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#エッセイ

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#中学生

アンドロメダ(腰パンの思い出)

アンドロメダ(腰パンの思い出)

中学の校門を出ると、私は学ランのズボンをぐいぐいと押しさげた。

当時、〝腰パン〟が流行っていた。ヤンキーたちはパンツが見えるくらいズボンを下げてはいていたが、私には学校で腰パンをする勇気はなかった。
校門を出てから彼らのまねをしてみたが、ズボンを下げると、学ランのすそからダサいガチャベルトが顔を出した。

学校帰りにレンタルビデオ店に立ち寄った。その日は新作の半額デーだった。洋画コーナーの棚を物

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模擬面接(プリントゴッコの思い出)

模擬面接(プリントゴッコの思い出)

中学3年の冬休み前、漫画を買いに本屋に行こうとすると、母に「プリントゴッコのイラスト集を買ってきて」と頼まれた。
もう年賀状づくりに取りかからなければならない時期だった。

プリントゴッコとは、年賀状をつくるための家庭用の印刷機だ。2000年代にパソコンが普及するまでは、みんなプリントゴッコで年賀状をつくっていた。その仕組みはつぎのようなものである。

当時、プリントゴッコのイラスト集というものが

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代理告白(ゴールデンウィークの思い出)

代理告白(ゴールデンウィークの思い出)

中学生になると井本くんと一緒に登校するようになった。
毎朝、井本くんが家に迎えにきてくれたが、もともとは田島くんも入れた3人で登校していた。3人ともクラスは別だった。

井本くんと一緒に田島くんのマンションに行くと、田島くんはいつも準備ができておらず待たされた。
井本くんとは小学校のころから仲がよかったが、田島くんとは家が近所というだけだったので、しだいに井本くんと2人で登校するようになった。

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力水神と秘密の修行(私がコーラを飲めない理由)

力水神と秘密の修行(私がコーラを飲めない理由)

犬の散歩をしていると、久しぶりに自販機で「力水」を見つけた。

「力水」とはキリンビバレッジから発売されている炭酸飲料であり、1994年の発売当時、頭がよくなる成分として注目されていたDHAを配合したことで話題を集めた。

「力水」は毎年のように名前が変わり、95年に「超力水」、96年に「最強力水」へと進化をとげると、98年の再々リニューアルにむけて、前年に新しい名前を募集していた。

当時、中学

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my graduation(カテキョのお姉さん)

my graduation(カテキョのお姉さん)

「え? いま中学3年じゃろ。っていうことは、尾崎の『卒業』も知らん世代なんじゃ。カワイソ」と言ってきたのは、当時、家庭教師だった大学生の男である。

その年のお正月のSMAPドラマ『僕が僕であるために』や、小学6年のころの野島ドラマの主題歌『OH MY LITTLE GIRL』で尾崎豊は知っていたが、それ以外の曲は知らなかった。

のちに高校生になってからいっとき尾崎にハマったが、好きだったのは『

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旅館(おばあちゃんと真っ白なシーツ)

旅館(おばあちゃんと真っ白なシーツ)

家の近所に小学校から一緒だった女の子がいた。教室でからかうと、「うっさいねえ。あんたに関係ないでしょ」と叩かれ、いつも夫婦漫才のような掛け合いをしていた。

中学生になったころのある日、学校から帰っていると、彼女がラブホテルから出てきた。彼女の家はラブホテルを経営していた。

「お前、ラブホテルでなにしよったん?」とからかうと、彼女は傷ついたような顔で横を通りすぎた。
いつもと違うリアクションに私

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ひと夏の冒険(ルンルンを穿いておうちに帰る)

ひと夏の冒険(ルンルンを穿いておうちに帰る)

物心ついたときから穿いていた純白のブリーフ。
ボクサーパンツなどなかった時代、中学生になった私の前に現れたのは、トランクスという大人のパンツだった。

母親の買ってきた白ブリーフから、自分で選んだトランクスに穿きかえる。それは蝉の羽化と同じだった。大人への階段である。

『ドラゴンボール』にもトランクスというキャラクターが登場するが、未来からやって来たやはり髪がサラサラのイケメンだった。

当時の

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