【連載】岩波文庫で読む「感染症」|山本貴光

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第5回|環境のなかで人間と病をみる ヒポクラテス『古い医術について 他八篇』|山本貴光

 トゥキュディデスと同じく紀元前五世紀から紀元前四世紀ころ、古代ギリシアにはヒポクラテスという医者がいた。現在でも「ヒポクラテスの誓い」とか「人生は短く、技術は長い」といった言葉で知られているかもしれない。

 これは伝ヒポクラテス、つまり本人がそう書いたかどうかは定かではないけれど、そう伝えられてきたという言葉だった。ときどき「人生は短く、芸術は長い」という形で記されることもある。技術と芸術では

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第4回|憶測から遠く離れて トゥキュディデス『戦史』|山本貴光

 いまでこそ、疫病の原因はウイルスや細菌の感染だと分かっているものの、そうした仕組みが気づかれる以前はどうだったのか。人びとは、疫病をどのように捉えていたのだろうか。古い例として、紀元前5世紀のギリシアを見てみよう。

 古代ギリシアの歴史家、トゥキュディデス(前460ころ-前400ころ)の『戦史』に恰好の記述がある(★1)。この歴史書は、トゥキュディデスが同時代の出来事として目にしたペロポネソス

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第3回|現実がゆらぐとき、物語は世界を照らす灯となる ボッカチオ『デカメロン』|山本貴光

 日頃はとかく「役に立たない」と無理解にさらされることの多い文芸だが、このたびの新型コロナウイルス感染症パンデミック下では、過去の物語があらためて思い出され、読まれている。ボッカチオの『デカメロン』はそのひとつだ。

 例えば、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』 による「デカメロン・プロジェクト」 をご存じだろうか。2020年の7月に公開されたものだ。

 同プロジェクトのウェブページを訪れ

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第2回|パンデミック・シミュレーター カレル・チャペック『白い病』|山本貴光

 過去に書かれた小説や戯曲に触れて、まったく他人事とは思えないことがある。カレル・チャペックの『白い病』(★1)は、つい最近、そうした物語になった例である。

★1――カレル・チャペック『白い病』(阿部賢一訳、岩波文庫赤774-3、2020)

 カレル・チャペック(1890-1938)といえば、チェコの作家にしてジャーナリスト、あるいは批評家であり童話作家でもあった多彩な人。日本でも『ロボット(

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【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第1回|古典の小宇宙に問いかける|山本貴光

 なにかのテーマについて考えたり書いたりする必要が生じると、とりあえず岩波文庫の棚 の前に立ってみる。

 全部を揃えるには至っていないものの、この二十余年、毎月の新刊と、折々に遭遇した既刊書を手に入れて読んでいるので、それなりの冊数になっているのだった。

 なぜそんなことをしているのかといえば、シリーズものの本を集めるのが好きだ というのは置いておくとして、学術の歴史に関心があるからだ。こ

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