幾日 悠

いつか、はるか 詩と随筆(日記)と物語。写真は自前です。 ■最新の詩(23.01.2…

幾日 悠

いつか、はるか 詩と随筆(日記)と物語。写真は自前です。 ■最新の詩(23.01.26 up):【設計図】 ■最新の随筆(22.03.05 up):【生活と暮れる、理想は難しい】

マガジン

  • 錆色の木曜日

    この言葉たちを 見て、 読んで、 聴いて、 触って、 何か考える事があっても考える事が無くても良いと思う ◆ 詩集 錆びた1秒1分1時間1日を遺していくだけの場所。

  • 愛悼ノート

    随筆という名の日記をまとめてあります。 詩に書けない自分の事。

記事一覧

設計図

他人と話すとき目を逸らしてしまうのは悪癖と呼ぶべきなのだろうか 自分が傷つきたくなくて自分を守る手段を選ぶのは悪だと呼ぶのだろうか だいじなときほど喉で澱んで絡ま…

幾日 悠
1年前

五月某日のとある手紙

葉桜だけで空は埋まり、風に吹かれたあなたの髪が視界を遮る、ただ歩くだけで息がひとつひとつ奪われていきそうな程の五月のこと、あなたは仰ぐままで、しあわせだって言っ…

幾日 悠
2年前
3

感電

花を茎から手折る時、僕は貴方が生きていると感じられて、僕は貴方の存在を理解する事ができるのです。と、彼は言い、落雷のような衝撃を私の頸に与えた。誰が何と言おうと…

幾日 悠
2年前
1

クリアランス・ブルー

やわらかくて、やさしくて、あたたかくて、おだやかで、まぶしくて、きらきらで、君があおが好きな理由が少し分かる気がする。あおい、それは幼い僕達の罪の鮮やかさを表し…

幾日 悠
2年前
1

生活と暮れる、理想は難しい

 3月末、取引先の社員が何名か退職するらしい。いずれの方々も次何するかが決まっており、次が決まった状態で退職できるならと他人事ながら自分の事のように少しだけ安堵…

幾日 悠
2年前

水槽夜行

地下鉄、私鉄、メトロ、泡を吹くように慌てて乗り込んで、地下に潜って窓に映る全部が水中みたいだ。ぐっ、と息を止めて居たくなる。時々見える蛍光灯、あれは僕らのはるか…

幾日 悠
2年前
2

とある画家の独白

「音楽は嫌いだ。 生まれた時から音という物体がこの耳にこびりついていて、 音を楽しむという現象が生まれつき本能に遺されていて、 生まれた瞬間から僕という定義に一…

幾日 悠
2年前
1

灰皿

有刺鉄線の張り巡らされたフェンスの向こう、草ばかりの道端には古い潰れた空き缶が転がっていて、フェンスのこちら側には潰れた煙草の吸殻が落ちていて、それが歩けど歩け…

幾日 悠
2年前
1

楽しい夏

夏、って単語には沢山のイメージが広がっている気がする 夏の風物詩のラムネは絶滅危惧種になるそうだ、 ラムネが夏じゃないといけない理由ってあったのか。 みんな夏が…

幾日 悠
2年前

過去にして語れる程記憶は甘くない。

 だいすきなバンドのライブが延期になった。中止じゃなくて延期になった。公演の2週間くらい前の報せだった。LINEから、受け取った通知を、Apple Watchで仕事中に、開く。…

幾日 悠
2年前
1

ゆるしあうプロポーズ

夏の向日葵の、太陽に向かって背筋を伸ばし顔を上げて育つさまがすき 夢を目指した探究心の塊の君を彷彿させる向日葵 黄色に弾ける花弁がうっすら青空を写して美しく咲き誇…

幾日 悠
2年前

アイスクリームとぼくの関係性

 年末年始、しっかり身体を壊して(ちゃんと原因はあるしそれももう治る)殆ど寝ていた。寝たり起きたりたまに食べたり飲んだり寝たり起きたりたまに家事したり。の一日を…

幾日 悠
2年前
2

こういの孤独の詩

こういって比較的勝手だと思う、好意、行為、厚意、高位、更衣、校医、スクールカウンセラーの先生はいつでも保健室で「待ってるよ」とだけ言うばかりで先生の方からは来て…

幾日 悠
2年前

全部「作品〈フィクション〉だ」って笑えば良い

予定とか、約束とか、明日とか、本当にどうでも良かった。 友だちも意味が無い。その当時友だちだったとしても、どんなに一緒に移動教室に行ったり、プリクラを撮ったり、…

幾日 悠
3年前
1

今世

最近聴き始めた音楽を鼓膜で震わせている 踏んだことの無い土地の地面を静かに蹴っている 風が吹いたらあれしようとか考えてた事も吹っ飛んできっとこの何時間かが何でも…

幾日 悠
3年前
2

来世

何かすると忘れる 忙しいと忘れる だいじなことなのに、だいじにしている日なのに 別のことをしたり思いついたりするだけで脳みそはそれを忘れてしまって 良く出来てい…

幾日 悠
3年前
1
設計図

設計図

他人と話すとき目を逸らしてしまうのは悪癖と呼ぶべきなのだろうか
自分が傷つきたくなくて自分を守る手段を選ぶのは悪だと呼ぶのだろうか
だいじなときほど喉で澱んで絡まった言葉だけが詰まって涙が先に出ることは卑怯なのだろうか
耳障りの良い歌詞とメロディーだけでその歌を慰めるみたいに口遊むのはつまらないのだろうか

テストの成績を見せ合う空気が嫌いだった 皆でおんなじくらいの数字を見て安心したり貶めるのが

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五月某日のとある手紙

五月某日のとある手紙

葉桜だけで空は埋まり、風に吹かれたあなたの髪が視界を遮る、ただ歩くだけで息がひとつひとつ奪われていきそうな程の五月のこと、あなたは仰ぐままで、しあわせだって言ったままで、足元にこぼれた花のひとつを救いあげるから、しあわせを諦めたあなたのその両手の中の死にかけの生命はあまりに美しいし、それとおなじような僕達の距離を守ろうとするあなたの嘘みたいな笑顔はあまりに透明でした。

夏の前触れみたいな熱が身体

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感電

花を茎から手折る時、僕は貴方が生きていると感じられて、僕は貴方の存在を理解する事ができるのです。と、彼は言い、落雷のような衝撃を私の頸に与えた。誰が何と言おうと、花にも頸があり、指があり、こころがあるのに、なんて容易く、私の身体は奪われてしまったのでしょう。摘蕾された私の子ども。簡単に奪い、簡単に我が物にし、簡単に飽きてしまう彼は、まあるくてやわらかい純真な膨らみに、とあるヒトの頬を憶い、手を伸ば

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クリアランス・ブルー

やわらかくて、やさしくて、あたたかくて、おだやかで、まぶしくて、きらきらで、君があおが好きな理由が少し分かる気がする。あおい、それは幼い僕達の罪の鮮やかさを表していて、青春なんて貼り紙がある所為でそれを体験出来なかったら有っても無くても良い存在に 時間に なってしまう。あおい、海の欠片を君がすくい上げたその手の中に、どれだけ僕は乱反射しましたか。僕の頭痛がする度に、君の鮮やかな言葉がガラスの破片の

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生活と暮れる、理想は難しい

生活と暮れる、理想は難しい

 3月末、取引先の社員が何名か退職するらしい。いずれの方々も次何するかが決まっており、次が決まった状態で退職できるならと他人事ながら自分の事のように少しだけ安堵してしまう。正直なところ、生きていけるんなら別に次が決まってないままでも辞めたって良いと思う。同時に、他人にはそう言えるのに、自分にはそう言えない事が、あまりにも他人の事を他人事だと客観視していると気づいて少しだけ良心が痛む気がする。他人は

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水槽夜行

水槽夜行

地下鉄、私鉄、メトロ、泡を吹くように慌てて乗り込んで、地下に潜って窓に映る全部が水中みたいだ。ぐっ、と息を止めて居たくなる。時々見える蛍光灯、あれは僕らのはるか頭上に光を放つ太陽の生まれ変わり。乗客はみんな魚のどれかで、僕もグッピーあたりが良い。可愛がって貰えるし。
一生懸命歩く魚たち、一体貴方たちは何処へ何の目的で歩いているんですか。ヒレを休ませる場所が欲しいんですか。頼むから僕の目の前を波を揺

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とある画家の独白

「音楽は嫌いだ。

生まれた時から音という物体がこの耳にこびりついていて、

音を楽しむという現象が生まれつき本能に遺されていて、

生まれた瞬間から僕という定義に一生付き纏ってくる感じがするから。」

「音楽を創った奴は全然偉大なんかじゃない、

知っているだけで識らなかった事を分解して、

都合の良いように楽しむと組み替えて、

人類末代まで名前を知らしめて、

世間も人間もそれを才能だと囃す

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灰皿

灰皿

有刺鉄線の張り巡らされたフェンスの向こう、草ばかりの道端には古い潰れた空き缶が転がっていて、フェンスのこちら側には潰れた煙草の吸殻が落ちていて、それが歩けど歩けど続いていて、夏にはパピコの片割れが中身を少し残して死んでいて、そうやって季節が死んでいく。茹だるような熱気と共にあの夏を傷ごと焼き殺してくれるから煙草は好きです。沢山の灰をゆっくり時間をかけて自分にも馴染ませて、傍から見たらただのゴミみた

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楽しい夏

楽しい夏

夏、って単語には沢山のイメージが広がっている気がする

夏の風物詩のラムネは絶滅危惧種になるそうだ、

ラムネが夏じゃないといけない理由ってあったのか。

みんな夏が好きなのは夏が楽しいってイメージが広がっているからだ、

絶滅危惧種のラムネ、

街の灯りとは違う夏祭り、

光を弾くコップの水面、

歯が痛くなるアイスクリーム、

焼けたような熱いコンクリート、

地上に落ちた太陽の向日葵、

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過去にして語れる程記憶は甘くない。

過去にして語れる程記憶は甘くない。

 だいすきなバンドのライブが延期になった。中止じゃなくて延期になった。公演の2週間くらい前の報せだった。LINEから、受け取った通知を、Apple Watchで仕事中に、開く。通知が誰から来ているかの表示はオフにしているから、LINEから通知が来たことしか分からない。トーク一覧に沢山並んだ通知の中で見慣れたアイコンをタップし、メッセージを開いた。そんな気はしていた。最終抽選の報せが公式であった時、

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ゆるしあうプロポーズ

夏の向日葵の、太陽に向かって背筋を伸ばし顔を上げて育つさまがすき
夢を目指した探究心の塊の君を彷彿させる向日葵
黄色に弾ける花弁がうっすら青空を写して美しく咲き誇っている

ああ、

君が 君で 君を 君は 君に 君だ って向日葵が話している。

向日葵が 誰が植えたかも知れないただの向日葵が

君の事を話していて、僕と君が2人で見た向日葵の事を話していて、君も僕もこの向日葵を忘れる事を話している

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アイスクリームとぼくの関係性

アイスクリームとぼくの関係性

 年末年始、しっかり身体を壊して(ちゃんと原因はあるしそれももう治る)殆ど寝ていた。寝たり起きたりたまに食べたり飲んだり寝たり起きたりたまに家事したり。の一日を繰り返していて、6日間の冬休み的な年末年始休暇が過ぎたのだけど、具合が悪い時程さみしくなったりヒトの温かさが欲しくなるのは何でなんだろう。暖房を付けずに布団にくるまって、窓から伸びる太陽光だけで日向ぼっこしたがるのはどういう記憶の延長線によ

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こういの孤独の詩

こういって比較的勝手だと思う、好意、行為、厚意、高位、更衣、校医、スクールカウンセラーの先生はいつでも保健室で「待ってるよ」とだけ言うばかりで先生の方からは来てくれませんでした、「君が好き」と言ってくれた誰々くんの事を好きじゃなかったけど御礼を言ったら家までついてくる自称ナイトになってました、厚意と懇意って言い間違える人多いよね、これだけしてやったのに全部仇で返しやがってって殴ってくる人が居ました

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全部「作品〈フィクション〉だ」って笑えば良い

全部「作品〈フィクション〉だ」って笑えば良い

予定とか、約束とか、明日とか、本当にどうでも良かった。

友だちも意味が無い。その当時友だちだったとしても、どんなに一緒に移動教室に行ったり、プリクラを撮ったり、お揃いのアクセサリーを買ったりしても、学校が、環境が変われば、時間が経てば、それらは全部が無意味になるし僕らは知り合いよりは気が知れている程度の他人になるし、思い出が時間を越えることは絶対に無いから。

いつか海に行こうね、とか、今度この

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今世

最近聴き始めた音楽を鼓膜で震わせている

踏んだことの無い土地の地面を静かに蹴っている

風が吹いたらあれしようとか考えてた事も吹っ飛んできっとこの何時間かが何でもないまま横を通り過ぎると思うから

のぼりが揺れる程度のそよ風なんかよりもっともっともっと自転車が倒れるくらいの強い風をじっと待っていた

臆病でこそこそしてた筈の雲もやがて太陽と手を繋いで歩き始める

発車ベルの1分前迄車両沿いにホー

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来世

何かすると忘れる

忙しいと忘れる

だいじなことなのに、だいじにしている日なのに

別のことをしたり思いついたりするだけで脳みそはそれを忘れてしまって

良く出来ている

一瞬だって頭から離したくないのに意とは裏腹に物体はとても良く出来た信号を送ってこんな簡単に忘れさせる

言葉を口から出すとその度水のままだった記憶が氷の塊になって輪郭を帯び、器から零れてしまいそうで嫌だった

「※○△□‪✕‬

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