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仮説的仮設不条理(短歌25首)

2023年のU-25短歌選手権に出していたもの。結果はあれやったけどちょいちょいええ歌もあります。


色盲の春はまっしろ ねこやなぎ色の絵の具が消える雑貨屋


過ぎていた消費期限を赤ペンで消して世界を添削している


海底にトランポリンを設置する スプリングの意は春、バネ、泉


貝殻が海の歯車だったころ水のおもてを駆けたヒト属


空気しか穿てない人間たちの一発芸として愛がある


人々のなかに入れば人々と呼ばれるものに早変わりする


今日未明成人男性六名が悲劇といった言葉を使用


いつだって逸すると思われている「常軌」という語 親友の影


感冒の薬のにがみ 焼失とよく似ているがすこし異なる


髪留めをダストシュートに投げ入れるダストシュートの髪が整う


二階からピアノが降ってきたときの批評理論が確立される


靴下と帽子をまちがえるように雪は地面に当たると止まる


ねむらない宝石商がねむれない鋏と出逢う詩編をひろう


失望が流行った朝はコックニー訛りのように足から起きる


南極と親しくなれば氷山を肺の一部と交換できる


自動車を自動車と名付けた人は自身を手動人間と呼ぶ


オール・ユー・ニード・イズ・ハムストリング いまも無線を理解できない


英雄と呼ぶには光りすぎていてスマートフォンのキャリアと気づく


断章のように歩いた 永遠の不在を告げる光くしゃみ反射


同性と異性の話 慣れてないものは手すりのふりをすること


失語症 神をほどいているときの指を強奪したいと思う


質量は保存されないほうが良い ワイシャツを脱ぐだけで寓喩だ


血管を全人類に繋げれば世界平和が来る とりあえず


架空のメジャーリーガー ホロコースト ウリ科の果物で殴り合う


過積載された荷物は草原を 桜は羽根を 遊星はひなげしを



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