記事一覧
揚げタマネギを添えたレンズ豆(第3回 U-25短歌選手権 応募作品)
現実の音量を上げる 旋律の涎がイヤホンから垂れおちる
光ing ダッシュしやすい坂ばかり見つけてくれるひとと歩いた
強風を伸ばす運動 具体的には両腕を羽ばたかせるように
いつまでも前だけ向いていたいからまぶたを切り取ることを考える
町内で死亡野鳥を見つけたら 見つけたら悲しくなるだろう
ほんとうにやさしいひとが口にする水風船の発音がよい
蓄光の類語がどこにあるのかを探ればたどり着く 踊
ほんもののスカイウォーカー
はい、空を飛べます。だけど中卒でフリーターです。皿も割ります。
春の午後 草がおおくてふえている ここでくたばるのはむずかしい
少年が細くあかるい公園でちいさなザキを唱える舌だ
じぶんからじぶんへ電話が来るというドッペルゲンガー詐欺の流行
歯車の才能に恵まれている友人へ 桃缶を吸いなよ
こどもたちだけの国から貿易で送られてくるなんらかの種
いい土に種子を植えたらいいひとに奪われていくサ
まちなかアンケート! 100名に座右の銘を訊いてみた!
答えてくれた方々はこちらです。
猫、シェイクスピア、面積、風船、忘却、冷蔵庫、香水、公式ルールブック、バス停、エルサレム、戦車、円、ざっくばらん、平行四辺形、グミ、レンタカー、13、自然体、マヨネーズマン、襟、エッグベネディクト、吊り革、視覚、大腿骨、メンチカツの亡霊、本の概念、全人類、森、助詞、木曜日の暴力、ボカロが好きなひと、世界を支配できる力を持った鳩、その他
うにゅう
(卑猥なため削除
仮説的仮設不条理(短歌25首)
色盲の春はまっしろ ねこやなぎ色の絵の具が消える雑貨屋
過ぎていた消費期限を赤ペンで消して世界を添削している
海底にトランポリンを設置する スプリングの意は春、バネ、泉
貝殻が海の歯車だったころ水のおもてを駆けたヒト属
空気しか穿てない人間たちの一発芸として愛がある
人々のなかに入れば人々と呼ばれるものに早変わりする
今日未明成人男性六名が悲劇といった言葉を使用
いつだって逸すると思
短歌スターターキット・性悪編(7首連作)
クオリティ低め。短歌あるあるとして読んでね。
天才と呼ばれてみたい歌詠みの多くがつかう語彙は「たましい」
ひらがなで「ひかり」と書くと脳髄にエモーショナルな成分満ちる
「はつなつ」とひらいて書いた歌詠みは幸福を前借りしています
意味のない事象をふたつ並べたら読者が橋を渡してくれる
批評する人の気持ちを考えて同じ母音の音を配する
髪と神 誤字だとしても直さずにコンピューターの意図に従う
この箱はとても良い箱だ
僕らは正しい社会に生まれてきた。そのあまりにも徹底した正しさのために、僕らは僕らの顔を失うことになった。僕らは頭のすべてをすっぽりと覆う、大きな箱を装着している。カラーリングは150種類から選び放題。それが社会の総意であり、正しいので、反論するものは誰一人いなかった。数える程度のテロは起こったにせよ。
教師は僕らに繰り返し言った。
「箱のなかのセカイは安全で、ひとりで、クールでいられる。内側か
新潟といえば(ショートショート)
米越光は11歳のとき、両親と東京に越してきた。
学校の同級生は温かく迎え入れてくれた。光は安心した。新潟で生まれたことを話すと、皆は「新潟といえばお米だよね」と口々に言った。一人ならまだ良かったが、クラスメイト全員に訊かれ、隣のクラスに訊かれ、あまつさえ違う学年に訊かれたとき、光はついに失神した。自分のアイデンティティが「新潟=米」のイメージに蹂躙されてしまい、光は自我を失った。
光は自
超絶! 高齢化社会(ショートショート)
高齢化社会が際限なく進んだ結果、人類の平均寿命は512歳、平均年齢は241歳となった。国が算出したデータなので間違いはないはずだ。
おれはまだ150の若造で、高年齢と判断される450歳から550歳を受け入れる老人ホームに勤務している。ここにいるのはケタ違いの老人ばかりだ。白髪は白すぎてLEDのように光るし、手が震えすぎてスープが天井につく。しわが深すぎて気圧差があるし、加齢臭も半径2kmに及