この2ヶ月間創作大賞があってとても楽しかったです。 4月末に宇佐崎先生のツイートを見て、物語がどんどん湧いてきて、GW明けてから夢中になって書き始めました。 正直…
2015年3月ーーー。 日本中が大雨に見舞われる中、私たちは卒業した。 私と倉石は、陸上部の壮行会の後、埃っぽい部室で片付けを済ませ、埃っぽいまま花束と卒業証書の筒を…
Chapter31「混声」 「・・・角塚さん、ちゃんと来てたのね」 私が言うと、角塚は振り返らず、「卒業式の日は毎年来てる。一年一緒に過ごしてきた友人達を見納めにしてお…
Chapter30「卒業式」 朝起きて、雪井さんに『おはよう。今日はよろしくね』とスマホのチャット機能で簡単な挨拶を送ると、彼女は朝から喧しい派手なスタンプを何個か返信…
Chapter29「直前」 ・・・ 角塚の姿を見たのはあの日が最後だった。 卒業式を明日に控えた今日まで、終ぞ角塚は私の前に現れなかった。 山城先生は、私に対して「どう…
Chapter28「好み」 2024年1月―――。 年が明け、大学入学共通テストの一日目、学校からバスで出発する生徒たちを激励した後、私は静かな教室に戻った。 明かりもついて…
Chapter27「背中」 「お酒も飲めるし、美味しいご飯も自分で買える、と」 私はプロテインバーを食べながら、メモ帳にさらさらと思いついたことを書き綴る。 メモ帳は気づ…
Chapter26「新学期」 2023年9月ーーー。 二学期が始まった。 昔から夏休みが終わると夏がひとまず終わったような気して、残暑が尾を引きながらゆっくりと去るような気配…
Chapter25「凪」 角塚とはあの日以来話していない。 彼女自身が何かをすることもなかったし、私自身が何かすることもなかった。 授業中のやりとりさえ希薄で、私に対して…
Chapter24 「おはよう、角塚さん」 私は偶然廊下で通りすがった角塚に声をかけた。 「・・・・・・」 角塚は驚き半分、怒り半分で顔を歪ませ、私を睨みつけていた。 す…
SAVE DATA 23 先輩はそれから毎日部活に集中していた。 活き活きとしていたし、緊張感も持っていた。去年よりも、遥かに陸上に没頭している様子だった。 「・・・あ、痛…
SAVE DATA 22「欲求」 私と咲織先輩は季節が変わっても、家で何度も交わった。しかし、それ以外は何も生まれない時間だった。 そんな怠惰な関係をしているうちに、私は不…
Chapter21「引退」 私と先輩の甘い時を過ごしたGWが明け、いよいよ総体の熱が本格化してきた。 私はあれから何度か先輩の家に通ったが、総体が近づくにつれその頻度は少な…
Chapter20 「夕雨」 先輩に首を優しくおさえられ、唇を重ねられた。 絆されるような、甘く少し湿った人間の感触を感じる。 先輩は喰むように唇を動かして、私の強張った…
Chapter19「花」 GWに入った。 午前中の部活が終わった後、私は先輩と出かけた。部活の帰りにこっそりと先輩と待ち合わせをして一緒に帰るのはなんだかドキドキしたし、電…
Chapter18 「過去」 2016年4月―――。 「・・・先輩、何読んでるんですか?」 図書室で咲織先輩を見つけた私は声をかけた。先輩は、不意に声をかけられたことにあわて…
ヨシキユウ
2023年7月24日 23:15
この2ヶ月間創作大賞があってとても楽しかったです。 4月末に宇佐崎先生のツイートを見て、物語がどんどん湧いてきて、GW明けてから夢中になって書き始めました。正直まだまだ書き足りないことが多いですが、締切に間に合わなそうだったので終わらせることを意識して頑張りました。会社まで往復1時間が私の執筆時間で、久々に車窓の外を見ると、夏になっていて笑ってしまいました。それを含めて良い思い出です
2023年7月15日 02:12
2015年3月ーーー。日本中が大雨に見舞われる中、私たちは卒業した。私と倉石は、陸上部の壮行会の後、埃っぽい部室で片付けを済ませ、埃っぽいまま花束と卒業証書の筒を抱えて、帰路についた。電車に揺られながら、私と倉石は何も見えない外の景色をぼうと眺めていた。「いやー、涙出なかったな」倉石は、はははと空笑いをした。「ほんとね。私はてっきり倉石大号泣を期待してたのに」「私だってそ
2023年7月15日 01:10
Chapter31「混声」「・・・角塚さん、ちゃんと来てたのね」私が言うと、角塚は振り返らず、「卒業式の日は毎年来てる。一年一緒に過ごしてきた友人達を見納めにしておきたくてね」と言った。「・・・こんなとこで見ていなくても、体育館に来ればいいのに」そう言うと、彼女はおもむろに振り向いた。その美しい双眸には涙を溜めている。「せんせえもしつこいね。原稿を処分してやったのに、放送も切っ
2023年7月15日 00:49
Chapter30「卒業式」朝起きて、雪井さんに『おはよう。今日はよろしくね』とスマホのチャット機能で簡単な挨拶を送ると、彼女は朝から喧しい派手なスタンプを何個か返信してきた。雪井さんには今日、ちょっとした助手をお願いしているので、卒業式に来てもらうことになっている。去年の6月から長い期間、彼女には色々とお世話になってきたものだとしみじみ思う。今日は卒業式なので、身支度はいつもより長めに、
2023年7月12日 00:10
Chapter29「直前」・・・角塚の姿を見たのはあの日が最後だった。卒業式を明日に控えた今日まで、終ぞ角塚は私の前に現れなかった。山城先生は、私に対して「どうするんですか」と毎日責めるように言い、雪井先生からは「今日はいましたか?」と心配する連絡が頻繁に来ていた。そんな中、私は原稿を完成させた。思いの丈をぶち込んだ私が伝えたい思いを最大限書き綴ることができたと思う。「・
2023年7月11日 23:59
Chapter28「好み」2024年1月―――。年が明け、大学入学共通テストの一日目、学校からバスで出発する生徒たちを激励した後、私は静かな教室に戻った。明かりもついていない教室の角の席に、角塚がいた。白いマフラーを巻いたまま、机に伏せている。「・・・風邪ひくわよ」私は彼女の前の席に座って、声をかけた。角塚はゆっくりと顔を上げると、その目が薄らと充血していることに私は気づいた。
2023年7月10日 23:21
Chapter27「背中」「お酒も飲めるし、美味しいご飯も自分で買える、と」私はプロテインバーを食べながら、メモ帳にさらさらと思いついたことを書き綴る。メモ帳は気づけば二冊目になっていた。何かを思いついては、メモを取り出して書き残すことが私の習慣になっていたのだった。「明日崎先生、前からちょくちょく何かメモを取ってますね」山城先生が話しかけてきた。私の青春の蛮行以来話しかけてくる
2023年7月10日 23:14
Chapter26「新学期」2023年9月ーーー。二学期が始まった。昔から夏休みが終わると夏がひとまず終わったような気して、残暑が尾を引きながらゆっくりと去るような気配に、寂しさを覚えたりする。しかし、今年は違った。私の鼻息は荒く、体は燃えるように熱を持っていた。私に取っては勝負の二学期だからだ。そういえば私の生え際からは黒髪が伸びてきていた。よく言われるプリンになりそうだが、しば
2023年7月9日 13:51
Chapter25「凪」角塚とはあの日以来話していない。彼女自身が何かをすることもなかったし、私自身が何かすることもなかった。授業中のやりとりさえ希薄で、私に対して超青春の力を行使することもなかった。やがて夏が訪れ、学校は夏休みに入ってしばらく経った。8月15日。今日はお盆だ。私は地元に帰って、倉石の墓参りにきていた。倉石の墓はそれなりに立派なもので、あの黒く焼けた野蛮児がその中
2023年7月9日 13:32
Chapter24「おはよう、角塚さん」私は偶然廊下で通りすがった角塚に声をかけた。「・・・・・・」角塚は驚き半分、怒り半分で顔を歪ませ、私を睨みつけていた。すっかり夏服に衣替えした生徒たちが私たちの横を通り過ぎていくが、私と角塚に構う人は一人もいない。二人だけの空間のように、私は角塚しか見ていないし、彼女もまた然りだ。「・・・せんせい、友達になってくれるの?」角塚はそ
2023年7月8日 22:42
SAVE DATA 23先輩はそれから毎日部活に集中していた。活き活きとしていたし、緊張感も持っていた。去年よりも、遥かに陸上に没頭している様子だった。「・・・あ、痛っ!」ある日、走っている途中、私はよろめいてそのまま地面に倒れた。「亜理紗っ、大丈夫!?」咲織先輩が血相を変えて走り寄ってきた。「ええ、大丈夫です。って、あっ!スパイクが壊れてる」見ると、スパイクのちょう
2023年7月8日 22:22
SAVE DATA 22「欲求」私と咲織先輩は季節が変わっても、家で何度も交わった。しかし、それ以外は何も生まれない時間だった。そんな怠惰な関係をしているうちに、私は不安になった。「・・・せんぱい、受験勉強大丈夫ですか?私邪魔じゃないです?」「邪魔じゃないよ」「・・・本当ですか?」「うん、本当」その声音は、どうやら嘘を言っているようではなかった。私は少し安堵して、質問を続
2023年7月3日 23:04
Chapter21「引退」私と先輩の甘い時を過ごしたGWが明け、いよいよ総体の熱が本格化してきた。私はあれから何度か先輩の家に通ったが、総体が近づくにつれその頻度は少なくなり、先輩は部活に一極集中するようになった。先輩の熱気は凄まじく、その努力する姿に比例して生まれた記録も、今年こそインターハイに行けるんじゃないか、と誰もが期待に胸を抱くほどだった。しかし、そんなある日、事件が起きた。
2023年7月3日 22:45
Chapter20 「夕雨」先輩に首を優しくおさえられ、唇を重ねられた。絆されるような、甘く少し湿った人間の感触を感じる。先輩は喰むように唇を動かして、私の強張った唇を無理やり動かすと、吸着する音が小さく鳴った。「・・・や、やめてくださいッ!」私は首を捻り無理やり先輩を引き離す。「あ、ごめん、亜理紗」先輩は頬を赤くさせながら、唇を拭って後ずさった。「・・・ごめん、嫌だ
2023年6月30日 22:29
Chapter19「花」GWに入った。午前中の部活が終わった後、私は先輩と出かけた。部活の帰りにこっそりと先輩と待ち合わせをして一緒に帰るのはなんだかドキドキしたし、電車に乗って街まで出る間、先輩がいろんな話をしてくれてとても楽しくて、先輩のことをもっと知ることができて嬉しかった。「・・・じゃあ、その名字が一緒の倉石千晴先輩に憧れて陸上をやってるんですね」「うん、そうだよ。私の憧れの
2023年6月30日 22:23
Chapter18 「過去」2016年4月―――。「・・・先輩、何読んでるんですか?」図書室で咲織先輩を見つけた私は声をかけた。先輩は、不意に声をかけられたことにあわてず、短い髪を撫でながら、私を見た。「亜理紗、部活外で会うなんて珍しいね」 「ええ、お邪魔じゃないですか?」先輩は優しくかぶりを振った。「全然大丈夫だよ」「ありがとうございます、先輩が本を読んでるの初め