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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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#歴史

読書:『永続敗戦論』白井聡

読書:『永続敗戦論』白井聡

①紹介

政治学者の白井聡氏による『永続敗戦論-戦後日本の核心』(講談社+α文庫、2016年)を紹介します。2011年の福島第一原発事故がもたらしたもの。それは「戦後」の終焉。長きにわたり続いている米国への従属とアジアに対する敗戦否認は良くも悪くも、日本の国内外に諸問題を生じさせてしまったようです。


②考察

● 「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米

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読書:『歴史と外交』東郷和彦

読書:『歴史と外交』東郷和彦

①紹介

元外交官の東郷和彦氏による『歴史と外交-靖国・アジア・東京裁判』(講談社現代新書、2008年)を紹介します。著者が34年の外交官人生を振り返り紐解く日本の歴史。現代の私たちに問われているのは、日本の今後の外交方針かもしれません。


②考察

● 「靖国問題について、日本国内で議論が百出する根本はなにか。それは、戦争で、国のために死んでいかれた人に対して、国として、国民として、どういう

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読書『未完のファシズム』片山杜秀

読書『未完のファシズム』片山杜秀

①紹介

思想史研究者の片山杜秀氏による『未完のファシズム-「持たざる国」日本の運命』(新潮選書、2012年)を紹介します。第一世界大戦後の日本が次第に神がかっていったのはなぜか。それを支えた軍人たちの戦争哲学とは一体何か。「持たざる国」の興りと終わりを照射する第16回司馬遼太郎賞受賞作です。

②考察

● 「歴史の趨勢が物量戦であることは明々白々。しかし日本の生産力が仮想敵国の諸列強になかなか

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毒書:『わが闘争』(下)A.ヒトラー

毒書:『わが闘争』(下)A.ヒトラー

①紹介

ドイツの政治家アドルフ・ヒトラーによる『わが闘争』(下巻、平野一郎・将積茂訳、角川文庫、2001年)を紹介します。上巻に引き続き、これを読む日が来ようとは……。センセーショナルな文言が多いので、読む際には相応の覚悟と注意・批判力が要るでしょう。


②考察

● 「ただ健全であるものだけが、子供を生むべきで、自分が病身であり欠陥があるにもかかわらず子供をつくることはただ恥辱であり、むし

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読書:『サピエンス全史』(下)Y.N.ハラリ

読書:『サピエンス全史』(下)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』(下巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2016年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。飽くなき欲望によって歴史的な革命を次々と起こしてきた人類。その子孫である私たちが招くであろう近未来もついでに覗いてみませんか?


②考察

● 「ホモ・サピエンスは独特で神聖な性質を持っており、その性質は他

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読書:『マッキンダーの地政学』H.J.マッキンダー

読書:『マッキンダーの地政学』H.J.マッキンダー

①紹介

イギリスの地理学者ハルフォード・J・マッキンダーによる『マッキンダーの地政学-デモクラシーの理想と現実』(曽村保信訳、原書房、2008年)を紹介します。第一次世界大戦が終わった年に発行され、今や地政学の古典として名高い本書。およそ100年前の教訓は、現在、世界各地で起きている紛争を読み解くうえで欠かせないでしょう。

②考察

● 「近代戦略的な意味におけるハートランドとは、要するに必要

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読書:『サピエンス全史』(上)Y.N.ハラリ

読書:『サピエンス全史』(上)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による大ベストセラー『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』(上巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2016年)を紹介します。遥か大昔にネアンデルタール人を滅ぼしたホモ・サピエンス。なぜ私たちの祖先は生き残ることができたのか。「認知革命」がもたらしたその進歩史に衝撃を受けます。

②考察

● 「虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、

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書評:『銃・病原菌・鉄』(下)J.ダイアモンド

書評:『銃・病原菌・鉄』(下)J.ダイアモンド

①紹介

アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏による『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(下巻、倉骨彰訳、草思社文庫、2012年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きで、本書はその各論と言えるでしょう。エピローグにおける著者の歴史研究への熱意と使命がひしひしと伝わります。

②考察

● 「一つの発明が一つの社会で独自に誕生するか、それともよそから借用されるかは、その発明自

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書評:『琉球王国』高良倉吉

書評:『琉球王国』高良倉吉

①紹介

琉球史学者の高良倉吉氏による『琉球王国』(岩波新書、1993年)を紹介します。「なぜ沖縄の歴史は暗いのか」という学生の問いに端を発し、著者含め学者だけでなく、様々な職種のウチナーンチュも携わった研究の成果がここに。かつて繁栄した島嶼国家の姿が見えてきます。

②考察

● 「いまもって『日本のなかの沖縄』の内に『日本の外としての沖縄』が内包されている」
➢ 1972年の返還以来、沖縄は日

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書評:『銃・病原菌・鉄』(上)J.ダイアモンド

書評:『銃・病原菌・鉄』(上)J.ダイアモンド

①紹介

アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏による世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄 - 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(上巻、倉骨彰訳、草思社文庫、2012年)を紹介します。旧大陸のヨーロッパ人とアメリカ大陸の先住民とを根本的に分けたものは何か。すべては、ニューギニア人ヤリが著者に投げかけた一つの問いから始まりました。

②考察

● 「本書のタイトルの『銃・病原菌・鉄』は、ヨー

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書評:『遊動論 柳田国男と山人』柄谷行人

書評:『遊動論 柳田国男と山人』柄谷行人

①紹介

哲学者の柄谷行人氏による『遊動論-柳田国男と山人』(文春文庫、2014年)を紹介します。人は国家と資本をどう乗り越えるべきか。鍵を握るのは、民俗学者の柳田国男が古来より続く日本の固有信仰に見出した「山人」の概念です。

②考察

● 「周辺部の自立と繁栄のためには、中央に対する闘争だけでなく、その内部における『中心―周辺』の構造、あるいは『目に見えぬ階級』を克服する必要がある」
➢ 「周

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書評:『疫病と世界史』(下)W.H.マクニール

書評:『疫病と世界史』(下)W.H.マクニール

①紹介

カナダの歴史学者ウィリアム・H・マクニールによる『疫病と世界史』(下巻、佐々木昭夫訳、中公文庫、2007年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。紀元1200年以降を生きた人類の長きにわたる疫病との戦いと共存、克服の歴史をご覧あれ。


②考察 

● 「ユダヤ人は、ペストの毒を故意にばらまいた下手人と見なされて、迫害されるのが常だったのである」
➢ 14世紀のヨーロッパにおける史

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書評:『疫病と世界史』(上)W.H.マクニール

書評:『疫病と世界史』(上)W.H.マクニール

①紹介

カナダの歴史学者ウィリアム・H・マクニールによる『疫病と世界史』(上巻、佐々木昭夫訳、中公文庫、2007年)を紹介します。コロナ禍の時に話題になりましたね。なぜ疫病は発生し、人類に何をもたらしてきたのか。紀元前500年から後1200年の世界を舞台に、その謎を探る壮大な試みです。


②考察

● 「アフリカでヒトに寄生する生物が非常に多様性に富んでいるという事実は、アフリカが人類の主な

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書評:『口語訳 古事記 人代篇』三浦佑之

書評:『口語訳 古事記 人代篇』三浦佑之

①紹介

日本文学者の三浦佑之氏による『口語訳 古事記 人代篇』(文春文庫、2006年)を紹介します。『神代篇』の続きに当たる本書では歴代天皇の事績や英雄譚、そして骨肉の争いが展開され、神々さながらのドロドロぶり。神も人も根本は何も変わりませんね、本当に。


②考察

● 「同じ兄弟の中で、姿かたちが醜いというので大君の許から返されてしまったということが、周りの村里の者たちの噂になるのはとても

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