でぶつからないと、理解し合うことはできないでしょう。それには勇気がいることだと思いますが、そういうきっかけがあると思います。そういう時には、目を逸らさずにしっかりと向き合えれば、お互いをより理解しあって、絆は深まるはずです。それで深まらなかったら、それは仕方ありませんね(^^;


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