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「妻が、何て言う女だと呼ばれるとき」

  仕事をせっせっ!としていると、妻が請求書をお山にして、今月これだけ支払いがあるの、住宅ローンや生命保険の支払い、クレジットカードのことを考えると、200万円じゃ足らないのよ!何とかしてよ、と乱暴な口調で言う。
 わたしは、妻の乱暴な言い方の意見を遮り、請求書のお山をびりびりに破ってごみ箱に捨てた!
 これで、もう、文句はないだろう。今月、支払いはないんだよ、といらいらしながら言った。
 
月に普通のサラリーマンが、200万円稼いでいるであろうか?無理だろう。わたしは、自称・自由業だが、いろいろな仕事をこなし、何とか200万円もかき集めているだろう。もう、これ以上は無理!
 
 毎日、お金、お金と朝から晩まで、つまり、起きた時から寝た時まで言われると、労働意欲は落ち、逆にうんざりする。もう、ノイローゼだ!
 200万円で足らないのなら、銀行から借り入れをお願いするしかないが、銀行の部長が我が家に来て言っていたではないか。
 先生のこころは金銭感覚がおかしいです、普通の家は30万円でやりくりしているんですよ、銀行の方で財産管理を致しましょうか?と。
 わたしが、そこまで言うならば、お宅の銀行とは取引をやめます。他の銀行へ引っ越します。お宅だって商売だろう。何だかんだ言いながら、うちが、ぴいぴい言っているのに、陰では喜んで、儲けたな!と言っている商人風情だろう、うちは士族だったし、貴族院議員になったこともある。お宅とは品格が違うので考え方も違う、と叱りつけ、何とか帰らせたことがある。  もう、銀行から借り入れを申し込むなら、恥を忍んで、時代劇で言うなら農民が、悪代官に、お代官様と言って、直訴するようなものだ。

 
 妻と結婚が決まったとき、わたしの両親は反対しなかったが、母が、ぽつりと、あの人は、お金目当てよ、あなたのことが好きじゃないの、あなたのこと何て考えていないのよ、気をつけなさい、わたしの結婚ではありませんから、何も言いませんが、と言われた。
 今となると当たっているとしか思えない。
 
 わたしと妻は、夫婦仲がすごく悪く、喧嘩ばかりであった。離婚という言葉さえ何回も出た。実際、役所に離婚届を二人でもっていったことがある。
 その時、わたしが、印を押すのを忘れていて、それで離婚はできなかった。
 妻と唯一幸せだな、と思ったのは、二人でフランスのパリを10日間旅をした時だった。今思うと、幸せだなと感じられたのは、旅行期間中、妻がお金の話をしなくなったからだ。
 それほど、妻はお金にうるさい。
 わたしが何か購入すると、仕事に必要なものであってもぴりぴりして、あなたばっかり!という。
 講演料金は前借をしてあるので、今月は入ってこない。
 妻が意見を興奮して言い続けている間、わたしは、心の中で、密かに、離婚、離婚!と叫び耐え抜いた。
 足らないなら、今月は絶対払わなくてはいけないものを優先し、後は、申し訳ないが来月にまわしてもらうしかない、と言った。
 妻は、何という女なんだ!!

悪妻


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